
「お前はいい投手だよ。」 三星との試合直前。怯えて走って行ってしまった三橋くんを追いかけて阿部くんも走って行ってしまった。私が行っても仕方がないことだけど、とりあえず、私も追いかけてみる。足が遅いので追いつくのに時間がかかったけど。部室棟の壁の傍に二人はしゃがみこんでいた(あ、阿部くん手を握ってる、何でだろう)そんなとき、阿部くんの声が聞こえた。迷いのない、真っ直ぐな声だった。 「投手としてじゃなくても俺はお前が好きだよ!だって、お前、頑張ってんだもん!」 うん、三橋くんが女の子じゃなくて良かった、と思っておこう…っていうのは冗談で、阿部くんがどういうことを思ってそう言ったのかはちゃんと分かってるから。私も三橋くんが頑張ってるの分かってるもん。私は木の陰に隠れていたけれど、音をたてないように先にグラウンドに戻ることにした。 「おかえりー。」 「ただいま。」 それから数分後、阿部くんたちは戻ってきた。千代に阿部くんはメンバー表を見せてもらっている。どうやら彼には考えなきゃいけないことがあるらしい。それを見終わったの確認して、私は阿部くんの肩を、ポン、とたたいた。 「阿部くんもいい捕手だよ。」 「え。」 「だって阿部くん、頑張ってるもん。」 私はニッコリと笑って言ってみせた。だいたいこういうことを言うと阿部くんは照れたような顔をする。真剣な顔も好きだけど、私は照れた顔も好き。そう思ってると、今度は逆に肩をたたかれた。阿部くんは今日は照れているようすもなく、ニッて笑っていた。そして…。 「、ひとつ忘れてんじゃないか?」 え、と思ったけれど。阿部くんと三橋くんの会話を思い出して、あぁって納得した。今日の阿部くんは気合いがはいってるなぁ。ぜんぜん照れないだけじゃなくて、強気に攻められてしまった。私は可笑しくなって笑ってしまったけれど、笑ったあとにちゃんと言った。 「捕手としてじゃなくても私は阿部くん好きだよ。」 満足そうに笑う阿部くんの頭を、田島くんがからかうようにたたいた。それに何か言いながら阿部くんは彼を追いかけていった。いかんいかん、今日は私が照れてしまったよぅ。 頑張ってね、阿部くん、みんな! |