
「ハッピーバースデー冬獅郎!」 朝。十番隊舎の扉を開けると、特有の火薬のにおいと破裂したような音と共に心地の良い声が聞こえてきた。突然のことに俺は驚いたものの、誰が犯人かなんてことはすぐに分かった(ただ、クラッカーなるものが俺に向けられていたのはなぜだろうか)満面の笑みを浮かべるはそれをさして気にするでもなさそうだ。つーか、気づいていない?いや、そりゃねぇだろ。 「あ、ありがと。」 「おめでとー、冬獅郎、今日は冬獅郎の特別な日だよ!」 さして気にしてもいない日だったが、に言ってもらえると何だか本当に特別な日に思えてならない。一度、流魂街育ちの自分にはちゃんとした誕生日が分からない、とに言ったことがあるが、そのときもは、俺の作られた誕生日でもそれは特別な日だ、と言ってくれた(あぁ、俺はいつもに癒されている…たまに、振り回されているけど) 「でもな、クラッカーは人に向けてやんなよ?」 「でも、がね、日番谷隊長にきちんと向けて打たないと失礼だからね気をつけて、って言ってたよ。」 お前の入れ知恵かぁー!俺は沸々と込み上げてくる怒りを、とりあえずは拳を握って堪えることにした(俺はの入れ知恵のせいで髪の毛にクルクル丸まった紙がからまってしまっている)は首を傾げていたが、俺は言葉を濁して誤魔化すと、とりあえずは笑ってみせた。そのとき、前方からパシャリ、というような音が聞こえた。パシャってカメラ…って、いたのか松本ぉ! 「いやですよ隊長、私無視して世界作っちゃって。」 「作ってねぇよ…つぅかカメラよこせ。」 俺は手を伸ばしたが、松本はヒラリとそれを避けた(本当、そういう逃げ足は速いな松本ぉ!)俺は舌打ちをしたが、目の前にがいることを早々に思い出し、強行手段に出るのはやめた。松本は笑いながらも、俺に何かを差し出してきた。 「はい隊長、可愛くて優しい部下からプレゼントです。」 「おこがましい奴だとは思うが…サンキュな。」 松本から、何やら菓子の入ったような袋を受け取る(中身は…甘納豆みたいだ)そのとき、は何やら短く声をあげた。何事だ、と思いながらの方を見ると、今にも泣きそうな顔をして俺を見ている(やめろ、そんな顔して俺を見るな!)色々と大変な俺をよそに、は俺の服の裾を掴んだ。わ、わ、わ、わ、わ(耐えろ、耐えるんだ俺!) 「ご、ごめんー。」 「な、何がだよ!」 「冬獅郎のプレゼント、買い忘れてたぁ。」 何だよ、そんなことかよ!と、俺が言うとはますます表情を暗くした(俺はプレゼント貰わなくても、に祝ってもえらえたら嬉しいんだけど…!) 「冬獅郎、何が欲しい?」 「え。」 「欲しいもの、言って…買いに行くから。」 そう言われても困る。俺は本気で困っていた。が、俺を見る、この真っ直ぐな瞳からは逃れられそうにもない。松本はそんな俺を見てニヤニヤ笑っている(いつも遅刻かそれギリギリのくせに、今日そんなに早いのは、こういう俺を見るためだな、チキショー!) 「ー、隊長の欲しいものはお金じゃ買えないのよー。」 「えー!そうなんですか乱菊さん!」 「うっせぇ黙れ松本!」 「ど、どうしよう、どうしよう!」 未だニヤニヤしている松本を睨みつけてやったが、こいつはそのぐらいで怯むはずはない。俺は諦めて、視線を、目の前のとんでもなく可愛らしい存在に移した。オロオロしてる、俺の裾をつかんだまま。どうするか…俺が欲しいのはお前だ…なんて言えるはずはねぇ。言ってしまえたら、手に入るか、なんて聞かれても答えようがねぇ。俺は考えた末、無難なことを思いついた。 「一緒に、新しくできた茶屋、行ってくれるか?」 「え、一緒に行くのでいいの?」 「…あぁ、そうだ。」 はキョトンとしていたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべると頷いた。じゃあ好きなもの奢るね、と笑った。別に奢ってほしいわけじゃない、むしろ、俺が欲しいのは一緒にいる時間、ってやつだ。幼い子どものように指きりをせがむに応えて、キャラじゃないと思いながらも指きりをした。松本の存在もそのときばかりはキレイサッパリ忘れて、俺は笑った…が、次の瞬間。 「それでは、僕も一緒にお祝いします!」 またもやノックなし、挨拶もなしに入ってきたのは。入ってくるなり、恐らく、護廷十三隊の中の誰もが負けてしまうであろうキレイな笑みを浮かべて俺を見た(俺はその瞬間、ゾクリと寒気に襲われたが)オイこら、待て。俺はを眉を寄せて見た。 「いらねぇ。」 「まぁ、そうおっしゃらずに。」 「いらねぇって。」 「では、何ですか。日番谷隊長は誕生日のお祝いと称して僕の可愛いを茶屋に連れ込んでいかがわしいことをしようと目論んでいるのではないですか?僕には日番谷隊長がそんなことをする人だとは思えないので、とても心痛める考えなんですけれども、その考えを晴らすためにも僕は一緒に茶屋に行こうと思います。」 出た、のマシンガントーク!俺はいつもこの餌食になっているような気がする(聞いているだけで頭が痛くなってくる)誰もが怯むくらいのキレイな笑顔で言われることも含めて、こいつのこれは凶器だ。それこそ、斬魄刀なんかメじゃねぇ!俺は米神の部分を押さえつつも、何とか正気を保とうと努める(問題のは、首を傾げていて、の言葉の意図をあまり理解していないようだ) 「どこの世界に茶屋でいかがわしいことする奴がいるか!」 「分かりませんよ、世界は広く、未知ですから。」 俺からすればお前の頭の中が未知だ!俺はそう叫びたかったが、今までにに勝ったためしはない。後で痛い目を見ることなんか、両手では数え切れないほどある。よって、早々に諦めた。あぁ、もー、俺の誕生日だっつのに、神も仏もあったもんじゃねぇな。 |