永遠なんて存在するのかな。変わらないものなんてこの世の中にあるのかな。空だって毎日違うもの、変わるもの。人だって、変わらないわけがないんだ、きっと。昨日いた人が今日いなくなったって、全然おかしくないんだ。私だって、分からないもん。 「いい、、パパとママはね、お別れしたのよ。」 「なんで?」 「大人には大人の事情があるのよ、いいわね。」 分かってちょうだい?ってママは言ったけど、それはお願いなんかじゃないんでしょ。もう私が何を言っても何にも変わらないんでしょ。そう思っていても私は、ただ、首を縦に振るしかなかった。行かないで、行かないでパパ。私はママもパパも好きなんだよ。行かないで。だけどパパは行ってしまった。そして…。 「今日からはおばあちゃんと暮らそうねぇ。」 「ママは、ママは何処?」 ママも行ってしまった。私を置いて何処に行くの?何を言っても変わらなかった。分かってちょうだい?ママはまた同じことを言って、私の頭を撫でて、それで行ってしまった。それでも、私には優しいおばあちゃんがいた。優しくて温かくて、私のことを大事に想ってくれるおばあちゃんがいた。 「ねぇ、おばあちゃんは何処にも行かない?」 「そうだよ、と一緒にいるよ。」 「よかった!、おばあちゃん大好き!」 「おばあちゃんもが大好きだよ。」 だけど。 おばあちゃんも行ってしまった。 私の、手の届かないところへ行ってしまった。 ぜ ん ぶ か わ っ ち ゃ う ? そんなことないよ。
![]() - 0. 心騒がす朝の出来事- "ずっと一緒だよ!" どうして今、こんなことを思い出したのだろう。と、思うことは誰にでもあることなのかもしれない。俺は肌寒さを感じて夢から覚め、そう思った。夢を見ることは(憶えていること)滅多にない。だが、今日の夢はやけにハッキリと憶えている。小学校一年のときの夢だった。高い位置でふたつに髪をゆっていて満面の笑みを浮かべて俺の名前を呼ぶ女子。そこには勿論、俺の姿もあった。赤いランドセルを背負い、そいつは楽しそうに俺の手をひく。幼い声と小さな手。だが、それはいつの間にか消えてしまった。 「随分昔の夢、見たな。」 俺は微妙な気持ちになって頬をかいた。別に夢に出てきた女子がその頃好きだった、という特別な気持ちがあったわけでもない。ただ、幼馴染ということで他の女子よりかは優しくしていたところがあるかもしれない。ただそれだけで、好きだという感情はなかった。どちらかというと…。 「冬獅郎ー、珍しく遅いじゃん。もしかして美人な姉ちゃんに囲まれてるウハウハな夢でも見てたのか?」 「お前じゃねぇ、つかノックなしで入ってくんな雪獅郎。」 俺、日番谷冬獅郎、の双子の弟である日番谷雪獅郎。こいつにとっては初恋の女子だったわけだが。気持ちいいもんじゃないが、一卵性双子のせいか俺とまったく同じ容姿。性格は自他共に認める正反対だ。初めて会う奴はたいてい驚く。初めて会ったときは愛想が良かったのに次に会ったときは無愛想だったり、その反対だったり。見慣れると絶対に俺とこいつを間違う奴はいない(むしろ、絶対に間違えてほしくないもんだ) 「朝から苛々するなよ、母さんが呼んでるぞー。」 誰のせいだ、誰の。そう思いつつも俺は、これ以上相手にして苛々させられるのは勘弁だと思い二度返事だけしておいた。パタンと扉が閉まる音がすると、俺は何かに解放されたかのように溜息をついた。そういえば、昔の夢を見た、と言えば雪獅郎はどんな反応をするだろうか…って、やめとくか。うるさい他ない。"えーマジーいいなー"とか"実は冬獅郎も好きだったんじゃないの"とか"可愛くなってるかなー美人になってるかなー"とか言ってうるさいに違いない。俺は言わなくてよかった、と一人安堵の息をこぼした。 ----- 「え、マジで?」 リビングに行った俺は、突然の発言に驚いた。呑気にソファに座って紅茶なんぞ飲んでる母親。爆弾発言をしたにも関わらず、その表情は全く動じていない(いや、こいつが動じることなんて滅多にないかもしれねぇけど)雪獅郎は向かい側のソファに座って嬉々とした声をあげている。俺はこいつみたいに喜べない。当たり前だろ、だって。 「本当よ、明後日からウチに女の子が住むことになったの。これはもう決定済みだからね、反対意見は聞きません。」 決定済みって、おい、相談もなしにそれかよ。しかも、意見すら聞かないのかよ。俺は喉元まできている言葉を一生懸命に飲み込んだ。こうなったら何を言っても聞きやしねぇ。それどころかこっちがボロくそに言い負かされてしまう。仕方のない話だ。"誰のおかげで食べていけてるの"なんて言われたらぐうの音も出ない。一番の稼ぎは父親だが、共働きしている母親も負けないくらい働いている(その上家事をこなしているだけあって権力は強い) 「大丈夫、その子とっても可愛くていい子だから。」 「え、可愛いの、やりー!」 「おい、少し黙れ。」 俺と同じ顔で喜ぶな(八つ当たり)つぅか、何でこんなことになったんだか。俺はなるべく、このどうしようもないことを考えまいと新聞を手に取った。雪獅郎からはジジくさいと言われるが、とりあえずは新聞を読んで落ち着かせることにしよう。そして出来れば"やっぱりこの話はなくなったの"と母親が明日にでも言ってくれることを願うことにした。 |