- vol.6 抗う・争う・諍う -

















「…。」

「隊長。」

「…。」

「日番谷隊長!」

「わっ!」



バサバサバサバサッ
大きな音をたてて机の上の書類が落ちていった。
日番谷は慌てて落ちた書類を拾う。
その光景を、松本は呆れたような顔で見ている。



「どうしたんですか隊長、この間から。」



すっと屈むと、日番谷を手伝う。
幸い、書類はある程度留められていたので、被害は最小限に留まった様である。
拾い終わると、日番谷は顔を上げて溜息を漏らした。



「隊長らしくないですよ?」

「…だろーな。」

「もしかして、恋煩いですか?」

「ばっ…!」



思いも寄らない松本の発言に日番谷は咽<むせ>る。
そんな彼を苦笑しながら背をたたく松本。



「俺が恋煩いなんぞするわけねーだろぅが!」

「分からないですよー、そう見えていい年齢ですから。」

「遠まわしにチビって言ってんのか、あぁ?」

「やだなぁ、そこまで言ってないじゃないですか。」

「…お前今日残業。」

「ひ、酷いですよ隊長!職権乱用!!」



後ろで横暴だの非道だの言っている松本を気にする様子もなく、日番谷は自分の場所に戻った。
目の前にはやらなければいけない書類の山。
それでも、頭は違う事を考えてしまう。



「この少女も連れて来て欲しい。」



映像庁からの提供されたもの。
そこには朽木と黒崎、石田、そして。
一瞬だけであるがが映っていた。
総隊長である山本は自分の髭に触れた。
あのときの表情が日番谷の頭から離れない。
いっその事、任務を与えられたのが自分だったら…。
この靄<もや>を晴らすことが出来るだろうか。



「(…何、考えてるんだ、俺)」




















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「背面適合113、神経結合率88.5!」



満月の闇夜。
空に浮かぶ2人。
赤髪の方はにぃっと口の端を上げた。
彼らの視線にあるものは…。



「朽木ルキア…見ィーつーけた!」



朽木は眉を寄せた。
彼女は逃げていた。
黒崎の家から黙って出た。
勿論、にも話していない。
行く当てなどない。
それでも、このまま彼らの傍にはいられなかった。
脳裏に、黒崎との顔が浮かんだ。



「私は…少しこちらの世界に長く関わりすぎたのか。」

「分かってんじゃねぇか!」



頭上から聞こえてきた声。
彼女はハッとして見上げた。
次の瞬間、刀が振り下ろされる。
それにより、傷を負うことはなかったが。
ビリビリと空気が震える。
現れたのは、死神。



「尸魂界からの追手が背後に迫ってるのに、考え事に夢中で声かけられるまで気付かねぇってか?」



朽木は死神の1人を阿散井恋次と呼んだ。
顔見知りのようだが、空気は重い。



「吐けよ、てめーの能力を奪った人間は何処にいる?」

「な、何を言っておるのだ…?義骸に入っておるからといって力を奪われたとは限らぬし…ましてその力を奪った相手が人間だなどと…「人間だよ!」



阿散井は遮るように言った。
その表情からは憤りを感じた。
彼は、確かに怒っていた。



「でなきゃそんな人間みてーな顔をしてる筈がねぇ!」

「…!」

「俺と同じ流魂街の出でありながら大貴族の朽木家に拾われ、死神としての英才教育を施された朽木ルキアともあろう者がぁ!そんな人間みてーな顔していい筈がねぇんだよ…なぁ、朽木隊長!



朽木は振り向いた。
そこには、義理ではあるが、兄が立っていた。
朽木は呟くように言った、白哉兄様、と。
困惑と混乱の表情が見える。
そんな彼女を見て、阿散井は刀を振り上げた。
そんなとき。



「なっ!?」



彼女の体を押した人物。
朽木は驚嘆の声をあげた。
紙一重で刀から逃れた。
自分の目の前には、昼間会っていた人物がいた。
だ。



「あー、怖かった。」



は苦笑いをしながら、彼らを見た。
黒崎と自分と同じ死覇装と刀を持っている事から、彼らが死神である事は確実だ。
それならば、何故同じ死神である朽木を狙う。
そんな疑問が浮かんだものの、今はとやかく考えている場合でもなさそうだ。



!」

「大丈夫ですか、ルキアちゃん。」

「ば、馬鹿者ッさっさと逃げろ!」



状況は分からない。
それでも、今にも殺されそうな朽木を放っておけない。
は首を横に振った。
能力を奪った人間は彼女ではない。
しかし、邪魔立てすればどうなるか。
それに加え、彼女は死神化する事が出来る。



「でも。」

「でもじゃない!」

「一護ちゃんと同じ言い方しなくても…。」



2人の会話に入る事は出来ない。
それ故に苛々は募る、阿散井。
とうとう堪忍袋の尾は切れ、刀を振り上げた。
しかし、その刀は2人に振り下ろされる事はなかった。
朽木白哉の声により。



「総隊長の言っていた少女、この娘ではないのか。」



そう言われ、改めて阿散井はを見た。
黒紅色の長い髪に深い碧色の瞳。
山本に下された命のひとつ。
少女を尸魂界に連れて来い、との事。



「そういえばそスね。」

「な、何の事だ恋次!」



朽木の必死の表情とは逆に、阿散井は笑った。
何の事だか、も分からない。



「お前とこの女の連行、これが俺らに下された命令だ。」

「ちょ、待て!こやつは私の能力を奪った奴では!」

「それとは関係なしに、総隊長からの命令なんでな。」



阿散井はの首根っこを掴んだ。
突然の出来事にわけもわからず、話も分からず。
ただ、捕らえられたと気付いたは抵抗する。
すぅっと息を吸い込んだ。



「これは…歌…?」



歌というよりも音の繋がりに近い。
歌詞というものがない、不思議な歌。
彼女の体に触れていた阿散井の手に痺れが走る。



「…っ。」

「やっぱり虚じゃないとあまり効かないですね。」



彼が手を離した隙に彼女は手から逃れた。
死神化しようとも、その方法が分からない。
困った、と彼女は頬をかいた。
それでも、諦めるわけにはいかなかった。



「よく分からないけど。
 ルキアちゃんを連れてかれる気も、
 私が連れて行かれる気もありませんので。」



その辺よろしく。
と、彼女はペコリとお辞儀をした。



























全ては、

動き始めていた、

ただ、

気付かなかっただけ。






[ 抗<あらが>う ]



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無意味に出すなって…。
石田くんが出ていないので、次回出ます。
じゃないと、尸魂界に来ないだろうから。
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