- vol.19 過去と今と想いと -

















「お前を奪い返されるわけには行かねぇんだよ。」



その言葉に深い意味がある事。
それは、にも、発した本人も知らない。
ただ、日番谷に募る想い。
黒く禍々しく突き刺さるような想い。
それを人は…嫉妬という。
それ故に彼は今、切羽詰まっている。
今黒崎を逃してはは奪い返されてしまう。
そんな気がしてならなかった。



「もう一度言う…退け。」

「嫌です。」



日番谷は霊圧を上げた。
逃がさない。
逃がしはしない。
脳裏に、が黒崎と去っていく映像が流れた。
それを振り払うように彼は頭を振った。



「俺はお前を攻撃したくない。」

「私もです。」

「それならっ!」

「でも、私は一護ちゃんを守ります。」



は箒星を地に突き刺した。
彼らの周囲半径数m程を蒼白い光が包んだ。
日番谷はそれに触れる。
コンコン、と音がする。
それは半透明だが、何か壁のような強度があるようだ。



「閉じ込めたのか。」

「私は攻撃しません、時間稼ぎ、させて下さい。」




















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「え…ちゃんが?」



話を聞いた雛森は耳を疑った。
しかし、彼女に話した人物。
松本が冗談を言っているようには見えなかった。
雛森は眉を寄せた。
その話が信じられなかった。



「日番谷くんがちゃんを牢に入れるなんて。」

「…あの方にはあの方の想いがあるのよ。」



あの後。
黒崎の霊圧が遠ざかったのを感じ取ったは、箒星をいともあっさりと鞘に戻したのだった。
彼女の目的は黒崎が遠くに行くまでの時間稼ぎ。
目的を果たした後。
斬魄刀を日番谷に向ける必要などなかった。



「でも、日番谷くんはちゃんの事…。」

「雛森…きっと隊長は心の底で憶えているの。」

「心の、底で?」

「そう…。」



心配そうな表情を浮かべる2人。
そんな彼女らに歩み寄ってきた人物。






各隊の隊舎には罪人を収容する牢がある。
それは十番隊とて例外ではない。
十番隊、隊舎牢。
は今、そこにいた。
暗く、閉鎖的な場所、牢であるから仕方のない話だ。
彼女は端の方で膝を抱えて座っていた。
日の光も差し込まない牢。



「(十番隊長である冬獅郎ちゃんに斬魄刀を向けたんだもん、こうなっても仕方ないよね)」



そう思う反面、彼女は膝を強く抱えた。
そうしないと膝がガクガクと震えてしまう。
そんなとき、斬魄刀が淡い光を帯びた。
次の瞬間。
何かが現れた。



〔何でアイツに攻撃しなかったんだよ!〕



それは小さな小さな男の子。
まるでお話に出てくる妖精のような。
彼は何やら怒っている様子。
その小さな体で一生懸命に訴えている。
彼を見て、は呆然とした。



「妖精?」

〔馬鹿だろお前、俺だ、箒星だ!〕

「ほうき…ぼし?」



箒星は刀を指差した。
どうやら彼は、斬魄刀の具象化のようだ。
彼はの周りをヒュンヒュンと回ってみせた。
その姿は、やはり御伽の世界の妖精に見える。



〔やっと俺を呼んだかと思うと、何だあの使い方〕

「はじめまして、ですよね?」

〔違う…と言い切れないか、ある意味別人だもんな。〕

「え。」



の目の前で止まると、彼は腕を組んだ。



〔でもお前は奥底で憶えてた、だから俺を呼んだ。〕

「どういう事でしょう?」

〔俺は随分と前からお前を知ってるぞ。〕

「それは…。」



それは、死神としての自分を知っているという事。
彼女が山本達の言う通り、は本来死神であり、尸魂界に存在する者だという事だ。
は少し前に見た夢を思い出した。
十の文字を背負う者。
松本と日番谷と話をしていた人物。
彼女は体を乗り出した。



「教えて箒星、私は昔此処にいたんですか?」



真剣な表情。
箒星は頭をかいた。



〔あぁ、いた。〕

「じゃあどうして私は現世にいたの…私は…。」

〔俺も、よく知らないんだよ。〕

「え。」

〔斬魄刀が鞘から出てないとき俺は大体眠ってるから。〕

「ねむ、ってる?」

〔大虚との戦闘中、突然俺を戻したと思えば…それから俺は長い眠りから覚めなくなった。〕



は頭を活動させ、話を要約する。
つまりは、最後に斬魄刀を解放したのは大虚との戦いであり、そのときに自分は命を失ったのだ。
"彼女は亡くなったはずだ"
けれども。
そう結論を出すと可笑しい。
"元々死神である"霊魂"をわしが義骸に入れた"
命を失ったはずの自分が何故義骸に入っている。
義骸は、死神の仮の肉体だとルキアは言っていた。



「もしかして"私"は死んでなくて…〔誰か来た!〕



話の途中ではあるが。
誰かの気配、霊圧を察知した箒星は斬魄刀に帰る。
突然の事には慌てて斬魄刀を揺さぶったが、彼は出てくる気はないようだ。
そのとき、草履が地に擦れる音がした。
箒星が言うように誰かが来たのだ。
は体事そっちに向いた。



「すまない、驚かせたようだね。」



聞き覚えがあるような、ないような。
それでも、心の何処かで安心できるような。
そんな優しい響きがした。
彼女はその声に顔を上げた。
その顔を見た事はあった。
確か、と、彼女は思い出す。
初めて十番隊の書類を運ばせてもらったときの事。
途中阿散井に出会い一悶着あったが、その後駆けつけた日番谷と共に彼女は五番隊に顔を出している。



「えっと…五番隊の「藍染惣右介。」



さり気なく、自然に。
彼女が名前を言う前に言われてしまう。
そんなに藍染は微笑んだ。



「雛森くんが言ってたよ、名前を間違えて憶えてたと。」

「あ…間違えました、確かに。」

「だから間違われる前に言ってみたんだ。」



意地悪だったかな。
と、彼は少し面白そうに笑った。
別にその笑みは嫌ではなかった。
目の前に立っている人物は大人で、優しくて。
堂々と立っている。



「ところで、私に何か用でしょうか。」



五番隊の隊長がこんな所まで何の用なのか。
皆目検討がつかない。
しかし、用がなければ此処に来るはずもない。
そもそも藍染と彼女は初めて顔を合わせたときも、挨拶程度しか言葉を交わしていないのである。
は不思議そうに彼を見た。
藍染はそんな彼女を見て、優しく微笑み、それから、手に持っていた鍵で牢の扉を開けた。
静かに中に入る。



「日番谷くんが君を牢に入れたと聞いたから。」

「心配して下さったんですか、有難う御座います。」

「それも勿論あったのだけど…信じられなくてね。」



藍染は何やら考えるように腕を組んだ。



「私は彼の邪魔をしてしまいましたから。」

「それでも…彼が君を牢に入れるなんて…。」



彼の表情は、本当に真剣なもので。
もつられるように表情が固くなった。



「日番谷くんは君を大切に想ってるから。」



藍染の言葉は彼女の予想にはないものだった。
それ故には瞬きを数回した。



「…確かに冬獅郎ちゃんは優しいです。けど、私と彼はそんなに長い時間いるわけではありませんし…。」

「君は、本当に全てを忘れてしまったのかい?」

「え…あの…。」



"相変わらず鈍いな、お前は"

"書類…溜まってるんスけど"

"まぁまぁ気にするな、隊長命令だ"

"そういうのを職権乱用て言うんスよ"



夢で見た映像。
肩より少し長い髪の彼より背の高い隊長と。
今よりも少し背の低い日番谷。
それを思い出して、また心がユラユラ揺れた。

ワ ス レ テ ル ?

ス ベ テ ワ ス レ テ ル ?

違う

思い出さないだけ

は顔を上げて藍染の袖を少し引っ張った。
それに気づき彼も改めて彼女を見る。
彼女は真剣な顔を向けている。
静かに、言葉を紡いだ。



「昔の"私"の事、教えて下さい。」



























何を想い、

過去を知る。






[ 過去を知りたいと思う気持ち ]



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藍染さんの登場。
結局、主には戦闘させず。
初めての戦闘モードが隊長でしたが。
(尸魂界での)
お互い嫌だったでしょうね。
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