「お、おはよぉ!」 「お、おぅ!」 12月11日、晴天。お互い部活の朝練を終えて、偶然にも出会った場所は下足箱だった。なんだかぎこちなさを感じさせる雰囲気をかもしだす二人に、彼らが幼馴染だということを知る野球部員たちは不思議そうな顔で顔を見合わせる。彼ら、二人以外は。にやぁと笑っているのは、と同じクラスである田島と、阿部と同じクラスである水谷だった。そんな二人に気づいて、は田島を、阿部は水谷は素早くたたいた(水谷の方は思い切りやられたらしく痛みに悶えている) 「(ど、どうしよう、お誕生日おめでとう言って、それからそれから、あ、いや、その前に普通にしなくちゃ)」 「(や、やばいよな普通じゃないし俺、なんかかまえてる、っていうか期待してる…って彼氏でもないくせに)」 両者煩悶しているが、その気持ちは相手に伝わるわけがない。二人がなにやら煩悶している間に、チャイムが鳴ってしまい、それに慌てて二人と野球部員との部活仲間は走って教室へと向かうのだった。結果的には、は阿部に誕生日のお祝いさえも言えなかった、ということだ、今のところ。 「(おめでとうって言いに行こうかな、でも、わざわざ言いに行くのってなんか怪しまれないかな、うーん)」 「(また教科書忘れたことにして9組に行こうか、でも、俺演技下手だろうし、バレたら怪しまれるだろうな)」 授業中も二人は煩悶(クラス違うのに)なんだかんだ考えていた二人だが、今日に限ってどちらかが教室移動だったり体育があったり、休憩時間には先生に用事を頼まれたり、と、忙しい一日を送るはめになってしまったらしい。なんだか煮え切らないような、それでいて慌しい学校時間を送ってしまった二人。あっという間に部活動の時間になってしまったのだから、さらに二人は会うことができない。 「(隆也、今頃真剣にキャッチャーやってるんだろうなぁ、今日も遅いのかな、こんなことならもっと早く…)」 「ー、ボールいったよー!」 「(、今頃真剣に部活してんのかな、今日も遅くなんのかな、野球は好きなんだけど…けっきょく会えねーし)」 「阿部ー、次お前の番だぞー!」 ちょっと考えすぎてしまっている二人に、好機が訪れた。はロードワークに出ることになり、阿部はボールがそれてグラウンドの端まで転がってしまったボールを追いかけたのだ。偶然、野球部のグラウンドの横をが通っているときだった。 「「あっ。」」 二人は久しぶり、とは言えるような時間はあいていないのだが、会うことができたのだ。思わず立ち止まってしまったと阿部。二人はまるで引き離されていた恋人のように視線を合わせる。ぎこちない雰囲気は未だあったものの、は慌てて声を出した。 「お、お誕生日おめでとう、隆也!」 「さ、さんきゅ。」 「えっと、あの、誕生日プレゼントがあってね。」 「わ、るいな、プレゼントなんて。」 二人は幼馴染…去年もこういう会話はあったものの、それでもこんな雰囲気ではなかった。まるで初々しい恋人のようだ(それでも二人は相手の気持ちを知ってはいない)阿部は拾ったボールを無意識ではあるが、強く握ったり弱く握ったりと、なんだか落ち着かない様子であったものの、ゴクリと生唾を飲み込むと、口を開いた。 「今日!」 「え。」 「遅くなるだろうけど、ん家行ってもいーか。」 「あ、う、うん!」 「…じゃ、じゃあメールすっから!」 「うん、分かった!」 阿部が嬉しそうに笑ったので、少し見惚れてしまったが、すぐにも嬉しそうに笑った。両者とも、ひそかに心の中で喜びの声をあげると、手を振ってお互いのすべきことに気持ちを戻す。それでも、頭の片隅にはやっぱり…。 「(どうしようかなぁ、やっぱり隆也に告白するべきかなぁ、なんか気持ちに気づいたら言いたい気もするなぁ)」 「ちょっと、にやにやしてどうしたの?」 「(やっぱりに好きだって、言うべきかな、なんだか悪いことになりそうな気はしないし、勘…だけど)」 「ちょっと誰か、阿部が笑ってて怖ぇんだけど…。」 今日の夕方、二人が会って、お互いの気持ちを伝えられたのか、それは今は分からないことであるけれど、二人の未来が明るい色を帯びているだろうということは、一目瞭然であるだろう(いきなり機嫌よくなった彼らに部活仲間は驚き戸惑ってはいるものの、特に野球部の方) |