- vol.11 強い想いと弱い想いと交差 -

















第一級重禍罪 朽木ルキアを極囚とし
これより25日の後に真央刑庭に於いて極刑に処す

これが、

尸魂界の最終決定。



日番谷はこの事実をには黙っていた。
彼女は転び、起き上がったばかり。
そんな彼女を今奈落の底に落とすわけにはいかない。
"暫くはを頼んだぞ、日番谷よ"
彼に与えられた任務は、既に彼の意思になっていた。
しかし、噂とは早く広まるもので。
彼の想いとは裏腹に、彼女の耳にも自然に入ってきた。
その日、彼女はやはり泣いていた。
日番谷は声をかけるのさえも戸惑った。
自分も尸魂界の人間。
他の死神と…変わらないのだから。



「冬獅郎ちゃん、お仕事ありますか?」



が。
彼女は変わった。
変わりようのない決定を聞いた日の翌日。
やはり彼女は泣き腫らした目をしていた。
それがとても痛々しかった。
けれども。
それはその日だけだった。



「あ、あぁ…でも。」

「書類運ぶくらいなら、頑張りますよ。」



彼女は笑顔を浮かべて言った。
作り笑いなんかじゃない。
それは日番谷にも分かった。
それでも。



「けど…「じゃあ三番隊にこれよろしくー!」



隊長である日番谷の声を遮り、松本が言った。
は彼女から20cm程の厚みのある書類を受け取る。
またもや地図を描いてもらうと、それも受け取った。
そして、日番谷が何かを言おうとしているのにも気づかないで十番隊舎を出て行った。



「松本。」

「何かさせてあげた方が…いいんですよ。」

「…松本?」



閉められた扉を見る松本の表情は。
何処か、哀しげだった。




















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「三番隊さん、お届け物です。」



入り口でそう言うと、誰かが扉を開けてくれたようだ。
書類で両手が使えなかったには有難かった。
彼女は開けてくれた人にペコリと頭を下げた。
顔を上げて見上げると、そこには金髪の男がいた。
彼はを見ると、優しく笑った。



「有難う、見た事ないけど何処所属かな?」

「あ、いえ…。」

「イヅル、その子が噂の総隊長の孫娘さんや。」



イヅルと呼ばれたのは金髪の男。
彼を呼んだのは、銀髪の男。



「市丸隊長…この子が。」

「そ、可愛いやろぅ?」



とりあえず、書類を受け取って下さい。
そう思いながらもは言えない。
市丸は笑みを浮かべたまま、彼女に歩み寄った。
上から下へと舐めるように見られている。
そんな気がしてならなかった。



「昔も可愛かったけどなぁ。」

「…知りません、これ、十番隊からです!」

「あぁ、おおきに。」



は市丸から目を逸らした。
彼のその笑みが身体に突き刺さる感じがした。
それから。
昔…その単語を聞きたくなかった。
隊長と彼は呼ばれていたけれど、はそんな事お構いなしに彼にそれを半ば強制的に渡した。
空が少し曇った。
足早に三番隊舎から出ようと思った。
が、そのとき。



「乱菊、泣いとったで。」



市丸の言葉には振り向いた。
ドクン と心臓が跳ねた。
その言葉とは裏腹に彼は笑っていて。
それが何処か引っかかる。



「一番仲良かった子に忘れられとるんやぁ。」

「何の…事…。」

「そら哀しいわなぁ。」

「それ以上を困らせるな。」



彼らの会話に割って入ってきたのは、またも日番谷で。
は彼の声にとても安堵した。
思わず彼の方へと駆け寄った。
日番谷は日番谷で不機嫌そうな顔をしている。
彼はを行かせてしまった後。
行き先が三番隊だという事にハッとした。
三番隊隊長である市丸はハッキリ言って食えない奴だ。
その彼が、突如現世から連行された総隊長の孫娘であろう人間を見て、何もしないわけがない。
慌てて追いかけたのである。



「なんや、十番隊長さんやないですか。そんな顔して、どないかされはったんですか?」

「こいつを迎えに来ただけだ。邪魔したな。」



日番谷はの手をとると背を向けた。
イヅルと呼ばれた青年、吉良はただ何も言わなかった。
市丸の性格が良いとはお世辞にも言えない事(ある意味良いかもしれないが)は知っている。
それでも余計な事を言うとまた仕事をサボるやも。
彼は戸惑いながらも口は挟まなかった。
背を向けた彼らを見て、市丸は口の端を上げた。



「相変わらず彼女には優しいんですなぁ。」

「…。」



日番谷は彼の言葉を無視して進む。
彼の言葉が意味ありげなのは言うまでもない。
それでも、見た目の割に日番谷は冷静沈着で、その容姿で陰で嫌味を言われても気にしなかった。
手を出してくる者は返り討ちにする事はあっても。
無視されても市丸は未だ笑っていた。



「あぁそぉやった、隊長さんは忘れてはるんでした。」



その言葉に答えたのは。
彼が閉めた扉の音だった。



「市丸には近づくな…。」

「…うん。」



自分でも市丸から何かを感じた。
それが嫌な予感なのか、はたまた偏見なのか。
それは自分でもよく分からない。
しかし、市丸の事よりも。
もっと気になることがあった。
"乱菊、泣いとったで"
何の事なのか、本当に分からない。
それでも、動かずにはいられなかった。
不思議な想い、堪らず、1人で駆け出した。



「なっ、ッ!?」



日番谷の手も届かない。
彼女の駆けるスピードは、あまりにも速い。
霊体(死神)にとても慣れているかのように。
は迷わず十番隊に駆け込んだ。
騒々しく入ってきた彼女の姿に誰もが驚く。
中でも、突然飛びつかれた松本は目を丸くした。



?」

「乱菊さん…。」



考えるより先の行動だった。
彼女は普段は行動より先に考えるタイプだ。
しかし、たまに、考えるよりも先に体が動く事があった。
現に、ルキアが狙われているときもそうだった。
本当に泣いていたのか証拠はない。
それが本当だとしても、何故なのか分からない。
"一番仲良かった子に忘れられとるんやぁ"
その台詞はどういう事なのか分からない。
何も知らない自分が何を出来るのかも分からない。
そんな自分が"謝る"なんて事はとても軽率だ。
彼女は込み上げる不思議な気持ちを堪えた。



「…何か、私にお願い事、ありますか?」



の言葉に、松本はふっと小さく笑った。
そして背後から伸ばされた手を優しく握った。



「そうね、じゃあ、"乱菊ちゃん"って呼んで。」
"乱菊ちゃん、乱菊ちゃん"



雲が。
晴れたような気がした。



























雲には、

空には、

真実には、

まだ届きそうにない。






[ 人は誰もが弱さを持っているものだ ]



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シリアス、シリアス。
まぁ、原作がシリアスチックだし、普段。
松本夢になりそうだ。
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