
騒がしかった試着時間も終了し彼らは穿界門<せんかいもん>をくぐり現世へと向かった。地獄蝶に案内されて彼らは黒崎たちの住まう地区、空座町へと辿り着いた。授業は終わったとはいえ、まだ学校内に生徒たちが沢山いる時間帯ゆえに、まだまだ賑やかな声が聞こえてくる。現世任務は何度か経験済みだが学校に入るのは初めてである。はその嬉しさを顔一杯に出していた。 「、そんなに嬉しいのか?」 「うん、嬉しいし楽しみ!」 「そうか(…可愛いな)」 先頭を歩くのは日番谷とだ。その後ろに阿散井、斑目、綾瀬川、松本…と続いている。なぜか朽木の姿が見えないのであるが、その事情を知っているのか他の者たちは気にしていないようだ。日番谷は隣を歩くを見て少し口元が緩んだ。改めて見ても彼女の制服姿(特にスカート)はいい。眉間の皺もいつもより浅いような気もする…そんなとき。 「で、どこの教室でしたっけ?」 「知らなーい。」 「いやホラ、出るときメモ持ってたじゃないスか。」 「…あぁ、なくしちゃった。」 「なく…ちょっと!何してんスか!」 背後が何だか騒々しくなってきた気がする。日番谷は少しづついつもの眉間の皺に戻ってきている。 「俺これ入んの初めてで霊圧のコントロールが…。」 「下手くそですいません。」 「下手…じゃねーよ!なんで一番シレッとしてんだよ!」 何だか阿散井の叫び声が聞こえてきた気がする。日番谷はやっぱり少しづついつもの眉間の皺に戻ってきている。 「しっかし窮屈<きゅうくつ>な服だなぁ。」 「じゃあ僕たちみたいに裾を出せばいいのに。」 「馬鹿言え!腰ひもに木刀が差せねぇじゃねーか!」 今度は斑目の怒鳴り声が聞こえてきた気がする。日番谷は隣を歩いている満面笑顔のを見て心を落ち着かせようとした。タイミングよく彼女は彼に笑顔を向けた、が、やっぱりやっぱり日番谷はいつもの眉間の皺が戻ってきている。確かな話。 「大体テメーらが真剣は駄目だっつーから!」 「僕らが言ってんじゃないの、法律が言ってんの。」 「意味分かんねー!真剣が駄目ってどういう法律だよ!」 「うるせーぞお前ら!」 とうとう日番谷の堪忍袋の緒が切れた。隣にいるの存在を忘れたわけではないが、彼女のことを気にせずに怒鳴り声をあげた。その声のお陰で斑目たちは静かになったが、既に向けられていた学生たちの視線が更に彼らへと注がれていくこととなった。は呑気に自分たちを見ている学生たちに会釈をして笑顔を向けた。平和なのは恐らく、ただ一人だろう。 「着いたぞ、この部屋だ、ホラ開けろ!」 「…。」 「日番谷隊長、が困ってるじゃないスか。」 「テメェに言ってんだよ阿散井。」 日番谷は彼の前回の言葉"には事後報告〜"を根にもっているのか、もの凄くドスの効いた声で言った。自分よりも見た目の実年齢も幾分か若いであろう日番谷に阿散井は本気で悪寒を感じてしまい、勢いよく1−3の扉を開けた。それは黒崎が何かを感じ取り、視線を扉に向けた瞬間だった。ガラリと勢いよく空いた扉に誰もが視線を向けた。黒崎も例外ではない。 「おーす!元気か一護!」 阿散井の声に黒崎は目を丸くし、そして日番谷たちの姿を完全に確認してからやっと瞬きをした。彼が驚くのも仕方のない話だ、この間別れたはずの尸魂界の死神が揃いも揃って現世、それも自分の通う空座高校にご丁寧に制服まで着て現れるなんて想像もできなかった話だ。 「恋次!一角!弓親!乱菊さん!冬獅郎!」 「日番谷隊長だ!」 隊長格といえど相変わらずな呼び方に日番谷は青筋を浮かべた。が、黒崎はそれを気にせず、視線を日番谷の隣にいる彼と同じくらいの背丈の少女へと移した。初めて見る顔だった。それも当たり前だ、黒崎たちが尸魂界へ来ている間(藍染の謀反時)とは空座町とは違う場所での任務についていたのだから。彼の視線に気づくとは柔らかい微笑みを向けた。その瞬間、時間が止まったような気がした。 「初めまして、でっす。」 「あ、あぁ、俺は…黒崎一護。」 「よろしくね一護くん。」 一護でいい、と言った黒崎には笑って手を差し出した。どうやら握手を求めているらしい。それに気がついた黒崎は少し戸惑いながらその手をとろうと自分の手を伸ばした、のだが。 「きたねぇ手でに触んな。」 ガバリと日番谷にを奪われた。握手を求められたから返そうと思っただけなのに、と黒崎はムッとして日番谷を睨んだ。なぜどうして日番谷の腕に捕われているのか、現状が全く分からないは(癖なのだろう)首を傾げて松本に尋ねるようにして視線を向けた。が、松本は可笑しそうに笑っているだけだった。黒崎は心なしかムッとしていたが、気になることがあったので視線を変えた。 「お前ら何で現世に?」 「上の命令だよ、破面との本格戦闘に備えて現世に入り死神代行と合流せよ、ってな!」 破面<アランカル>という言葉に黒崎は釈然<しゃくぜん>としないような表情を浮かべた。それはつい先日彼が戦い深手を負わされたその相手だというのに…。そんな彼に阿散井は信じられないというような表情を浮かべ言葉を発したが、誰かが彼の言葉を遮った。その声に黒崎は動きを止める。 「…ルキア。」 「久しぶりだな、一護!」 窓のふちに手をかけ、現れたのは朽木だった。彼女と深い関わりのある黒崎は彼女の登場に少々面食らっている様子だった。彼と朽木の関係を彼女から聞いていたは、わぁ、と笑みを浮かべて一人呑気に拍手など送ってみた。折角の再会なのだから普通に会ったのでは、と朽木を別行動にさせたのも実はいうと彼女の提案なのである。任務で来てるんだぞ、と流石の日番谷も言えなかったのは言うまでもなく、相手がだからなのだ。そんな感動の再会(曰く)だったのだが…。 ゴッ パンパンパン なんともけたたましい音が教室に響いた。彼らが教室に入ってきたときから盛大に驚いていた生徒たちだったが、これには更に目を見開いて驚いた。彼らからすれば突然窓から見知らぬ女の子が現れたかと思うとクラスメートである黒崎がものの見事に一方的にやられているのである、驚かないはずはない。それに加えて、朽木により黒崎の魂魄が引き抜かれる。死神化した黒崎などたち以外には見えない。 「ちょっ、何だルキア!何処行く気だコラァー!」 叫びも虚しく、彼は朽木に引っ張られて窓から姿を消した。何とも賑やかな再会ではあったが、意外にも松本たちは驚いてはいないようだった。やっぱりこうなった、と口々に零している。そんな中、は一人満足そうに窓の向こうを見ていた。 「ルキア、やっぱり嬉しそうだったねぇ。」 「…お前、ほんと大物だな…。」 |