
五番隊隊長"藍染惣右介"の謀反から数日が過ぎた。瀞霊廷内の修理や騒ぎの間に溜まった書類業務、負傷者および欠員分の補充に瀞霊廷内はテンヤワンヤしてはいたが、それも最近少し落ち着いてきたと思われるようなある日の今日。一人の小柄な少女は綺麗な花々を両手一杯に抱えて廊下を歩いている。その花の量は凄く彼女自身埋まっているようにも見える。そう感じるのか、通り過ぎていく人は彼女に笑みをこぼしながら声をかけて通りすぎて行く。彼女は四番隊救護詰所のある部屋の扉をノックした。 「お邪魔しまーす。」 許可を貰い、彼女は部屋の扉を(両手が埋まってるので足で)開けた。扉を開けると花々の隙間からベッドに腰をかけている人物が驚いたような表情(花が歩いてきたように見えた)を浮かべたのが微かに見え、彼女は可笑しそうに笑った。ベッドに腰をかけている少年は驚嘆の表情から戻すと、ベッドから下りようとしたが、慌てて少女が止めた為そのままベッドに腰をかけたまま彼女が近くに来てくれるのを待った。 「驚いたぜ、花が勝手に歩いてきたのかと思った。」 「そんな花があったら素敵だねー。」 「んなわけあるかっ、そう思うのはお前だけだ。」 少女""は、えー、と声をあげて花を部屋の片隅にある机の上に広げて置いた。あまりにも大量過ぎる花に今度は机が埋もれてしまっている。何処でそんなに大量の花を手に入れてきたのだろうか、そう思って少年は苦笑いを浮かべるとへと視線を戻した。彼女の茜色の長い髪に白い小さな花たちがまるで着飾るようにぴったりとくっついている。それを見て彼は今度は可笑しそうに笑って手を伸ばした。突然髪に触れられた事には不思議そうに首を傾げたが、すぐにまた笑った。 「冬獅郎、怪我はどんな?」 「あぁ、もうほとんど治ってる、もう少ししたら出る。」 少年"日番谷冬獅郎"は自分の右手を握ったり開いたりしてみる。手も足も違和感は感じられない。治癒力の高い四番隊の者たちの毎日の治療のおかげであろう。彼は護廷十三隊十番隊隊長であるが故に他の負傷者たちよりも手厚い看護(隊長が不在だと隊の業務がままならない為)を受けた事もあるのだろう。日番谷の言葉には安心したように柔らかい微笑みを浮かべる。その笑みに思わず魅入り、一瞬呼吸を忘れた日番谷ではあるが、彼女につられるように彼も柔らかく微笑んだ、ときだった。 バァン 「調子はいかがですか、日番谷隊長。」 やたらと大きな音をたてて、とよく似た顔の人物が部屋に入ってきた。ノックなしで大きな音をたてて入ってきたにしては彼の言葉の口調はとても丁寧で物腰は柔らかいのであるが。彼は入ってきた人物を視界に入れるとおもむろに嫌そうな顔をした。目の前の少女と顔は本当によく似ていて、入ってきた彼は見た嫌な感じはしない。だが、日番谷にとって彼は厄介な者でしかなかった。 「わ、悪くねぇ…お前が入ってくるまでは。」 「それは良かった。」 「も冬獅郎のお見舞い?」 「恐らくね。」 少年""は実はの双子の兄だったりするのだが、彼らの身長差ゆえに兄妹だと思われている事が多い。彼は視線を日番谷からに移すと極上の微笑みを浮かべた。それにつられるように彼女もへらっと笑ってみせる。それに満足したかのように彼は彼女の頭を優しく優しく撫でた。そんな光景を見ながら日番谷は彼の言葉に嫌そうに眉間の皺をいっそう深いものにした。 「(恐らくって何だよ、恐らくって)」 だがは彼の言葉の意味を気にしているようではなく(恐らく気づいていない)思い出したように花をいける為の花瓶を求めて日番谷の病室から出て行った。四番隊の隊員に花瓶がないのかを聞きに行ったのだろう。残された男二人、片方の日番谷は思い切り嫌そうな顔をすると体を倒し布団を頭までかけた。それでもは笑顔を崩さずにいる。見た目はとても誠実そうな好青年に見えるのだが。 「日番谷隊長、具合でも悪くなりましたか?」 「あぁ…お前が来たからな。」 「添い寝でもして差し上げましょうか?」 「け っ こ う だ !」 大きな声を出して拒否する日番谷には面白そうに笑った。そんな彼に益々日番谷は(布団に隠れてはいるが)眉間の皺を深いものにした。早く帰れ、とか彼は内心思うものの、はベッドの横にある椅子に腰をかけてしまうだけで部屋から出て行こうとはしない。霊圧はもともと控えめにしているだが、彼の動かない霊圧を感じ、布団の中で日番谷は耐える(早く帰れと念じながら) 「と同じ顔ですよ?」 「はお前みたいにでかくねぇし陰湿じゃねぇよ!」 「嫌だなぁ、腹黒って言って下さいよせめて。」 「(余計タチ悪いじゃねぇかソレ)」 同じ顔であるのも双子であるから納得のいく話だ。茜色の柔らかい髪と琥珀色の優しい瞳だけではなく、鼻、口元などからもよく見なくても血縁者であると分かる。日番谷も初めて彼らを見たときには驚いた。よく似ている顔、だが、彼らの身長差は本当に双子なのかと疑いたくなるものがあった。片や170cmを超える細身、片や日番谷と変わらない小柄さ、入隊時はその奇妙なほどの差に瀞霊廷内も騒然としたほどだ。ただ、たとえの片割であろうとも日番谷はが苦手だった。実は日番谷はに入隊時から密かなる想いを抱いているのではあるが、どうしてもは(変な意味ではなく)好きになれない、嫌いではない、苦手なのだ。 「それならなら良いと仰るんですか、あぁ日番谷隊長もそのような身形<みなり>ながらも立派な男性ですね、前々から思っていましたけどにはもう少し危機感を持ってもらわないと何か過ちが起こったらと思うと僕は気が気じゃないんですよ。」 まず第一にまるで機関銃のように発せられる言葉。そんな穏やかな表情(瀞霊廷内では好青年と誉れ高い)を浮かべているくせに自分の敵だと認知してしまえば笑顔と言葉で殺れるほどである。日番谷は思わず布団の中で耳を塞いだ。は違う隊(十三番隊)ではあるが役職は自分の方が上だ、それなのに丁寧な口調で刺々しい言葉の刃で自分を攻撃してくる。一言でいって本当にタチが悪い(しかも敵と認識していない者には神のように優しい) 「(こんにゃろぉ、お前本当にの双子の兄か)」 「はい、実の双子の兄です。」 「人の心中を読むなッ!」 「その辺にしときなさいよ。」 またもノックもなしに扉が開いた。(人の心中を〜で飛び起きた)日番谷は入ってきた人物を見て呆れたような表情を浮かべた。入ってきたのは飴色の長い髪を持つ、女性にしては長身で、ぞくに言うグラマーな女性だった。彼女は周囲を見渡しての姿を探し、彼女がいない事が分かると状況が分かったようで少しだけ可笑しそうに小さく笑った。 「松本さん、こんにちは。」 「こんにちは、。」 「普通病室に入るときはノックぐらいするだろお前ら。」 「あらぁ、すみませんーん。」 女性"松本乱菊"は謝っているわりに未だ可笑しそうに笑っている。自分の状況について笑っているのだと容易に理解できた日番谷はそれが気に入らず、枕を松本に投げつけた。そんな子どものような行動は効かないと分かっていたが、やはり松本によって簡単に受け止められてしまい益々腹立たしさは募ってしまう。目の前にいるのは片や性格の良いとはいえない男、片や性格のくえない女、日番谷は大きな溜息をついた。そんなとき、ノックの音がした。 「花瓶貸してもらった。」 帰ってきたに日番谷は安堵の溜息をついた。この二人を目の前にしていると彼女が舞い降りてきた天使のように見える。そんな日番谷には満面の笑みを浮かべた(一部の女性死神たちが見たら悲鳴に近い嬉々とした声をあげそうなほどの)だがそれは日番谷にとって鳥肌ものでしかない。 「(このシスコン野郎!)」 |