今日は突然届けられた大量の書類に休む間もなく励んだからかもしれないけど、すっごく疲れてしまった。書類が終わると寄り道しないで家に帰った私は、よっぽど疲れていたのだろう、夕食も食べないで布団に入った。そして、私は闇を見た。
暗闇、暗闇、暗闇、周囲を見渡しても見えるものはない。何の音も聞こえない。どうしよう、私、一体何処にいるんだろう。夢なのかな、そう思ったのは少ししてから。不思議と、これは夢なんだ、って思えた。嫌な夢…目が覚めないかな、そう思っていたとき、誰かの姿が見えた、!!!!!!!!!




いやだっ!



は勢いよく飛び起きた。カーテンから差し込む光はない、外は未だに暗闇と月の淡い輝きのみ。は荒い呼吸を何とかして落ち着かせようとしている。深呼吸をするものの、脳裏に焼きついた映像が消えようとはしない。彼女は珍しくも眉を寄せ、険しい表情を浮かべた。上がった心拍数はまだ戻らない。彼女は部屋を出て廊下を歩いた。夢だ、夢だ、と思いながらも彼女の歩行速度はおちることがなかった。寝間着の着物のまま彼女は静かに家の外に出た。歩行速度はおちることはなく、それどころか、逆に早くなった。



「(夢だよ、夢、分かってるのに…)」



彼女はまるで導かれるように歩いた。死神たちが住まっている寮。彼女はそこの廊下を静かに歩いていた。時間は既に深夜ともいえる時間になっていた。彼女はそれに躊躇<ちゅうちょ>しながらもある一室の前で足を止める。そして、恐る恐るという表現が合うように、ゆっくりと腕を伸ばして扉に触れた。静かに、だが、確かに存在を教えられるくらいのノックをした。だが、返事は返ってこなかった。



「(寝てるのかな…でも、寝てても絶対に起きるよね)」



は空いている方の手をぎゅっと握り、そして伸ばした手で扉を静かに開けた。失礼なことだとは分かっている。だが、扉を開けずにはいられなかった。扉は静かに開けられる。しかし、そこには捜し求めていた人物の姿はなかった。の脳裏に再びあの嫌な映像が浮かんだ。彼女はそれを振り払うかのように首を振った。そして扉を閉めると、音をたてないようにではあるが、廊下を駆けた。捜し求める人は一体何処にいる。



「あはははは。」



ある一室から賑やかな、聞きなれた声が聞こえてきた。は立ち止まり、また恐る恐る腕を伸ばして扉をノックした。返事があった。彼女は扉を開ける。



「あれーじゃないのー。」

「ってか、寝間着でどうしたんだ?」

も飲むか?」



そこでは、松本と斑目、そして檜佐木が小さな宴会を開いているようだった。は衝動的に溜息をつきたいのを我慢した、捜し求めている人物はここにはいなかったのだ。彼女は笑顔を浮かべてやんわりと断ると、どうしたのか、という疑問も曖昧に、答えずに挨拶をしてそこから下がった。そして彼女は再び廊下を駆ける。心の中にある、少しずつ大きくなる焦燥感。彼女は熱くなる目頭をこすった。少しでも気を抜いてしまえば今すぐにでも泣いてしまいそうだった。彼女は駆ける、隊舎から少し離れたところまで彼女は必死で駆けた。だが、捜し求めている人物はいない。



「う。」



じわりとにじんだ。堪えきれなくなった衝動が彼女をじわりじわりと浸食していく。一粒こぼれると、それは枷<かせ>が外れたかのように次々と地面へと落ちていった。淡い月明かりがそれを照らしている。彼女が涙を零すことは、滅多になかった。母親を失ったとき、仲間を失ったとき。少なくとも夢のせいで泣くなんてことは本当に幼いとき以来だった。そんな彼女の背後から、ジャリ、と土をするような音が聞こえた。



?」



名前を呼ばれた。しかし、彼女は振り向けなかった。だが、名前を呼んだ人物は、目の前にいるのがであることを確信していた。彼女の傍まで歩み寄った。そして、肩をひいて彼女を自分の方へと向かせた。そして、が涙を流していることに気がついた。



、泣いてん…っ!?」



言葉は最後まで言えなかった。突然、が彼に抱きついたから。彼女の捜し求めていた人物、日番谷冬獅郎。彼は、突然の衝撃に耐えつつ、の体を支えた。彼には何が何だか分からなかった。どうして自分の家で眠っているはずの彼女が隊舎近くまで来ているのか、それも寝間着のままで。どうして彼女は涙を流しながら自分に抱きついたのか。だが、彼には考えることなどできなかった。彼女は小さく声をあげながら必死で彼にしがみつくように泣いていた。日番谷は、そんな彼女を愛しさと切なさの混じった想いで、ただ、頭を撫でた。



「冬獅郎、冬獅郎、冬獅郎。」



幼い子どものように自分の名前を呼び続けるに日番谷は愛しさを感じるほかなかった。どうして泣いているのか分からないけれど、ただ、自分を求めていてくれることは、嬉しかった。



、俺はここにいるぞ。」

「行かないでね、どこにも、行かないでね。」

「…行くわけないだろ。」



胸がぎゅうっと締め付けられた。身体よりも心が熱くなった。日番谷は溜まらず背中に手をまわし、を強く強く抱きしめた。暗闇、光は淡い月の光のみ。それでも、彼女はやっと捜し求めていた日番谷に触れることができ、安心感を得た。未だ涙を流しつつも彼女は必死に日番谷を抱きしめる。



「俺がから離れられるわけないだろ。」




















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どこにも行かないで。そう言うから離れることもできず、結局日番谷は自室にを連れて行くことになってしまった。今日(既に昨日になっているが)仕事が大変だったこともあり、休んでもらいたい休みたい反面、この状況で休んでもらいたい休みたいというのは辛いものがあった。が、自分はともかくには寝てもらいたかったので形だけでも寝ることにした。当然、はともかく、日番谷が眠れるわけはない。次の日。



「あら、隊長眠たそうですね。」

「まぁな、昨日一睡もしてねぇんだ。」



欠伸をしつつ書類と対峙する日番谷に松本は苦笑した。は朝一度家に戻った(今は書類を届けに行っている)朝起きて自分が日番谷の部屋にいることを改めて理解した彼女が慌てて彼に謝ったのは言うまでもない。日番谷が大怪我をする夢を見たことにより不安が抑えきれなくなった、と言った。そんな彼女に日番谷は、夢は人に話せば正夢にはならない、と安心させるように言った。確かに寝不足にはなったが、彼は別段不幸ではなかったし、嫌でも、迷惑でもなかった。



「(寝不足の割には幸せそうね、隊長ったら)」



が、それから数分後。素直に出来事を話されたが物凄い笑顔を浮かべて(もちろんノックなしで)執務室に現れるのは、言うまでもないこと、かもしれない。











月明かりの下の優しさと幸せな寝不足
初めて俺を求めてくれた、大切な時間。












コメント

甘くなりましたか?
隊長は夢主には甘いですけど。
最後のオチをあえて書かなかったのは、
隊長への優しさということで…。
え、違うって?

ずっと前のアニメエンディング、
橙を聞きながら妄想…いや、
思いついたものでした!
でも、どこにも行かないで、くらいですけど。