
"迎えに来た" 私は誰かに依存して生きている。 弱く、脆<もろ>く。 誰かを頼って生きている。 出来る事はただ、笑う事だけ。 心配しないで。 大丈夫だよ。 それでも。 分かる人には分かってしまう。 「早く成仏した方がいいよ。」 私は1人の男の子に話しかけた。 自分も十分幼いが、その子はもっと幼い。 胸から鎖が出ている彼は、既に生きてはいない。 俗に言う、幽霊。 幽霊が見える人間。 私には霊感というものがあった。 「うん、有難うお姉ちゃん。」 そんな人間は多くはない。 が、私はそんな数少ない人間の内の1人。 私は透き通って消えていく男の子に手を振った。 完全に姿が見えなくなってから、手を下ろした。 霊が見えるのは、物心つく頃からだった。 最初は生きてても死んでても見分けはつき難かった。 その所為で色々と言われる時期もあった。 「ただいま、おじいちゃん。」 「おかえり、。遅かったのぅ。」 そのときは、おじいちゃんだけが味方だった。 おじいちゃんは私が霊を見れる事を知ってても、 私を異常者として見なかった。 いつでもの味方だよ、と優しく言ってくれた。 私の周りに霊が見える人なんていなかった。 だから、必死で隠し始めた。 もう嫌な事言われるのも嫌だし。 おじいちゃんの引越しで明日から新しい学校に行くし。 隠し通さなくちゃいけない。 だけど。 その学校で私は、彼に出会った。 「黒崎くんも幽霊見えるんですか?」 「…お前も、見えるのか?」 何度目かの登校している時。 人気のない空き地から何やら話し声が聞こえた。 そこにいるのは1人の男の子と、1人の霊だった。 彼の名前は、確か黒崎だったはずだ。 オレンジ色の髪が目立ってた。 …人の事は言えないけれど。 「一護ちゃん、おはよう!」 「だぁぁぁ一護ちゃん言うな!」 不良と名高い彼は、別に怖い人ではなくて。 一見ぶっきらぼうで無愛想に見える態度でも。 よくよく見ると優しくて義理堅い人。 一人っ子の私はすぐに一護ちゃんに懐いてしまった。 ----- 「…一護…ちゃん…。」 はゆっくりと目を開けた。 何か白い物が視界に入った。 微かに頭の下が温かいような気がする。 彼女は未だ夢心地が覚めていないようで、少しの間何も言わず、ボーっとしていた。 が。 「俺は"いちごちゃん"なんかじゃねぇぞ。」 少し不機嫌そうな声にハッとした。 この声、そして、この体制は…。 慌てて体を起こす。 と、同時にゴンッといういい音がした。 が机の角で頭を打ったからだ。 「馬鹿ッ!」 「…だ、大丈夫です。」 打った箇所を押さえて、は涙を堪えた。 角で打ったのだ、痛くないはずがない。 「仕事の…邪魔してごめんなさい。」 「別に、俺が勝手にしていただけだ。」 隊首会の解散の後。 意識を失ったを日番谷は十番隊舎に運んだ。 が、横にさせる為の場所がない。 仮眠室があるにはある。 しかし、そこでは自分は本当に何も出来ない。 配置につけない以上、書類仕事だけでも済ませたい。 監視の強化を言い渡されている為、仮眠室に寝かせて自分は別室で書類、なんてのは出来なかったのだ。 いつも使用している隊長専用の机ではなく、比較的高さの低い机を使用し、自分の膝を枕に彼女を寝かせた。 彼女の視界に入った白い物は、彼の羽織。 「…。」 「…。」 それから両者とも言葉が出なかった。 日番谷が書類に没頭しているわけでもない。 彼の筆を持っている手は止まっている。 だが、2人は会話も視線も交わせる事が出来ない。 何とも言いようのない空気が流れる。 日番谷は唇を軽く噛むと、筆を机に置いた。 筆を置いただけの小さな音がやけに部屋に響いた。 思わずは彼の方を見てしまった。 「…冬獅郎、ちゃん?」 彼の瞳は彼女だけを映している。 真っ直ぐに見つめられる。 決して静かとはいえない外野。 今も旅禍である黒崎達を探している。 しかし、何故か彼らには別の音など聞こえない。 まるでこの世界に2人しかいないかのように。 「…。」 「…ッ。」 しゃがみ込んだままのは思わずそのまま後退った。 彼の深い碧色の瞳が、少し怖く感じた。 自分と変わらないのに、何故か。 日番谷も体勢を低くしたまま、彼女を追う。 とうとうは壁に背をぶつけた。 ダ ン ッ 「…俺は。」 「とうし…ろ…。」 冬獅郎ちゃん。 そう呼ぼうとした彼女は最後まで言えなかった。 全身に微かな温もりを感じた。 自分が彼に強く抱きしめられていると分かるまで、そう時間はかからなかった。 どうして抱きしめられたのかは分からない。 それでも、彼の、自分の背中に回す両手が少し震えているような気がして、彼女は自分の手を強く握った。 「私…「悪い!」 またも言葉を遮られる。 一瞬にして彼の腕は彼女の体から離れた。 解放されたは彼の顔を見た。 そしてまた自分の手を強く握った。 「俺は仕事をする…すまない。」 その"すまない"には何が含まれているのか。 彼はそれ以上何も言おうとはせず。 まるで他の事を考えまいとするように、筆を強く握り、書類だけに目を向けた。 「(謝るのは、私の方だ…)」 日番谷冬獅郎は護廷十三隊、十番隊、隊長。 尸魂界、瀞霊廷に存在する人物。 沢山の部下を持ち、それに加えて重い責任を持つ。 それが、自分の存在により過重な負担をかけている。 自分の存在が彼を揺らがしている。 困らせている。 彼女はゆっくりと握っていた手を開いた。 爪跡が内出血したように赤く染まっている。 「(私はやっぱり誰かに依存している)」 |