
雛森は手紙に書かれていた言葉を紡ぎ続ける。 確かに"朽木ルキア"の処刑には考えれば考える程納得できない疑問点が数え切れない程浮上してくる。 日番谷もそれは思っていた。 処刑の真の目的は"朽木ルキア"を殺すことではなく、処刑時に膨れ上がる双極の莫大な力を利用し尸魂界そのものの破滅、彼の手紙にはこう記されていた。 そして。 「その忌まわしき者の名は…日番谷冬獅郎。」 彼女の口から紡がれた言葉に、彼は呆然とした。 何故自分がそのような事を企まなければならない。 そして何故藍染が自分を疑わなければならない。 可笑しい、この手紙は可笑しいのだ。 それでも雛森は彼に向けた刀を引こうとはしない。 「そう…書いてあったのか…?藍染の手紙に…。」 「…そうよ…そしてこう続くの。今夜僕は東大聖壁の前に彼を呼び出しておいた、彼の企みを何としても阻まなければならない、彼が退かぬなら刃も交える覚悟だ。」 信じられなかった。 日番谷はその言葉に微動だに動けなかった。 何故、何故、何故。 その二文字が頭を埋めていく。 「だけどもし僕が死んだなら、どうか僕の遺志を継ぎ彼を討ってはくれないか、それが僕の最後の願いだ…五番隊隊長としてではなく1人の男として君に…願…う。」 彼女の瞳から溢れた涙が頬を伝って、次々と透明な雫として地面へと落ちていく。 そしてその右手は斬魄刀を強く強く握る。 その手が血で滲んでいる事など気にはならない。 雛森は刀を振り上げた。 狂気の声と共に。 「あああああああ!」 振り下ろされた刀は地を強く打ち、大きな音と共に土煙がもうもうと舞い上がった。 雛森の攻撃を避ける事は彼にとって難しい事ではない。 ましてや平常心を失った彼女だ。 攻撃は大振りに近い。 だが、日番谷は冷や汗を頬に流した。 どうすればいい、どうすれば分かってもらえる。 そう考えながらも彼は雛森の攻撃を避ける。 「ばか野郎雛森っ!よく考えろ!」 自分が死んだから代わりに戦え。 藍染はそんな事を言う人物だったのか。 彼はそう叫ぶように言った。 「俺の知ってる藍染はな!勝ち目のねぇ戦いに1人で出向くような馬鹿でも、その尻拭いを部下にさせるような腰抜けでもなかったぜ!」 「だって書いてあったもの!見間違える筈ない!あれは藍染隊長の字だったもの!」 彼女の攻撃は空を斬る。 「藍染隊長がそう言ってるんだもん!あたし… もう…どうしたらいいか分かんないよシロちゃん。」 雛森は混乱のしすぎで判断が出来なくなっていた。 大切な人の死、彼からの手紙には幼馴染の名前。 藍染があんな手紙を書く訳はない。 誰かが日番谷と雛森を対峙させるように仕向けた。 それは彼にはすぐに分かった。 日番谷は雛森の攻撃を避け高く飛び上がった。 下にいる市丸が視界に入った。 彼は、日番谷を見上げ、口の端を上げた。 「これもてめぇの仕業か!市丸!」 彼は自分の斬魄刀に手を触れる。 しかし、振る事は出来なかった。 目の前に現れた雛森は未だに自分を仇として狙っている。 空中じゃ刀をかわす事は出来ない。 日番谷は唇を噛み、已む無く彼女に手を挙げた。 彼は着地し、市丸を睨んだ。 「言ったはずだぜ市丸。 雛森に血ィ流させたらてめぇを殺す!」 |