
"あの人"はいつも堂々としていた。 私と同じ養子として貴族の家に入ったというのに。 あの人はいつも強かった。 細い体で刀を振るい誰かを守っていた。 あの人を見ると胸がチクリと痛んだ。 あの人を見ると妬ましい気持ちに侵された。 「1人で昼食か?」 入隊した頃の私は誰1人として傍におかなかった。 いや、誰も傍に来てはくれなかった。 養子でも貴族は貴族だ。 学院の卒業さえも免除された生意気な新人。 きっと他の者にはそう思われていただろう。 そんな私が昼食を誰かと食べれるはずがない。 「何オロオロしてるんだ?」 彼女は半ば呆れるような口調で言ってきた。 そして笑った。 その顔があまりにも綺麗で可愛らしかった。 同性である私も思わず見惚れてしまう程。 眩しかった。 そして自分が惨めに思えた。 同じ境遇であるのに、この違いは何なのだ。 「朽木ルキアだろう?」 「…はい。」 「お前の事は聞いた事がある、よろしくな。」 同じ境遇だと聞いてわざわざやって来たようだ。 向けられた微笑みはやはり眩しかった。 「言いたい奴には好きに言わせておけばいい。 お前はお前だ、堂々としていればいいのさ。」 彼女は風のような人だ。 と、そう思った。 青い空を自由に舞い白い雲を流す。 誰かが迷えばそっと背中を押す。 私とは全く違う人。 遠ざかっていく彼女の背中を複雑な気持ちで見た。 あの人を見ると胸がチクリと痛んだ。 あの人を見ると妬ましい気持ちに侵された。 否。 本当は…。 羨ましかっただけ。 なりたかった、だけ。 ----- ド ッ 異形化した藍染の腕がルキアの胸を貫く。 彼女は呻き声ひとつあげる事も出来ない。 彼は穏やかな表情でその腕を引き抜いていった。 "あぁ私は死ぬのか" そうルキアが思うと同時に、何かの映像が過ぎった。 「驚いたな、こんな小さなものなのか…崩玉。」 彼の手には小さな球状のものがあった。 死神と虚の境界線を取り払える事の出来る物質。 それが崩玉である。 予想とは違ったのか、藍染はそれを眺め、懐に入れた。 そして視線をルキアへと戻す。 不思議な事に彼女の胸の穴は少しずつ閉じていく。 「魂魄自体は無傷か、素晴らしい技術力だ…だが。」 本当に感心しているような口振りだが、彼はそれをさして気にしている様子でもなく、ルキアの首につけられている輪を掴み彼女をゆっくりと持ち上げた。 微笑みが浮かべられる。 歪んでいるのか、どうか、もう分からない。 嫌な予感に黒崎は思わず静止してしまった。 「殺せ、ギン。」 藍染の言葉に市丸は斬魄刀を抜きながら数歩前に出た。 そして的を得る。 「射殺せ、神鎗。」 黒崎も。 ルキアも。 もう声すら出せなかった。 市丸の声と同時に刃が彼女目掛けて伸びる。 「ルキアちゃん!」 それは一瞬の出来事だった。 藍染の手からルキアをしがみつくようにして奪い、彼女は必死でルキアを抱きしめる事で守ろうとした。 突然の出来事に驚くと同時に、何故か彼女の脳裏には過去の記憶が思い出された。 白い羽織をまとい真っ直ぐに前を見据える人。 "貴女はいつも誰かを助けていた" 止んでいたはずの風を感じた。 無意識にルキアの瞳から涙が零れる。 「()」 黒崎は目を見開いた。 だが、声も手も出ない。 このままでは2人共斬魄刀に貫かれてしまう。 が…。 |