
それはある日の夜のことだった。俺は残業を終えてやっとのことで部屋に戻った。いつもよりも疲労感を感じるのはいつもよりも積み上げられていた書類のせいだろう。狙ったかのように松本はサボりやがって、おかげで俺の仕事は倍になってしまった。明日憶えてろ、有無を言わさず残業させてやる。何でもどこかの隊の隊長、副隊長、上位席官が現世へ赴いているらしく(何番隊だったのかは忘れた)そこの書類が全てうちにまわってきたらしい。上手い具合に分けるとかできねぇのかよ!俺はそんな憤<いきどお>りを抑えながら布団に入った。 「…ん?」 何やら足音が聞こえる気がする。疲れているせいか、霊圧はよく分かんねぇけど。誰かが俺と同じように残業して帰っている最中なのかもしれねぇな。俺はさほど気にせずに目を瞑った。明日が非番ならよかった。それなら今日夜が遅くてもさして気にもならないのに。 「…足音がとまった。」 部屋の入り口で足音がピタリと止まった。おいおい、俺の部屋に用事なのかよ。こんな夜分遅くになんて失礼な奴だな。もしかして闇討ちってやつか?自分で言うのもなんだが、若年で隊長なんて位についただけあって、俺に逆恨みやら妬みやらそんな黒くて禍々しい感情を抱いているような奴らなんて数え切れないほどいるからな。とりあえず、俺は待つことした。先に行動を起こされたほうが色々とやりやすい。だが、そいつはそこからビクとも動こうとする気配はない。俺は痺れを切らして自分から行動に出た。一応夜分なのを考慮して、静かめに扉を開ける。そこで目にしたものに俺は盛大に驚いた。 「!?」 そう、目の前にいるのはだった。寝巻きなのだろうか、薄い水色の着物を着て、彼女はそこに立っていた。俺を見上げて、少し不安そうな表情を浮かべている。俺は慌ててを部屋の中に招き入れた。どうしてがここにいるのか、だいたいこんな時間になぜが? 「おい、こんな時間に出て朽木に怒られねぇのか?」 「…父様、いないもん。」 今にも泣きそうな顔では言った。あ、そうか、現世に行ってるのは六番隊だったのか!俺はやっとそれを思い出した。朽木がいないからの奴、今にも泣きそうな顔してるのか。 「寂しいのか?」 「…さみしくなんかないよ。」 意地っ張りめ。俺はそう思いながらも自分がなぜか穏やかに笑っているような気がした。を抱き上げると空いた手で頭を優しく撫でてやる。そうするとは唇をぎゅっと噛んで、俺の首に手をまわした。寂しいんだな。夜寝られなくて、そんな夜が怖くて、俺を頼って霊圧辿って来たんだろう。俺はたまらなく愛しさを感じ、腕の力を少し強めた。 「としろ、とめて?」 「…へ?」 「とめて、としろ。」 突然の発言に俺は驚いた。が、上目で首を傾げて、なおかつ目を潤ませて頼まれたら断りようがねぇ。俺は苦笑いを浮かべると、を抱き上げたまま布団へと戻った。仕方ねぇ、今日は一緒に寝てやるか。疲れも、何だか吹っ飛んじまったようだしな。明日の朝は早く起きてを屋敷まで送らないといけねぇし、早く寝よう。俺はを包むようにして、静かに目を瞑った。 |