
真央霊術院…死神になるための学校。桜の花が咲き誇る季節、そこから卒業した者たちが護廷十三隊へと入隊手続きをとっていく。秀でた者は隊から指名を受けることもあるようだ。特に特進クラスの上位の者たちは隊長直接からの指名がほとんどだった。そのことでささやかな口論になったことが過去にもあったらしい。まぁ、そんなことも踏まえて卒業する者たちは皆期待と不安でも胸を高鳴らせていることだろう。 「やっぱり初々しいね、新入隊員って。」 緊張感が素直に表情に出ている新入隊員たちを見て、が隣を歩いている日番谷に話しかけた。今年の新入隊員たちは去年に比べて少し少ないような気がする、とはおもむろに彼らの数を数えだした。そんな子どものような行動をとる彼女を見て日番谷が笑う。見た目も中身も彼女はまだまだ子どものようである、そんな彼女が十番隊の第三席(しかも日番谷よりも若年)だと知ればこの中の十番隊配属になる者たちは絶対に最初は目を丸くするだろうと思った(中には隊長が幼いのにも驚く者がいるとは思うけれど) 「冬獅郎にもこんなときあった?」 「気持ち的には冷めてたかもしれねぇけどな。」 彼の答えに可笑しそうに笑うに日番谷は目を少しだけ細めた。新入隊員であったことは日番谷にもにも、今は隊長格である者たちにも当たり前にあったのである。そう思った彼は無意識に手を伸ばし、の頭をそっと撫でた。不思議そうに彼女は首を傾げたが、すぐに柔らかく微笑んだ。温かい風が吹いて桜の花びらが舞い上がった。その光景はとても美しかった。それらに目を奪われ彼らは見上げる。見惚れていてしばらく口を開かなかったが、日番谷の方が先に口を開いた。 「そういや、俺が初めてお前を見たとき…。」 ----- 「は何番隊?」 ある意味ドキドキの瞬間である配属発表。護廷十三隊の入隊のしおりと称されているものの中の一ページに書かれている配属表、それを見てはに尋ねた。彼はずらりと並んでいる名前の中から自分の名前を探す。今年は入隊する者が多かったらしく、名前がきちんとあいうえお順になってはいない(手間がかかると判断したためか)やっと名前を見つけた彼は、なぞっていた指をとめた。 「僕は十三番隊みたいだよ、は?」 「私は十番隊だって。」 双子の兄妹であるからといって一緒の隊に配属されるとは思ってはいなかった。二人は上位者が認められている希望届けには何番隊とも書いてはいない。別段入隊できるのであれば何番隊でもよかったのである(嫌な噂のする十二番隊にはなるべく入りたくはなかったのであるが)無事に無難なところにお互いが配属されたことに彼らは顔を見合わせて穏やかに笑った。彼らはお互いに腕を伸ばした。二人の手がいい音をたてて触れ合い、笑みを浮かべて頷く。 「「隊は離れても心は一緒!」」 それから十数分後、新入隊員たちは各々配属する隊ごとにわかれて説明を待つことになった。通された部屋の端の方にはちょこんと座っていたが、少し緊張してきたので外の空気を吸うことにした、幸い、説明が始まるまでまだ十分に時間がある。彼女は廊下に出てそこから見える空を見上げた。青い空が広がる、雲ひとつない快晴だ。思わず笑みが浮かんだ。そんなとき、温かい風が吹き、彼女の手に合った一枚の書類がふわりと宙に舞い上がってしまった。あ、と声を上げたが時既に遅し、それは見事に花を咲かせた桜の木の上に引っかかってしまった。 「あーぁ。」 手続きに必要な書類なのでそれを失うわけにはいかない、そう思いは周囲に誰もいないのを確認すると迷うことなく大きな桜の木に足をかけた。彼女は瀞霊廷では名の通った貴族の出ではあるが、お転婆な方だったので木に登ることに戸惑いはなかった。ひょいひょいと上手に木に登ると引っかかっていた書類に手を伸ばして取った。ちょっと一休み、とか思って彼女は比較的太い枝に腰を下ろした(小柄なので折れることはないだろう)もの凄く近くに見える桜にまったりとしていると、油断大敵、とでも言うかのように風がまた書類をさらっていこうとした。 ザザザッ 左手には書類(なんとかキャッチした)で右手にはさきほどまで座っていた比較的太い枝。無謀にも書類を取ろうと飛び出したはなんとか書類と枝を掴むことができた、のではあるが、その姿は人が見たら目を丸くするような姿であるだろう。女の子が猿のように木にぶら下がっているなど見たら誰が褒めてくれるだろうか、がいれば"危ない"と怒られることは間違いないし、他の人が見れば驚くに違いない。そんな自分の姿には苦笑を浮かべていたときだった。人の気配を感じた。 「…。」 「…。」 気配がした方を見る。そこには自分と変わらないような小柄な少年がそこに立ちつくしていた。視線は間違いなく自分に向けられている。そしてその目は間違いなく驚いているようだった。それはそうだろう、桜が綺麗に舞うからと眺めて見たら突然その木から女の子が現れたなど、誰が予測できただろうか。は空笑いを浮かべると、その少年の服装に気がついた。どこかの隊員かと思えば、彼は黒い死覇装の上に白い羽織を着ているのだ。あ、と彼女は短く声をあげた。白い羽織は護廷十三隊内の隊長の証であるのだから。 「…。」 「…。」 彼こそが護廷十三隊十番隊隊長である日番谷だった。彼は彼女に視線を向けたまま声もあげず、そのままを凝視している。そんな日番谷に彼女はただ苦笑するだけだった。桜の花は優しい温かい風に吹かれてふわりふわりと空を舞っている。 |