部活が早めに終わったので、俺は必要な物を買うために家に帰る前に買い物に行くことにした。買い物は一人で行く方がいい。余計な奴を連れて行くと面倒だ。そう思いながらも俺は行きつけのスポーツ店で物色をし、早々と買い物を済ませたあと、今日発売される本のことを思い出して本屋へと向かうことにした。12月に入ったこともあり、商店街はクリスマス一色だ(無駄にキラッキラした装飾がウゼェと思ってしまうのは仕方のない話だ)俺はイルミネーションを見ていて、少しの間前方不注意だったようだ。 「わっ。」 「きゃ。」 ドン、という音がして、同時にちょっとした衝撃を受けた。とりあえず弾き返されることはなかったけれど、誰かとぶつかったことは確かだ。俺は多分、頭突きをかまされた胸部を空いている左手でさする。そして前を見た。どうやら俺とぶつかったのは女だったようだ(そっちは尻もちをついてる、まずかったな)俺は面倒くせぇと思いながらも、マナーだと思って手を差し出した。 「タカヤ!」 はぁ?目の前の女は俺の手をとろうとはせずに、いきなり俺の名前を呼んだ。いったい何だって言うんだ。眉を寄せ、俺はそこで初めてその女を見る。わ。俺は一瞬たじろいだ。目の前の女は満面の笑みを浮かべて俺を見ている(ガラにもなく、か、わいい、とか…おいおい、俺)とりあえずは、スカートはいてるんだから早く立ち上がってほしい(目のやり場に困る!)俺は自分の名前が呼ばれたことの疑問よりも、立ち上がってもらうことを優先し、また差し出している手を強調するかのようにまた伸ばす。俺の行為に気づいて手をとろうとしていたとき…。 「!何やってんだよ!」 聞きたくはないけど、聞いたことのある声が聞こえてきた。駆け寄ってきたらしい人物が俺の存在に気づかないはずはなく、ゆっくりと顔を上げてしまった俺を見て、そいつは、あー!と大きな声をあげた(迷惑だ!) 「タカヤじゃねーか!」 「(なんでよりによって榛名)」 俺は心の中で舌打ちをする。ってか、榛名の奴、この子のことをって呼ばなかったか?名前の呼び捨て…もしかして、榛名の彼女、とか…?う、そだろ! 「つーか、立て!」 「うぎゃあ、痛い、力、強いよモトくん!」 モトくん、モトくん、モトくん(脳内で連呼)ようやく立ち上がってくれたことにどこかホッとしたけれど、新たな気持ちが脳内に染み渡る。どう見ても榛名よりこの子は年下っぽいけど、もっと言うならば俺よりも下っぽいけど。夕方、、街中に出て男女二人で歩いている、というならば、彼氏彼女であること以外に俺は考えられない(ボキャブラリーが足りないのかもしれないが) 「だから勝手に歩き回るなって言ったろうが!」 「だって、モトくん急にいなくなるし。」 「お前がいなくなってんだボケェ!」 あぁ、マジうぜー。何が楽しくて夫婦漫才なんて見なくちゃいけねーんだよ。虚しさを感じつつ、俺は何も言わずにその場から離れてやろうとしたけれど、ぐぃっと服が引っ張られてしまった。振り向くと、榛名と言い合いみたいなのをしていた子、確か、、と目が合った。 「ぶつかってごめんなさい、タカヤ…さん。」 「いーって、さん付けなんかなくっても。」 何でてめー(榛名)にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ、とか思いつつもそれを無視し、俺はに、俺も悪かった、って謝っておいた。榛名の彼女にしては良心的な子だ(いや、榛名の彼女だからこそ良心的なのか?) 「そして、シニアでは兄がお世話になりました!」 「…え。」 今、なんつった?兄?兄、兄つった? 「世話になんかなってねーよ!」 「なってたよ、モトくんあの頃最悪だったじゃん。」 「最悪言うな馬鹿!」 「じゃあ最低?」 「てっめー。」 「うぎゃー、痛い、痛いぃ!」 何やらまた目の前で漫才をよそに、俺は妙にホッとしていた。榛名の手を懸命にとめながらも、(勝手に呼び捨て)は俺の方を向いてニコリと笑った。それに心臓がまるで跳ねたような衝撃をくらった。すぐに自覚はできた、けど、よりによって…榛名の妹、榛名の(ネックはそこだ)榛名から解放されたは改めて俺を見て、また笑いかけてくれた。榛名は意地の悪い笑みしか、ほとんど見せねーけど、本当に兄妹かってくらいの笑顔は優しいもんだ。 「榛名です、中学三年生。」 「阿部隆也、高校一年生。」 「何やってんだー、お前ら。」 榛名の言葉はとりあえず無視して。は記念に、とか言いながら携帯電話を開いた。予想外にも意外にあっさりと電話番号とメールアドレスを手に入れることができた俺は、内心、ガッツポーズをしたいくらい嬉しかった。榛名はうるさかったけど。 「そうそう、聞いて下さいよタカヤさん!モトくんってば、誕生日祝いにご飯奢ってくれるって言ったのはいいんですけど、場所がカストなんですよ!いつもカスト!」 「ー、てめーはー!」 「ぎゃあ!でも、本当のことじゃん!」 「…今日が、誕生日なんだ?」 心の中で言うつもりが外に出ていたらしい。榛名の攻撃を受けながらも、はまた笑顔を浮かべて、はい、と頷いた。偶然だけど、俺と近い。女々しくも少し嬉しいような気持ちになってしまった。 「おめでと。」 「ありがとうございます、タカヤさんはいつですか?」 「え。」 |