突然のできごと、といえるものは特別なものをいうことが多い。重大な事件とか事故とか、逆にとっても素敵なこととか。へいへいぼんぼんのあたしの人生には、そんなもの滅多としてないんだと思う。ノット平凡なことがあるとしたら、野球部で他校からも注目されるピッチャーであり、性格はともかく顔と運動神経は花丸の印鑑押しちゃうよっていう感じの人が、何の奇跡なんだかあたしに告白をしてくれちゃって、お付き合いをしていることだと思う。でも、榛名は俺様だけど、ちゃんと優しいところだってあるんだよ。そんな榛名からの突然のお電話が、夜中といえるべき時間の11時にかかってきたりする。もう少しで完璧眠りの世界についていたであろうあたしは目を擦りながらも携帯電話を手にとって、通話ボタンを押した。もしもし、とまだ寝ぼけ混じりの声を出すと、一瞬の間の後に榛名は言った。 「のこと考えすぎて眠れねーんだけど、どしたらい?」 その一言であたしの眠気はお山の向こうに吹き飛んでいってしまったらしい。あたしは過剰なまでの瞬きをして、辛うじて携帯を落とさないでいた。黙ってるあたしに痺れをきらしたのか、榛名がまた電話の向こうで何かを言う。それさえも上手く聞き取れなかったので、曖昧な言葉を返していたら、聞け!と怒鳴り声に近い声を浴びせられてしまった(聞いてる、聞いてるつもりなんだよ、一生懸命なんだよ、でも)心臓がバクバク言ってる、顔だって熱を感じる。そんなこと言われたら、あたしだって榛名のことで頭も胸もいっぱいになって眠れないじゃないか。あたしは、聞いてるよ、と細々とした声を出す。 「会いに行ってもいいか、家抜け出せるか?」 「いい、よ、抜けるよ、大丈夫だよ。」 あたしも榛名もまだ高校生で、世間から見ればまだまだ子どもに過ぎない。そんなあたしたちのこの想いは、もしかしたら、世間からすれば"恋愛ごっこ"に見えるかもしれない。それでも、あたしは榛名が好きだ。夜に家を抜け出すなんて危険行為もただの"スリル"となってしまう。あたしはなぜか携帯を耳元にくっつけたまま、榛名の声を聞きながら、涙が出そうになるのを必死で我慢する。これは、充分な"特別なできごと"になるんだろうか。たかだか、夜中の呼び出しにしか過ぎない気もする。明日になれば学校でまた会えるのに。あたしたちはバカだと思う。それでも、あたしは榛名と今、ものすごく会いたいんだ。 「会いたいよ、元希…。」 「…待ってろ、すぐに行くからな。」 ガチャンと電話が切れても、あたしは暫くその携帯を手放せずにいた。十分後に着くであろう榛名のことを考えて、魔法瓶の水筒に温かいお茶をいれた。寝てる親を起こさないように静かに玄関のドアを開ける。空にはキレイな星がでていて、普段はこんなことで感動したりしないのに、なぜだか涙がツーと頬を伝っていった(愛しくて、涙が出ちゃうことって本当にあるんだねぇ) |