護廷十三隊十三番隊副隊長であると護廷十三隊十番隊副隊長である松本乱菊は背中合わせに立っていて、そして両者共各々の斬魄刀を構えている。彼らを囲んでいるのは虚たちだ。彼らは今、現世のとある街に出現した虚の昇華を任されている。その虚との戦いがまさに今始まったのである。



「予想以上の数ね。」

「はい、まったく当てにならない情報ですね本当。」

「…サラリと毒吐かないの、そんな顔して。」



の言葉に苦笑しつつ松本は斬魄刀"灰猫"を握る手の力を強めた。集められた情報によると虚の数は現在目にしている数の半分くらいだと記されていた。尸魂界内がまだ慌しい時期であるのでそんなに沢山の死神を出払わせるわけにもいかず、副隊長二人ならば大丈夫だろうと言われて赴いた任務。は頭の中で虚の数を数える…ひいふうみいや…既に両手では数え切れない虚たちに彼は少し困ったように笑った。彼は斬魄刀を地面に突き刺した。



「黒き翼を広げよ…黒翼竜。」

「唸れ…灰猫。」




彼らは斬魄刀の始解の句を読み、解放する。それと同時に向かってきた無数の虚たちをなぎ払い、斬る。松本の斬魄刀は刀身が灰状に変形し舞い散り、そして虚を切り裂いた。彼女により一気に沢山の虚が昇華されたのを見ては笑み、自分の斬魄刀"黒翼竜"を持っている手を逆手にし、空を裂くように思い切り斬った。すると突如刀による衝撃と共に大量の水が虚たちに襲い掛かった。これが黒翼竜の能力、黒い刀身からは想像もつかない透明に近い美しい水による攻撃。今度は松本が笑んだ。



「やるじゃないの、。」

「松本さんこそ、相変わらず見事なお手前で。」



世間一般ではお世辞やときには嫌味にも近いと思われるようないいぶり、だが、松本は嫌な顔をせず、また笑った。彼は決して嫌味で言っているわけではないのだから。ときに丁寧過ぎると思うことはあっても彼女は彼のそんなところが結構好きだったりする。松本は短く、ありがと、と言うと本格的に虚と見合う。一刻も早く終わらせて、ちょっとばかり現世を観光して、尸魂界に戻り、好きな和菓子屋の菓子を食べながら酒を一杯、とか思うと口元が緩んだ。だが斬っても斬っても虚は次々と現れる。



「どうする、応援呼ぶ?」



尋ねられたは首を縦には振らなかった。今は瀞霊廷内が穏やかではないのは確かだ、未だ治療中の者たちもいる、被害のなかった自分(藍染たちの事件があった間は別の任務についていた為事件に関わっていない)がここで甘えるのは…そう彼は思った。だが自分だけではない、松本もいるのだ、彼はやはり応援を呼ぶべきかと考える。彼の心中を察したのだろう、松本は小さく溜息をついたがグッと親指をたてて笑い、斬魄刀をより強く握った。幸い、虚のレベルは高くはない。



「これで半分は済んだでしょうか?」

「さぁ、そのぐらいじゃないの?」



流石の彼らも四方八方を虚に囲まれ、大量の虚と対峙しながら戦えば体力も精神力も削られてくる。そんなとき大きな絶叫とも悲鳴ともいえるような声をあげて現れた巨大な虚、それを見て彼らは顔を見合わせ、頬に一筋の汗を伝わせた。その虚はその中でも一番の猛者なのだろう、周囲の虚たちは其れに道を開けるように避けた。



「仕方ないですね。」

「まさか、あんたアレする気?」

「早々終わらせた方がいいです、そして嘘の情報を提供して下さった方にそれはそれは気持ちを込めたお礼を。」

「いやいや、それは日番谷隊長の所為じゃないから…。」



早まるな、と松本は必死に彼をとめる。確かにこの情報を受けてきたのは松本の上司である日番谷であるが、情報を集めたのは日番谷ではない。それを十中八九知っているであろうはわざとそう言っているに違いない(八割は私情により)



「限定解除を頼む方がいいんじゃない?」

「大丈夫です、限られた霊圧でも卍解出来ますよ。」



副隊長であるは副隊長となる前から卍解を習得している。彼は密かに日番谷に勝るとも劣らずの天才児と呼ばれている。結構名の通っている貴族出身であることから並々ならぬ能力をもっているのはも変わらない。は斬魄刀を強く握り、構えた。言葉を紡ごうとしたときだった。大きな爆音と共に目の前に立っていた巨大な虚が悲鳴をあげて消えていった。突然の出来事に彼らは目を見張った。



ったく、早く応援呼べよ。



現れたのは銀髪の少年と茜色の髪の少女、日番谷とだった。小柄な二人にしては斬魄刀は普通の刀よりも少しだけ長く、彼らと同じ身長ほどのものを二人は構えている。巨大な虚を倒したのは日番谷なのだろう、周囲が凍りついてしまっている。は背後から自分たちに襲い掛かってきた虚をばく転して逆に背後に回り、斬魄刀でソレを斬った。彼女の斬魄刀はとは逆に純白の刀身をしており、姿形はのものとよく似ている。



「冬獅郎、後ろも注意だよ。」

「馬鹿。がやると思ったんだよ。」

「そうなんだ。」



目の前で仲睦まじく会話を広げている(虚はまだ健在だ)彼らにはにっこりと微笑みを浮かべたまま斬魄刀を振るった。水が日番谷の髪を一、二本ほどさらって虚を貫いた。冷ややかな風を感じた日番谷は額に青筋を浮かべて自分の斬魄刀"氷輪丸"を更に強く握った。



「すみません、応援呼ぶほどのものではないと思っていましたけど僕たちを心配して折角来て下さったのですから、この際日番谷隊長には血反吐を吐くほど虚を倒して頂ければ僕たちとっても助かります、宜しくお願いします。」

「わぁ、凄いノルマだね冬獅郎頑張って!」

「(そういう意味じゃねぇよ)」



の言葉は決して"たとえ"なんかではなく、嫌味と黒さ百%でできているんだと日番谷は怒りを通り越してもはや頭痛を密かに感じるほどだ。松本はそれを可笑しそうに笑っているし、自分にがそういう風に接するようになってしまった原因の一種であるはのほほんと笑っている。自分の気持ちを伝えてもいないのに(の)この仕打ち…日番谷はこの遣る瀬無さを存分に虚たちにぶつけることを決意した。その所為あってか、虚たちを全員昇華するのにそれだけ長い時間は要さなかった。



、お前何で斬魄刀の能力使わなかった?」

「そうよ、の炎は隊長たちに影響ないじゃない。」

「いや、白翼が使うほどでもないって。」



の斬魄刀"白翼竜"それはのもつ"黒翼竜"と対になる斬魄刀であり、具象化されたときもよく似ている。は卍解の習得はしていないものの、よく己の斬魄刀と心通わせ振るう。"黒翼竜"は水を操り、"白翼竜"は炎を操る。相反する能力ではあるが、白翼竜の炎は味方と意識した水も氷も消すことはない(だが黒翼竜はその性質故に白翼竜以外の炎を呑み込もうとすることもある)彼らの斬魄刀は尸魂界全土でただひとつの対なる刀である。は斬魄刀を鞘に戻した。



「白翼は穏やかでいいね、黒翼なんか煩くて仕方ない。」

「(お前に似てるんじゃねぇのか、本当は)」

「何か仰いましたか隊長、そういえ…「言ってねぇ!」











嘘吐き呼ばわりされた人












コメント

やっぱり隊長の扱いが悪いです、男主さん!
個人的にはちょっと焦ってる隊長好きですが。
タイトルと最後があまりかみあってないですが、
一応文章中に嘘吐き呼ばわりされてますので(隊長が)
この話はメインが男主だなぁ。