
「…お前は誰だ。」 突然押入れに入れられ黙らされ、今度は突然押入れを開けられ喋らせようとされる。は目の前にいる見たことのない少年を不機嫌そうに見た。それというのも彼が自分を訝しげな表情で見ているからである。 「お前こそ誰だよ。」 黒崎よりも怖い者知らずがいた。黒崎は目を丸くし、浦原ははやし立てるように口笛を吹いた。日番谷は護廷十三隊十番隊隊長である。だからこそ彼と同格かそれ以上の人物でない限りソウイウ口を聞くことは隊員たちにも絶対にできない。容姿からしたら黒崎よりも幾分か幼く見えてしまうが、現世の年齢に換算すると余裕で百を超えている(それでも隊長の座についている割には若年であるが)そんな人物に対しては真っ直ぐに日番谷を見てそう言い切った。更に…。 「人に聞く前に自分が答えろ。」 「…何だと。」 「と、冬獅郎!こいつお前のこと知らねーんだし!」 だから仕方ないだろ、と黒崎がフォローに出た。気が強いのことだ、絶対に自分からは退きはしないだろう。それでなくても自分が連れ戻されてしまうかもしれないという局面だというのに、事情をあまり分かっていないせいか黒崎を無駄に冷や冷やさせる。彼のフォローに未だ眉間の皺は寄ったままではあるが、睨むのはやめた。 「日番谷隊長、相手は可愛い女の子じゃないっスか。」 「関係ないな。」 そんなことを気にしていたら十番隊などまとめられはしない。それでなくても気ままにサボる副隊長がいるというのに。どんな状況なのかよう分からないだったが、とりあえず押し入れからは出てきた。そして目の前にいる日番谷をマジマジと見た。そして手をポンと打った。 「お前、イチゴと同じしに…モゴッ!」 死神、と言い切る前に黒崎に口を塞がれる。のことを知られないために一生懸命になっている黒崎だが、当の本人は実のところ事情を半分も分かってはいない。途中までしか言えなかったが、彼女の言いたいことを日番谷は分かった。死神、という単語が出てきたのに目の色を変える。浦原が苦笑いで思わず緩んでしまった口元を扇子で隠した。 「死神を知っているのか…。」 「と、冬獅郎。」 「つぅかお前、何でこいつを魂葬していねぇんだ?」 死神代行であっても魂葬も可能だ。日番谷はどうやらのことを魂葬できていない幽霊だと思っているようだ。それも仕方のない話だ、彼女の霊圧は抑えられている状態であるし、服装があまりにも現世の格好だ。尸魂界に送られた者は服もいつの間にか着物へと変わっている。彼女の場合は現世に来てから服装を変えたのであるが。日番谷が勘違いをしてくれたことに黒崎はホッとした。戻らない、と言ったのは本人なのだが、どうにもこうにも彼女は今自分が置かれている立場を分かってはいない。 「いや、その、えーっと。」 「万が一でも虚になる可能性があるのは知ってるだろ。」 責めるような目で見られ、黒崎は苦い表情を浮かべた。確かに、死神に尸魂界に導かれなかった魂、とりこぼされた魂、虚から守ってもらえなかった魂が心を無くして虚となってしまう。だが、彼女はとりこぼされたわけでも、導かれなかったわけでもない。一度は尸魂界に送られてある方法で現世へと現れたのである。しかし、それを日番谷に言うわけにもいかない。どうにかしてこのまま誤魔化せたら、と黒崎は思った。 「私はコンソウする必要なんてないぞ。」 「何だと?」 「わー!未練があるんだここにまだ未練があるんだよ!」 一気にまくしたてるように黒崎は言った。内心、どうして自分がここまで庇わなくちゃいけないんだろう、とか思ったわけだが、一度庇ってしまった以上、後に退くわけにもいかなかった。 「未練、だと?」 「そうなんだよ、それを断ち切ったら俺が魂葬する!」 「お前、そんな甘いこと言ってたらキリがないぞ。」 「わーってるって、今回だけ、今回だけだ!」 話が読めず、また何かを言い出そうとしているの口をさりげなく、かつ、慌てて手で塞いだ。日番谷には見えないように。日番谷は考えているようだった。黒崎には借りがある。以前の藍染の件にしても、十番隊管轄の虚昇華協力にしても。護廷十三隊の隊長としては我侭を頑としてきかずにすぐさま魂葬するのが適切であろう(本当にキリがないし、危険性もあるため)だが、百歩譲って今回は魂葬の先送りを認めることにした。 「やりっ、ほらお前も喜べ!」 「…ヤッタァ。」 滅茶苦茶棒読みに近かったが。とりあえず、この場は目を瞑ることにしたようだ。若干の違和感を感じるものの、日番谷はを魂葬されていない魂だと納得した(滅茶苦茶生意気な)調査したかったのは虚の異様な昇華率であったのだが、結局それに関してはなんの情報も得られず終いだ、そう思って彼は窓の縁に足をかけて外へ出ようとしていた。そのとき、ピピピと何かが音を鳴らした。それは虚の出現を知らせるもの。日番谷は伝令神機を開いた。それと同時にの動きがとまる。まさか、と思い黒崎が彼女の腕をとろうとしているときだった。 「虚だ…。」 彼女は黒崎の腕をスルリと抜け、日番谷の横を素早い動きで通り抜け外へ出て行ってしまった。突然の出来事に日番谷も黒崎も一瞬目を見張ってしまったが、黒崎はすぐさまを追いかけて外へ出ようとした。だが、彼の腕を日番谷が掴んだ。 「おい、あいつは本当に、ただの魂魄なのか。」 |