- vol.21 覚悟と譲れないもの -

















十番隊、隊舎牢から出てきた人物を見て、日番谷は驚いたようだったが、すぐに眉を寄せた。
藍染に連れられるように出てきたのは
彼女を牢に入れてまだ1時間も経っていなかった。



「どういう事だ、藍染。」



彼を睨み上げる日番谷に周囲は慌てた。
日番谷の怒りは周囲の者にもよく分かった。
まだ死神としてそこまで長くないからか、はたまた、その性格故か、年齢故か、彼は霊圧に感情<それ>がおもむろに出てしまうのだ。
松本も雛森も彼が何かしないか内心気が気ではない。
その中でも、はバツの悪そうな表情をしていた。
藍染が牢から出ようと言ったとき、彼女は断った。
それでも、彼は彼女を牢から出したのだ。



「僕が見るところくんは孤独での暗所閉所を極度に怖がっているように思えたから、連れ出した。」

「…。」



確かに、はいつの頃からか、1人で暗所かつ閉所にいる事に恐怖を抱いていた。
1人でその場にいるとどうしても体が震えてしまう。
藍染が入ってきてから平気だと思っていた。
が、その微小な変化を彼は分かってしまったのだろう。



「君がくんを大切にお…「うるさいっ!」



日番谷は藍染の言葉を遮った。
だが、彼は表情を変えず、口を開いた。



「彼女は君を攻撃して旅禍と一緒に逃げる事も出来た。だが、彼女がそれをしなかったのは、君を傷つける事と君が総隊長から咎<とが>められる事を恐れたからだ。」



鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。
日番谷は思わず、頭を押さえた。
呼吸が、し難い。
その症状は、目の前の、心配そうな、酷く不安そうな少女を見ると更に悪化してしまう。
彼は壁を力の限りに叩いた。
もの凄い、それでいて何処か鈍い音と共に、無数の粉が舞い、そして彼の拳からは鮮血が腕へと伝った。



「と、冬獅郎ちゃ…「来るな!」



駆け寄ろうとするを全身で拒絶した。
彼女が哀しげに、眉を寄せたのが視界に入った。
それでも、彼女を近づかせてはいけない。
彼は強く、強くそう思った。
自分の心を浸していく黒い靄に彼女を捕われたら。
彼は、来るな、来るなと小さく何度か呟いた。



「頼むから…俺に近づくな…。」

「冬獅郎…ちゃん。」

「じゃないと、俺は…。」



醜イ気持チニ身ヲ委ネテシマウ




















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は慣れない隊舎の片隅に座っていた。
此処は十番隊ではない。
監視は日番谷から五番隊へと移った。
とはいっても、彼女の霊力は今、完全に抑えられている。
牢から出すときに藍染がした術により。
その為、彼女の監視は隊長格の藍染や雛森ではなく、五番隊の席官の1人が勤めていた。
霊力が完全に抑えられている為誰の霊圧も分からない。
瀞霊廷の何処かに存在するであろう黒崎の霊圧も、彼と戦っている死神の霊圧も、分からない。



「山本様、お茶を…。」

「すみません、いりません。」



もう既に"山本"という姓に拒否はなかった。
不思議と聞き慣れた二文字のようにも感じられた。
藍染の話を聞いたからか。
箒星の話を聞いたからか。
それでも、彼女は黒崎の約束を忘れてはいなかった。
だが。
頭の中から日番谷のあの表情が消える事もなかった。



「(これでいいんだ…やっと冬獅郎ちゃんの荷が下りる)」



そう思うものの。
彼女の気持ちは空のように晴れる事はなかった。
拒絶された事に心が悲鳴をあげた。
現世に戻りたいくせに、と彼女は自分に言い聞かせる。
日番谷、松本、雛森、藍染。
彼女が心を開ける人が増えていく。





その頃。
懺罪宮を目指す黒崎達は…。

真っ白な霧が辺りに立ち込める。
それが晴れたとき向こうに何かの影が見えた。
その影は、阿散井だった。
彼は黒崎の前に立ちはばかるようにそこに居た。
岩鷲と、彼の隣りにいるのは、護廷十三隊の中の救護班である四番隊の隊員、山田花太郎。
彼らは阿散井の登場に目を見開いた。



「言ったはずだぜ、俺はルキアの力を奪った奴を殺す。」

「殺す気で連れてった奴が何言ってやがる!」



この2人の対戦は逃れられないものだった。
の、かもしれない。
彼らは斬魄刀を抜き、振り上げた。
刀と刀がぶつかり合う音が辺りに響く。
双方、朽木ルキアを救いたい者。
やり方は違っても。



「ルキアだけじゃなくまで連れて行きやがって!」

「アイツは元々こっち側の死神だ。」

「…っ。」

「その反応は、お前も知っているんだろう!」



黒崎の斬魄刀が弾かれた。
彼は一時的に距離をとった。
頬に一筋の傷ができ、そこから一筋の血が流れる。



「元十番隊隊長、山本。」

「…。」

「俺が入隊する頃には既に隊長に就任していた、千年に1人と言われる程の天才…それがアイツだ。」



シュバッ

次の瞬間。
阿散井の頬に一筋の傷が出来ていた。
そう、まるで黒崎の傷と同じような傷が。
彼は口の端を上げて笑う。



「だからどうした。は戻りたいと俺に言ったし、一緒に現世に帰ると、待ってると約束もした。」

「…ッ。」

「ルキアを助けたら、次はアイツを助けに行く!」



黒崎の眼には自信と信念に満ちていた。
必ず、というような。
それを見て阿散井は一瞬眉を寄せた。
が、彼はすぐに口の端を上げた。



「てめぇ、2人をどうやって助けるつもりだ?ここで俺を倒せたとしてもまだ11人の副隊長がいる、その上に更に13人の隊長がいるんだぜ。」

「…。」

「それを全員倒す以外に助ける方法はねぇんだ、それをてめぇはやれるってのか?」



副隊長と隊長の強さは比ではない。
それが13人も前に立ちはばかる。
それを聞いても、黒崎は怯まなかった。
それどころか逆に戦意を上げたかのよう。



「やれるさ、関係ねぇよ倒してやる!
 そいつらが邪魔するってんなら全員だってなぁ!」




斬魄刀の押し合い。
双方暫し動かず。



「その程度で自惚れてるんじゃねぇだろうなぁ!
 吼えろ…蛇尾丸!



阿散井の斬魄刀が始解する。
伸びた斬魄刀が黒崎を刀事強く強く押した。
一度彼と戦っている黒崎だが。
彼の強さは現世のときとは違う。
隊長、副隊長は現世に赴くとき、霊力を抑えられる。
それを話すが、黒崎は決して怯まない。
全ては…守りたい者を守る為。
だが、阿散井も譲れなかった。



"ごめんなさい"



"待ってる"



譲れないのは、同じ。
彼らが斬魄刀を握る力は強くなった。
何度も何度も刀がぶつかり合う。
激しさは徐々に増していく。
その都度黒崎の傷は増え、血は舞い上がった。
だが、決して彼は諦めない。



「待たせたな恋次…今度こそ、てめぇを斬るぜ。」



最後の一撃。
勝利を掴んだのは黒崎だった。
しかし、それは相打ちにも近かった。
岩鷲と山田は人気を感じ、慌ててその場を去る。
意識を失っている黒崎は。
無意識に彼女の名前を呟いた。



























覚悟と、

譲れないもの。






[ 何が為動く ]



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日番谷側よりも黒崎の方が目立つかも。
阿散井は主の過去を覚えているのでしょうか。
あまり関わりはなさそうな気がしますが。
考えてる本人(私)↑でいいのか。
覚悟は、一応黒崎と日番谷の2人に。
離れるのも覚悟なのです、多分。
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