- 6. 歓迎された人見知り -








「いいか、学校では絶対にシロちゃんなんて呼ぶなよ?」

「うん。」

「俺のことは雪ちゃんでいいから。」

「うん。」

「それと雪獅郎に追いかけられたら逃げろよ。」

「うん。」

「じゃあ冬獅郎に睨まれたら泣いてやれ。」

「うん。」

「…そのくらいにしておいたら、二人とも。」



新学期の始まり、九月。今日初めて新しい高校である空座高校に出向く。いつものように朝起きて(つぅかこいつ寝起き悪いのなんの起こしに行ってやっと起きるくらい)顔洗って朝飯食べて、歯磨き、諸準備を終えたに俺は諸注意とばかりに言った(面白がって雪獅郎の奴まで余計なことを言い始めた)そんな俺らを苦い笑いを浮かべて母親が口を出した。その言葉を聞き、母親を見た俺らは、その視線を辿り見た。そこには、何だか悶々をしているようながいた。



「ただでさえ緊張してるんだから。」



そう言えばそうだ(つぅかこいつさっきから、うん、としか言ってねぇし)人見知りなこいつが、いきなり知らない奴らばっかりのところに向かうなんて、戦場に赴くのと然程変わらないような気持ちなのかもしれない。まぁ、根は悪い奴じゃないし、対人恐怖症っていうほどでもない(打ち解けられなかったらなってたかもしれないけど)どうにかこうにかやっていけるんじゃないだろうか。まぁ、問題はクラスだな。俺か雪獅郎のクラスだったら何とかフォローしてやれるけど。…俺、フォローできるか?今考えたら。



「まぁ、深く考えてどうこうなるわけじゃないし、とりあえず学校に行って成るように成れ?」

「お前は相変わらず軽いな…。」



呑気もいいとこの雪獅郎に溜息をもらしつつも、学校指定の靴を履く。いい加減にこの履きにくい靴をスニーカーにして欲しいもんだが、生徒総会ではまだこの議題は一度も出ていない。それこそ雪獅郎をそのうち生徒会長にでもして中学の頃みたいに改正させるっつぅのもいいかもしれない。こいつは軽い奴だが、頭は俺よりもいいし、勉強も意外にやっているのだが…。



「じゃあちゃん、いざ出陣。」

「…腰にまわってる手を即座に下ろせ馬鹿野郎。」




















-----



「とりあえず職員室に行くんだろ?」

「そう母さん言ってたな。」



朝、早めに出たので朝練している部に所属している者しか学校には来ていない。彼らはのクラスを聞くため、まずは職員室に行くことにした。一体どこのクラスになったのか、それが冬獅郎としても問題である。雪獅郎のクラスになったら、ある意味心配では在るが、対人面に関しては◎だろうと冬獅郎は思った。彼は自分と違って友好範囲は広い、女も男も(たまに八つ当たり気味にケンカを売りに来る男がいなければ尚更いいと本人は言っていた)そうこうやっている間に職員室へと着いた。決まりどおりノックをして扉を開け、名前と学年クラスを名乗り入った。



「日番谷弟!」



入った途端、声とともに雪獅郎が誰かにガシッと腕を掴まれた。見てみるとそこには褐色の肌の長い黒髪の女性、四楓院夜一が立っていた。相変わらず気配も何もない先生だけに冬獅郎も雪獅郎も一瞬唖然としてしまった。ちなみに四楓院は雪獅郎のクラスである1−Aの担任。一度掴んだ腕を放すわけにはいかない、というように口の端をあげて彼女は笑んでいる。



「え、なんスか先生。」

「丁度いいところに来た、教材運ぶのを手伝ってくれ。」

「え、俺、今大事な…「ほら行くぞ若者!」



問答無用だった。雪獅郎は半ばひきずられるような形で職員室から出て行ってしまった(どうやら資料室に教材を取りに行くところからお手伝いらしい)残された二人は顔を見合わせて瞬きを数回した。とりあえず、煩い奴がいなくなった、と冬獅郎は思った。良かったのか悪かったのはよく分からないが。彼は自分のクラスの担任を見つけると彼女に話しかけた。



「越智センセ、こいつ今日からここ通う奴なんスけど。」



眼鏡をかけた黒い髪を低く結っている人物、越智美諭は冬獅郎のクラス1−Bのクラス担任である。彼女は冬獅郎を見てから彼の隣に立っているを見た。



「あぁ、だったっけ、うちのクラスだ。」

「(マジかよ…)」



と、いうことは自分がしっかりとフォローしなくてはいけないようだ。人の世話をやくのはどちらかというとやはり雪獅郎向きで冬獅郎には不向きなのだが、母親からもシツコイほどに言われているし、幼馴染ということと、自分から関わりをもったということもあり、じゃあ頑張れよ!という風に易々逃れるわけにもいかなかった(意外に彼は生真面目な面があるようだ)



「急な転入だったからな、何分準備不足なんだよ。」



そう言って越智は書類やら何やらを出した。どうやら色々と書き物があるらしい。長くなりそうなら先に教室に行っておくかと思ったが、そう言う前にに服の裾を掴まれてしまった。その意図はどうやら"置いていかないで"のようだ。顔が見えない位置なので表情は分からないが、冬獅郎は密かに苦笑をもらしつつも、その場で待つことにした。



「静かな子だなぁ。」

「人見知りする奴なんで。」

「へぇ…まぁうちはいい奴ばかりだし大丈夫だろ。」



やっと色々し終わった彼らは予鈴が鳴る中余裕をこいてゆっくりと教室へと向かっている。教師が慌てていないのだから焦る必要もないのだろうか。は担任の教師といえど、やはりドギマギしているようで、冬獅郎の横から少しだけ顔を出して越智を見て、ペコリとお辞儀をするくらいだった。そんな姿を見ると、昨日の松本との会話は表彰物だ、そう冬獅郎は思った。



「さぁ、入っ…パァーン!



教室の扉を開けてを先に入らせようとしたときだった。突然派手な音がしたかと思うと上から色とりどりの紙テープが落ちてきて、火薬のにおいが微かにした。不意打ちで意味の分からない出来事に冬獅郎も少々驚いているようだった。その中で越智だけは平然として教室へと入る。



「お前らぁ、私を巻き込むな、ったく。」

「(何だ、雪獅郎の奴がクラスに早々バラしてたのか)」



誰が準備よくクラッカーを持っていたのかは知らないが、どうやら転入生が自分たちのクラスに来ることを知った彼らはささやかなお祝いにと行ったらしい(事実を言うと雪獅郎がクラッカーを所持していたのをあげたらしい)



「1−Bにいらっしゃーい!」

「よろしくね!」

ガラガラ、ピシャン



歓迎の言葉と笑顔が送られたはずなのに、突然教室の扉が閉められてしまった。冬獅郎の後ろに立っていたはずのの姿が教室から消えてしまっていた。予想外のことにクラスメートたちは目を丸くする。予想内のことに冬獅郎は呆れた表情を浮かべた後、溜息をこぼした。扉越しに、、と呼びかける。すると、静かにゆっくりと再び教室の扉が開かれた。…四分の一ほどではあるが。そこからは恐る恐るのぞきこむようにして顔を見せる。



「あ、ありがとう、ございます。



逆に目立つような行動をとってしまった人見知り少女が、この後全然知らない人たちに笑われてしまい、ますます混乱してしまうのは、言うまでもない話。




































-----------------------------------------------------
だんだん愛着を感じ始めてきた今日この頃。
冬獅郎くんが冬獅郎くんじゃなくて涙です。
次回はクラスメートたちを交えてのお話に。
シリアスが嘘のように平和なお話ですね。