- vol.20 語られる昔の話 -

















それは、
昔、
むかし、
そんなお話。





「は…今、なんと…。」



羽織をまとう者達の集まり。
その中心には総隊長である山本と。
もう1人、まだ幼さの残る少女が立っている。
隊長の集まり、死神の中でも霊圧の高さは特別だ。
そんな彼らの中心で、彼女は平然としていた。



「じゃから、こやつがわしの孫じゃと。」

「ま、ま、孫ぉぉぉ!?」



彼らは盛大に声をあげた。
中には表情を崩さない者もいるようだが。
山本の隣りにいる少女に向けられる視線。
それは一層強いものになった。
それでも少女は変わらず、真っ直ぐに前を見ていた。
ペコリとお辞儀をする。



「初めまして、山本です。」

「いづれは隊長格に育て上げる気だ。」

「何卒よろしくお願い…出来るかジジィィ!



大人しいと思われた少女の態度が一変した。
その姿には誰もが唖然としたようだ。
だが、そんな周囲を気にする様子もなく。
は自分の祖父を睨み上げていた。
いくら自分の祖父といえど、彼は護廷十三隊をまとめる総隊長であり、一番隊の隊長である。



「こら!最後まで装えとあれ程言ったじゃろうが!」

「煩い、誰が隊長格だ隊長格!」

「う、煩いじゃと!この馬鹿孫っ!」

「煩いガミガミ爺!アタシは隊長格になる気はない!」

「何じゃとぉーお前のその能力を無駄遣いする気か!」



目の前で繰り広げられる祖父と孫の喧嘩。
いつもの威厳のある総隊長と同一人物には見えない。
そして、その彼と対等にものを言う少女、
確かに。
彼女のその霊圧の高さを誰もが感じ取れた。
山本元柳斎の孫であるだけで注目を浴びる。
が、彼女はそれだけではなかった。



「キョウカラ、ヨロシクオネガイシマス。」



あの紹介の日から1年経ったある日。
彼女は再び彼らの前に現れた。
彼女は真央霊術院を異例も異例1年で卒業した。
と、いうか強制的にさせられた。
素性については重要な部分は適当に隠していた。
それでも、彼女の才能には教師陣もお手上げ状態。
長い間学院に通う時間は無駄だ、と早々と護廷十三隊に送られてしまったのである(その為少々不機嫌)



「あ、あぁ…君は総隊長の…。」

「山本デス。」

「なんだか、ご機嫌斜めのようだね。」

「ソンナコトハゴザイマセン。」



の目の前にいる、羽織をまとった人物。
彼は彼女の言葉に苦笑気味で眼鏡を指で上げた。



「僕は五番隊隊長、藍染惣右介…よろしく。」

「とりあえず、五番隊第三席。」



異例の侵入隊員。
入隊早々、席官など聞いた事がない。
しかも三席とは副官補佐も兼ねる。
噂は噂を呼んだ。
いつの間にか総隊長の孫だという事は広まっていた。
それ故に彼女は人々から偏見の目で見られる。
周囲は彼女を諂<へつら>い、媚<こび>を売る。
そうかと思えばやっかみ、陰口を言う者もいた。



「何でも養子らしいぞ、あの女。」

「それでよくあんな態度が振舞えるものだな。」

「自分は養子でも貴族ってか、ご立派なもんだな。」




人間は自分よりも秀でた者を妬み易いものである。
彼女はそれらの恰好の餌食だった。
嫉妬、畏怖、敵意…。
黒くて禍々しい感情が彼女に注がれる。
だが。



「馬鹿馬鹿しい。」



普通の女ならば泣くか、怒るか。
そんな事もあるのかもしれないが、彼女は別だった。
呆れたような顔で感情をぶつけてくる輩共なんぞ、彼女の視界の隅にも入らなかったようだ。
その彼女の気丈さには上司である藍染も思わず笑った。



ちゃーん!」

「鬱陶<うっとう>しいスよ、市丸副隊長。」



五番隊副隊長、市丸ギン。
毎度毎度の事ながら飛びついてくるような彼を、は軽くあしらい、それだけではなく、自分の机にある書類を3分の1程手にとって彼に渡した。
仕事しろ、というような表情で。



「つれんなー相変わらず。」

「アタシを釣る気なら餌に工夫してクダサイ。」

「でもそんなちゃんが好きやー。」

「(無視)」



隊長:藍染惣右介
副隊長:市丸ギン
第三席:山本
五番隊は鬼道系主体の隊ではあるが。
戦闘能力の高さは十一番隊に負けず劣らずであった。




















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「その後、わずか数年で君は隊長に就任した。」

「…本当ですか?」



過去を思い出す。
藍染は静かに顔を俯けて笑った。



「日番谷くんが数百年に1人の天才とされるなら、君は千年に1人の天才と言われても過言ではない。」

「千年に…ひとり…。」



の呟きにも近い言葉に、彼は頷いた。
彼女の実力は一番初めの上司、彼がよく知っている。
藍染は話を続ける。



「そして隊長就任から数年後、日番谷くんが入隊した。」