日番谷は穿界門を通り抜け、地獄蝶に導かれるままに現世へと足を進めた。そこに辿り着いた頃には日は昇り、眩い朝日と共に一日の始まりを迎えていた。日番谷は一歩踏み出し、光の眩さに目を若干細めた。まるで携帯電話のような伝令神機を開いて現在虚は表にいるかどうかを確かめる。松本の話によると昇華された捜索中の虚は一体。もう一体名が知れている虚がここ、空座町に存在していることを彼は忘れてはいない。



「面倒くせぇことになるのはご免だな。」



彼は電柱の上から町を見下ろした。出る前に通信により捜索に出させていた隊員たちは戻るように指示した。五人編成の班だったが、隊長である日番谷が出向いたのだからその必要はなくなった。名の知れている虚といえど、情報局の情報によると本当ならば日番谷が出るまでもないはずだ。とりあえず、気になることを先に確かめようと、日番谷は空座町に住んでいる黒崎を探すことにした。彼の霊圧を探る。以前よりは霊圧を隠すのが上手くなった黒崎だが、集中すればその欠片のようなものを探ることができる。



「あれ、一兄は?」

「まだ寝てるよ、今日は寝る日って言ってた。」



黒崎は、今日が休日であるからこその長時間睡眠に入っていた。シンプルな部屋のつくり。窓側に設置されているベッドの上で熟睡しているようだ。目覚まし時計もあらかじめセットを解除されているし、妹たちにも起こさないように伝えている。問題の父親は用事で外に出かけているため、一番の問題は解決済みである。神出鬼没な非、人間であるも朝には弱くて正午過ぎてからではないと現れることもない(昼食は大抵浦原商店で貰っているようだ)昨夜から、今日は寝れる、と確信していた。だが。



おい起きろ。



予想外の人物に黒崎は蹴られた。それはもろに腹部に決まってしまったため、痛み悶えつつ、目を覚ましてしまったようだ。突然蹴り起こされるというアクシデントに見舞われた彼は当たり前だが額に青筋を浮かべて飛び起きた。怒り狂った目はやっとのことで目の前の少年を映した。が、彼を視界に入れると、怒りよりも驚きの方が気持ち的に強くなってしまったようだ。黒崎は日番谷を思い切り指差した。



「と、冬獅郎!?」

「日番谷隊長だ。」



数年前からこんな会話をやりとりしているくせに、一向に変わらない。飽きずにそれに青筋を浮かべている日番谷に黒崎は可笑しそうに笑ったが、すぐに、彼が何でこんなところにいるのかという疑問を抱いたのだろう、笑うのをやめた。



「どうして冬獅郎が現世にいるんだ?」

「(…直ってねぇ)気になることがあってな。」

「つーか、身長伸びてねぇか。」

「話逸<そ>らすな、確かに伸びたとは思うが。」

「よかったなー!」

だから話逸らすなっつってんだろ!



身長は伸びても変わらず短気だ、黒崎はもう一度蹴られた腹部を押さえながら思った。別に話を逸らすつもりはなかったのだが、身長が低いことを気にしていた(であろう)日番谷の気持ちをくんで大きくなったこと(とは言っても黒崎よりもまだまだ低いが)を喜んでやったというのに…そう黒崎は心の中で悪たれをついた。



「で、気になることって何だ?」

「…ここ数年、空座町の昇華率が非常にいい。」

「へぇ、それはいいことなんじゃねぇの。」



空座地区はお前らの管轄じゃねぇか、と黒崎は呑気に言っている。確かに、自分たちの管轄地区の昇華率がいいのは悪いことではない、むしろ良いことだ。だが、問題は誰が虚を昇華しているかということなのである。隊員たちには虚を昇華したのなら必ず報告するように伝えている。できるだけこと細かく。月末に提出する書類にそれを集計したものがあるからである。それがここ数年大幅に違っているのだ。虚の昇華報告と実際の昇華とが。代行である黒崎が昇華したことを考慮したとしても、何か違和感を感じてしまう。日番谷は訝<いぶか>しげな表情を浮かべた。そこで黒崎は初めて状況がヤバイことに気がついた。



「そういや俺、最近虚めちゃくちゃ倒してるような。」

「文句のひとつも零さずにか?」

「そりゃあ、あれだ、俺だってもう大人、だからな!」

「…黒崎一護、お前、何か隠してないか?」



まわりくどい言い方ではなく、ズバッと聞かれて黒崎の心は密かながら激しく揺られた。自分よりもまだ幾分か年下に見えるというのに、日番谷はまるで嘘を見抜くかのように真っ直ぐに貫くような目で見てくる。初めて対面したときもそういう印象だったが、と黒崎は頬に一筋の汗を伝わせた。それでも必死に平然さを装った。彼は気づいているのだ、という人物は分からないが、の"存在"に抽象的ではあるが気づいているのだ。



「…そうか。」

「あ、おい冬獅郎!」

「俺はもう少し現世にいる、何かあったら連絡しろ。」



そう言うと日番谷は窓から出て行った。すぐに彼の背中は見えなくなった。黒崎は窓の外を見て、苦い表情を浮かべて頭をかいた。いつかはこうなるだろうと予想していたことは予想していた。死神でも代行でもない存在が虚を倒していくのは決して目立たないことではない。



「馬鹿、よりによって七面倒な奴に見つかったぞ。」




















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「え、虚倒すなって?」



ここは元死神が現世で開いている怪しい店、浦原商店。昼食を浦原商店でとり、どうやら呑気に昼寝をさせてもらっていたらしいを黒崎は無理矢理起こし、物凄い剣幕で彼女に虚を倒さないように伝えた。寝起きはあまり良い方ではなく、寝ぼけていた彼女だが、ぶんぶんと体を激しく揺さぶられてやっと覚醒したようす、彼女は黒崎の言葉をほとんど返すように答えた。



「今動くと確実に見つかるぞ、冬獅郎に!」

「とうしろう?」

「それって、日番谷隊長のことスか?」



同じく昼寝をしていたらしいこの家の主、浦原が目を覚ましたようだ。昼寝をしていたというのになぜか帽子を被ったままであることに少しばかり疑問を抱く黒崎だが、それは置いといて、と彼は浦原の声に頷いた。



「…そういえば、今近付いて来てるっスね。」

「え、えぇぇぇ!」



日番谷の霊圧を感じた浦原が平然と言った。それに驚くのは黒崎だけだったが(はいまいち話が読めてない)慌てる黒崎に首を傾げていただが、どこか隠すところ、という彼の言葉により押入れへと無理矢理入れられた。霊圧を察知されてしまえばお終いだが、彼女は霊圧を極度に抑えることができることを黒崎は知っているのだ。彼女がわけの分からないまま、黙ってろ、と押し込められてから一分後、浦原の言うとおり彼はそこに姿を現した。



「何だ、お前もいたのか。」



浦原を探していたらしい日番谷はそこに黒崎の霊圧には気づいていなかったようだ。浦原商店には霊力を持つ者が数人いるからか、はたまた、あまり気にしていなかったのか。彼は黒崎から視線をずらし浦原に顔を向けた。



「単刀直入に言う、お前最近虚と関わっているか?」

「いいえ、最近はなぁんもしてませんよ。」



あー、と黒崎は浦原にも事情を説明してなかったことを悔いた。だが、頭の回る浦原のことだ、事情はだいたい分かっているだろうに。歯痒かったが今下手に何かを言うと絶対に勘ぐられるに違いない。相手は日番谷冬獅郎だ、容姿で判断すれば痛い目を見る。浦原の答えを聞き、日番谷は顎<あご>に手をあてて考える。



「そうか、邪魔した…「ハックシュン!」



タイミングがよかった。あまりにもよすぎた。日番谷は窓に足をかけてそこから去ろうとしていたというのに…黒崎は手で顔を覆った。確かに彼女は黒崎の言うように黙っていた、だが、くしゃみをしたのでは黙ってる意味もない。日番谷は訝しげな表情を浮かべると何とか誤魔化そうとする黒崎を無理矢理押しのけて音のした方、押入れへと向かっていく。浦原はまるで狙ったかのようなタイミングのくしゃみに苦笑はしているが、日番谷をとめようとはしていない。面倒なことに自ら足を突っ込むのは嫌らしい。日番谷は押入れを開けて中にいる少女に目をやった。



「…お前は誰だ。」























コメント

マイクラブライフ2
接触が最後だけありました。
主が喋ってないですね。
本当は浦原商店で昼食とっているのを
書こうと思ったのですが長いので略!
もっと隊長の身長に話を膨らませたかったなぁ。