
朽木と黒崎が教室1−3の窓から出て行った後も彼らはやっぱり賑やかだった。(黒崎の)へこんでた顔もそそられる、という松本の発言からなぜか綾瀬川が彼女に噛み付くように何か言っている。そしてそれは斑目を巻き込み、なんだか廊下での賑やかさを取り戻しつつある。日番谷はイライラオーラをまとい始めた。彼の癒しは、というと、やっぱりマイペースで教室の中を、学校新聞かぁ、日直当番って何だろう、と呑気に見ている。ガクリとうな垂れた日番谷だが、次の瞬間何かにドンと押された。 「すみません、慣れない眼鏡で斜め下が見えなくて。」 そこに現れた人物に日番谷は大きく目を見開いた。そして自分の目を疑った。松本の方を見れば彼女も少しだけ驚いているようなので、彼女が日番谷を驚かすために彼の存在を黙っていたわけではなさそうである。にっこりといつもの微笑みを浮かべる、突然現れたに彼は、あ、と思い出したように眉間に皺を寄せた。"前が見えなくて"ではなくて"斜め下が見えなくて"と言われたのを、聞き逃しているはずがない。そんな彼の視線に気づいたのかはまたも綺麗な微笑みを浮かべて、すみません、と謝罪の言葉を述べたのであるが、それは絶対に言葉だけで気持ちは入っていない(と日番谷は思った) 「ちょっと、何でが此処にいるのよ。」 「山本総隊長から許可を頂いたので。」 虚昇華に出かけていただが、それが思ったよりも早く終わったらしい。彼は上司である浮竹からたちが現世へと向かったことを聞いて知り合いである山本に話をしに行ったらしい。だが、山本がであろうとも私情(のこと)による頼みを聞くとは思わない。 「いくらでも総隊長が…。」 「(が心配で)僕は書類業務にも全く専念できません…と、言ったら快く首を縦に振って下さいました。」 「(脅しだ、ある意味脅しだ)」 彼らはが山本ににこやかにお願い(ある意味脅し)している場面が容易に想像できた。ある意味瀞霊廷で一番恐ろしいのはであるかもしれない、と心の何処かで思った。そんな彼らの心中など知るはずもないは、視線を黒板から移し、その目にを映した。彼女も少し驚いているようだったが、すぐに彼に駆け寄った。 「!」 彼も一緒に任務につくのだと説明を聞き、彼女は満面の笑みを浮かべた。そして、そこで初めて彼の身なりがどこか違うことに気がついた。何故かは知らないけれど彼はいつもはつけていないはずの眼鏡、と本当に何でなんだか、白衣を身につけているのだ。まるで保健室の先生のように、もしくは科学部等の部員のように。 「あぁ、技術開発局の女性がこれもと言ってくれたんだ。」 特別オプションです、と言われて差し出された眼鏡(だて)と白衣。何で顔を赤らめてそんなオプションをくれたのかにも分からなかったけれど(日番谷と特定以外の人には)優しい彼は疑問を口に出さずに素直にそれを受け取り身につけたようだ。突然現れた何故か白衣の少年に、1−3の女生徒たちは目を釘付けにされていた。その視線に気がつきそちらを見ると、はいつもの癖なのかもしれないが、微笑みを浮かべて会釈をした。次の瞬間黄色い声が上がった。まるでアイドルでも見るかのような女生徒たちの声に日番谷は痛む頭を押さえた。 「頼むからもう何もするな…。」 「え、僕まだ何もしてませんけど?」 (自分に)何をするつもりなんだ、と思う日番谷だがもはや苛立ちを通り越して呆れに変わってしまった。 「聞けよ、此処じゃ真剣はヤバイんだと。」 「そりゃそうですよ、法律ですからね。」 「ったく、法律が何だってんだ!」 「もういい加減にしなさいよねー。」 またも活気付いてきてしまったメンバー。しかもまで加えられてしまった。日番谷は思い出したように額に青筋を浮かべて、静かにするように声を出した。が、またも聞こえ始めた生徒たちの声に耳も傾けた。彼らはどうやら微動だに動かなくなった黒崎(器のみ)にやっとこさ注目したようだ。 「やべーぞオイ…死んでんじゃねーのか?」 「やっぱやべー連中だよ、刺青<いれずみ>だし。」 「気にすんな恋次、人間のたわ言だ。」 的にされた阿散井は少しムッとしたような表情を浮かべたが、斑目がそんな彼を静かに諭<さと>す。そんな間も生徒たちは各々思ったことを口にする。木刀さしてる、金髪、銀髪、ハゲ、オカッパ、巨乳、ハゲ…。そのとき阿散井を諭していた斑目の耳がピクリと動いた。誰かが禁句を言ってしまったのだ。彼はもの凄い顔つきで生徒たちの方を向いた。 「今ハゲっつった二人、順番に出て来い…。」 「気にしない方がいいっスよ、人間のたわ言なんだから。」 ゆらりとまだ静かだが殺気を帯びている斑目に今度は阿散井が静かに諭した。だが斑目の闘争心は静まることはないらしい。彼はしっかりと木刀を握り締めている。 「真っ二つにしてやらぁ!」 「木刀で?」 「僕も加勢するよ一角!」 斑目に綾瀬川も加わり大暴れの予感に日番谷よりも先にがなだめるように前に立った。それを見て日番谷はホッとした。彼は自分には無茶苦茶(不本意)だが一般的な常識は弁えている。選抜メンバーには無法者がほとんどだ(辛うじて変だけど常識人だと思っていた綾瀬川もご乱心のようであるし)彼は眉間の皺を少しだけ緩めた。の、だが。 「ねー、君何歳?可愛いね。」 「え?」 自分の可愛い妹に無謀にもナンパしている男子生徒を目にした瞬間、ピシリと何かが音をたてた。彼は未だに笑顔を浮かべてはいるがオーラがどんどんドス黒いものになってきてしまっている。日番谷はマズイと思いに手を伸ばしたのだが。それをスルリと抜けてはと男子生徒の間に入ってしまった。ガシリと男子生徒の腕を掴んだは斑目ににっこりと笑顔を向けた。 「斑目さん、この方から逝きましょう。真っ二つとは言わずに跡形もなくそれこそこの世界から影も形も残らないように華麗に消滅させてみるのはいかがでしょうか、あはは。」 いきましょうの字が違う。日番谷は一瞬でもの存在にホッとしてしまった自分をこれでもかというほど愚かに思った。そしてこっちに来させた山本を恨んだ(この野郎、それでも護廷十三隊をまとめる総隊長か、と)何やら愉快そうにお得意のマシンガン毒舌トークを綺麗な笑顔浮かべて吐いている彼にはご乱心だった斑目も少々引いているようだった。もはや1−3は収集がつかないような状況に陥っていた。南無。 |