
其れは、 物心つくときには見えていた。 あまりにもハッキリと見えるものだから。 他の人にも其れは見えるのだと思っていた。 だから、其れが他の人には見えないと分かったとき。 周りに人は寄らなくなっていた。 自分が人とは比べ物にならない霊感を持っている。 そう改めて気づいたのは、5年前程だった。 霊感は年齢を重ねる事に強くなった。 いつの間にか。 霊だけでなく、異形の化け物まで見えるようになった。 それでも。 不思議と私は怖くなかった。 5年前。 それまでで一番大きな化け物を見た。 其れは酷く苦しそうだった。 しかし、其れは大きく、強すぎた。 私は、其れに帰ってもらえるかどうか、正直戸惑った。 「霜天に坐せ、氷輪丸!」 そこに現れたのは、1人の男の子だった。 深い碧色の瞳に銀髪。 身体の何処かで何か音がした気がした。 それは、瞳の色が同じような色だからだろうか。 男の子に助けてもらった私は大きな怪我もなかった。 男の子も大した怪我じゃなかった。 彼は、自分を"死神"だと言った。 "巨大虚!コイツの霊力を喰らいに" 私の霊感、霊力は異常なんだ。 まさかあんなに大きな化け物に襲われるなんて。 今度は死神じゃない人まで巻き込んでしまうかも。 そう思って私は怯えた、だから。 どうやったのかなんて覚えていない。 でも、私は自分の力を最小限に抑え込んだ。 彼の言う"虚"は…。 もう、私の前に姿を現さなくなった。 そして、高校1年生のある日。 霊力は完全に失われた、 はずだった。 ----- 「な、にこれ…。」 異様な空気。 息苦しい程に重たい。 聞き苦しい程の鳴声。 それは、には悲鳴に聞こえた。 空が割れる。 ピシリピシリと音をたてて。 「空が…割れていく?」 それは突然の出来事だった。 買いたい物があった為、1人で帰宅していた。 その途中だった。 彼女は空が割れていくのを見た。 何かがその中から出てくる。 しかし、霊力がなくなった彼女には見えない。 "虚"の姿だけ、見えない。 「ぅ。」 いきなり、身体が重たくなった。 骨が軋むかのようにピシピシと痛めつける。 持っていた鞄が落ちたが、最早それを気に出来る程の余裕は彼女にはなかった。 意識が朦朧<もうろう>としていく。 それに気がついた彼女は、自分の口の中を噛んだ。 唇の横から血が一筋流れた。 それでも気にならなかったのは。 なんとなく感じた、ある人物の霊力。 落ちた鞄の存在なぞもう忘れ、彼女は走った。 その速度は…あまりにも速過ぎる。 その頃。 元凶の地では、黒崎と石田が対峙していた。 空を割って現れる虚。 石田の撒き餌による効果だった。 死神を嫌う滅却師と、他人から力を得た死神。 対立するには十分な肩書きなのかもしれない。 「虚は霊力の高い人間を好んで襲う習性がある。」 石田の言葉に黒崎は走った。 彼の家族は霊力が普通の人間より高い。 走っている最中、頭の中にもう1人の存在が浮かんだ。 「(大丈夫だ、アイツの霊力はもうなくなってる!)」 不幸中の幸いとはこの事かもしれない。 黒崎とためをはれるくらいの霊力の持ち主。 は"霊感がなくなった"と彼に告げている。 頭の何処かで安堵感が浸していく。 しかし、その安堵感をジワリジワリと何かが侵す。 彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。 それを黒く埋めていくもの。 それを振り払うかのように彼は速度をあげた。 「くそっ!」 |