まだ暑いとバテるような時期じゃねぇが、暑い、蒸し暑い。それは昨日降っていた雨の所為に違いはない。俺はダルい体を気合いで起こして服を着替えた。昨日は三十分遅刻した。今日も遅刻したのでは流石にバツが悪ぃ。階段を下りて行くと遊子の作った朝飯のいい匂いがする。夏梨とは違ってあいつは嫁に行くときに相手は苦労しねぇな。 「はよ…って、何だこの朝飯!」 「おはようお兄ちゃん!」 「目ぇ覚めてるの一兄、ひどい顔だな。」 「今覚めた。」 ズラリと並ぶ朝飯には思えないが、朝飯。いつもは食パンと目玉焼きとかなのに今日は何なんだ。品数多い、こんなに朝飯で食えるわきゃねーだろ。俺はそう思いながらも下手に遊子の機嫌を損ねるわけにもいかないので黙っていた。満面の笑みで、召し上がれ、なんて言われたら食わねぇわけにもいかねぇし。結局俺は朝から頑張って飯を食うことになり、その所為か時計はいつもの時間をとっくに過ぎていた。やべぇ。 「一護ちゃん、遅刻ー。」 学校に着いたのは結局、昨日よりも遅い時間だった。越智さん(担任)だからこそネチネチ怒られずにはすんだけど。教室のドアを開けると同時に目の前に立っている満面の笑みを浮かべる奴に何か言われた。一護ちゃんつーのはやめろっつってんだろ。小せぇ頃と同じ呼び名にすんなって!そう言うものの、は全然気にしていないようだった。にゃろ、と思いにヘッドロックをかましてやる。と…。 「てめぇ、に何やってやがる。」 突然背後から何か固いもので頭を殴られた。いってぇ…何つーもんで人の頭を殴りやがったんだこいつ。振り向かなくても分かる、こんな殺人に近いことを平然とする奴は一人しかいねぇ。しかも奴は人の頭を殴っておいて、邪魔だ退け、とまで言いやがった。自然にと俺を引き離してから。 「冬獅郎、てめぇ、何で俺の頭殴った。」 「広辞苑…。」 「はっ、嘘だろ!?」 「嘘だ、残念ながら和英辞書だ。」 ほら見ろ、とでも言うように冬獅郎は和英辞書を見せた。こいつ、俺よりもチビのくせに態度だきゃあでけぇ。そう思っていただけなのに奴はまた辞書で俺を殴りやがった。ズキズキと頭が痛む俺をが心配して一生懸命に手を伸ばして頭を撫でようとしているが、全然届いてねぇし、その手を奪い取る冬獅郎。お前、ほんとーに独占欲強ぇよな…彼氏でもないくせに。 「もぉ、駄目だよ冬獅郎ちゃん。」 「へぃへぃ。」 「返事は一回!」 「おい、、こいつ全然悪いとは思ってねぇから。」 俺とと日番谷冬獅郎は幼馴染だ。そして、言ってしまえば俺らは三角関係だ(つっても俺らが勝手にを好きなだけだけど)本人はまったくもって気づいてはいない。今はお互い協力してに近付いてくる悪い虫を払い落とすことに専念している。と、そんなことは今はどうでもいいか。ニ限目の予鈴がなり、俺らは慌てて自分の席へと戻った。現国か、嫌いじゃねぇし、寝ないように気をつけるか。 「悪い、俺職員室に用事があるから。」 「あ、分かった、教室で待ってるね。」 「何だよ、また何かしたのか。」 「してねぇよ!」 昼食はいつも三人で食べることにしている。には仲のいい女友達もいるのだが、昼食はなぜか俺らと食べている。それに向こうも承諾しているらしいし、仲は変わらずいいわけだし、大丈夫なのだろう。俺は冬獅郎に言い返してから教室を出て職員室へと向かった。部活の顧問からの呼び出しで、次の試合にレギュラーで出てみないかって話だった。悪い話じゃねーから頷いた。一年でレギュラー入りできるとは思わなかったな。戻ったら冬獅郎に自慢してやろう、あいつは俺のこといつも馬鹿にしてるからな。そう思いながら教室に戻ると、あいつらの姿はなくなっていた。 「ちゃんと日番谷くん?」 「何だか急いで教室から出て行ったよ。」 はぁー!?冬獅郎の奴、抜け駆けかよ!俺は言いようのないほどの怒りを感じながら自分の席に戻った。よくよく見ると、机に何か落書きされているようだ。えー、何だ、お弁当持って屋上に来てね馬鹿野郎トロトロすんなよ…って、馬鹿野郎から字が違うじゃねぇか、冬獅郎か!俺は急いで鞄の中から遊子作の弁当を持つと教室から出た。教室から屋上までの道のりは結構あるため、走っても五分以上はかかった(途中で誰か知らねぇセンセに注意されたが適当に流した)俺は屋上のドアを開ける。風が吹いた。 「HAPPY BIRTHDAY!」 パンパンッ、というけたたましいような音がして、何かがこっちに飛んできた。微かな火薬のにおいがした。クラッカーだ。俺は突然のことに頭が回らなくて瞬きを何度もした。目の前には打ち終わったクラッカーを持っていると冬獅郎がいた。って、お前人に向けて打ちやがったな冬獅郎!涼しげな顔してても分かるんだぞ!俺はとりあえず、肩やら頭やらにひっかかったものを取り払った。 「え、っと。」 「お誕生日おめでとう、一護ちゃん。」 「思ってないけど、めでたいな。」 「…おい。」 相変わらずだな冬獅郎。俺は奴に怒りを憶えたが、とりあえずが考えてくれた演出だ、素直に喜ぶことにしよう(嬉しいし)どうやら俺が職員室に行ってる間に用意しておいてくれたらしい遠足に使うようなシートと、その上に手作りだろうか、俺の好きなチョコレートのケーキがあった。 「一護ちゃん、手作りでごめんね。」 「いや、構わねぇよ。」 むしろ、それがいい。冬獅郎はちょっとムッとしているような気もしたが、今は全然気にならねぇ。俺はシートに座って目の前にある綺麗に飾られたチョコレートケーキを見た。幼馴染ってのも悪くはねぇな、できればもっと違うのになりたいもんだが。そんなことを思っていたら頭に何か衝撃を受けた。またお前か冬獅郎! 「仕方ねぇから俺からのプレゼントだ。」 「…サンキューな。」 って、お前、これCDじゃねぇか。プレゼントで俺の頭を思い切り叩くんじゃねぇよ!ケースが割れたらどうすんだよ!と、思いながらも言ったら完膚なきまでに言い返されると思ったので黙っておいた。つーか、こいつ素直じゃねぇよな。だいたい、最初の言葉は余計な言葉だろ。毎年何だかんだでくれるくせによ。 「あ、そうか、それで今日の朝飯凄かったのか。」 「一護ちゃん今日が自分の誕生日なの忘れてたの?」 「相変わらず馬鹿だなお前は。」 「うっせーよチビ!」 「チビ言うなボケ!」 「生意気!」 「木偶のぼう!」 「ま、まぁまぁ落ち着いて、お弁当食べよう?」 「、こいつに触るな、手が腫れるぞ。」 「な、何だとードチビ!」 「誰がドチビだとー!」 「えーっと、えーっと、二人ともー。」 毎年こんなんになるのに。 俺も冬獅郎も、も。 飽きないよな。 ともかく、(一応冬獅郎にも)サンキュな? |