- 2. 手の冷たさと心の温もり -








「…だれ?」



は薄っすらと涙を浮かべて、小さな体をさらに縮めたように必死に座り込んでいる。自分の手で両耳を一生懸命塞いでいるのが分かった。雷は未だに鳴り続けている、光る度に体が大きく揺れている。



「…どうして?」



どうして俺が自分の部屋に来たのか、驚いているのだろう。は耳を一生懸命に塞いだまま、雷に体を震わせながら俺に視線を向けた。その質問に俺は小さく溜息をついた。にではない、自分に向けての溜息だ。どうして何も考えずに行動してしまったのだろうか、俺らしくねぇ。それでも、来てしまったものは仕方ない。思い出してしまったものも仕方ない。俺は静かに扉を閉めて足を進めた。



「お前…昔から雷はだめだっただろ。」

「…ちがう。」



ふるふると首を振った。だが、次の瞬間大きな音が聞こえてきて小さな悲鳴をあげては体をかがめた。そんな顔、そんな反応を見せられて"違う"と言われても全然説得力がない。今度はに向けて溜息をつき、俺はベッドの上に綺麗にセットされている掛け布団をとった。そしてそれをバサリとにかけた。突然の俺の行動には驚いているようだった。



「大丈夫だ…怖くねぇ…。」
「ほんとぅ?おちてこない?」



今よりも幼い顔をしたが、の声が思い出される。よくよく見ると何だ、全然変わってない。その大きな目も我慢しているとき、必死に唇を噛んでいる癖も、色素の薄い柔らかそうな髪も。俺は目を細めての顔を見た。つい最近見た懐かしい夢を今、また思い出した。も俺をじっと見た。未だに泣いている目で、じっと。そして、その小さな口がゆっくりと開いた。



「シ ロ ち ゃ ん。」

「え。」



ゆっくりと、言葉が紡がれた。聞こえたのは懐かしい呼び名。今じゃ誰も言うこともない、昔のあだ名。俺は一瞬耳を疑った。"私、憶えてない"そう言われた、確かに言われたのだ、俺のことも雪獅郎のことも憶えてないと。は耳を塞いでいた手を放し、それを俺の手にと伸ばした。そっと、恐る恐るという表現があうかのように触れた、その思ったよりも更に小さな手はヒヤリと俺に冷たさを伝えた。



「ごめんなさい、私、憶えてた。」

「……。」

「シロちゃん。」



俺を小さく呼んだあと、また雷が鳴った。耳を塞いでもいなかったは小さな悲鳴をあげて、また体をかがめた。何やってんだよ、そう言いながらも俺は不思議と口元が緩んでいるような気がした。らしくないような気がして、一生懸命に口元を戻そうと試みるが、それは一向に戻る気配はない。それに苦笑しつつも俺は目の前で小さく、小さくなっているに視線を向けた。



「馬鹿だな、耳から手、放すからだろ……。」




















-----



「やーらし、やーらし!」



突然、扉が開いたかと思うと騒がしい奴が拗ねたような顔をして入ってきた。つぅか、ここの部屋だぞ、勝手に入ってきていいのかよ(自分のことは棚にあげているが)雪獅郎は気にもしていないようにこっちへ足を進めてきた。そして、そっとの頭に触れる。雪獅郎の躊躇<ちゅうちょ>せずにこういう行動ができることを、俺はたまに凄いなと思うことがある。俺にはそうそうできるもんじゃねぇ、さすがは学校一の女好き(自称らしい、自慢できることじゃないと思うが)



「雷怖いならさ、俺らがいるときなら俺らと一緒にいればいいだろ。赤信号みんなで渡れば怖くないって言うし?それと同じようなもんじゃないのか?」

「いや、違うだろ。」



間違った知識を植えつけてどうする。俺はすかさずツッコミをいれた。は目をパチパチさせて俺らを見ている。いきなり馴れ馴れしすぎたか(俺じゃなくて雪獅郎の方)雪獅郎を追い出すか、いや、それとも俺が出て行くか。そんなことを考えているときだった。



「…ふっ。」



小さな小さな、零れたような声が聞こえた、聞き逃してしまいそうに、本当に小さかったが。そして俺は次の瞬間呼吸をするのさえも忘れてしまいそうになった。の…笑った、顔…。



ちゃん…。」

「…ん?(つぅか何か嫌な予感がするぞ)」

ちゃん、可愛いー!」

「ひゃぅ!」



勢いよく、よりによって抱きつきやがった雪獅郎に拳で一撃くらわせたのちに引っぺがした。油断も隙もありゃしねぇ。俺はこいつの首根っこを掴んだまま睨みつけた。は目をパチパチさせて、何が起こったのかよく分かっていないような顔をしている。雪獅郎は雪獅郎で、ちぇ、とか言いながら笑ってるし。



「てめぇ…もう一発殴られとくか?」

「あー、雷もう鳴ってないみたいじゃん?」



雪獅郎は俺の言葉を無視して窓を開けた。雨はもう止んでいるようだった。雷は鳴っていない。それどころか、とても静かだった。は顔をあげて空を見た。俺も。



「さぁてと、ご飯食べに行こうぜちゃん!」

「あ、待て、てめぇ雪獅郎!」












ぜ ん ぶ か わ っ ち ゃ う ?





そ ん な こ と な い よ 。
か わ ら な い も の も あ る よ 。



































-----------------------------------------------------
展開が速すぎでした。
でも、シリアス我慢できなくて。
だって、Reison がかなりシリアスだし。
学パラくらいは明るく行きたい。
気がするのですが、
シリアスは混じると思うので、
出来れば恋愛メインにしたいなぁと。