あいつから野球をとったら何が残るだろうか。毎日毎日飽きずに野球をしている、榛名元希(部活が終わっても一人遅くまで自主練をしているというからもう、馬鹿を過ぎて野球大馬鹿)そんな彼を飽きずに毎日教室から眺めているのがあたし、である。だけど、別に彼を恋愛対象しているわけではなく、そこまで野球に熱中できる彼に興味がわいた…つまり、榛名元希という人物はあたしの興味対象なわけだったりする。あたしは今日も飽きずに一人しかいない教室で、一番後ろの窓際(丁度今この席なんだし)で頬杖をつきながら榛名を見ている。



「あ、打った。」



何の練習をしているのかは分からない。だってあたし、野球ってよく分からないもん。でも、榛名が投手じゃなくて打者の練習をしているのは分かる。バットにボールが当たって、いい音がして、それでボールが高く飛んでいった。あ、満面の笑顔(あたしの視力は2.0)教室とはどこか違うような表情。何だか、眩しいなぁ…。それは決して太陽のせいなんかじゃなくて。あたしは目を細めた。心の中がモヤモヤするのは、きっと、榛名のせいだ。羨ましくて、そして、何だか妬ましい。あたしにも…。



「…帰ろ。」



いつもよりも早く帰宅することにした。もしかしたら、明日はもうこうやって野球部、いや、榛名を見ることはないかもしれない。いや、明日から。積もり積もっていくモヤモヤ。興味の対象としていながらも、どこか見たくない、と胸の奥で彼を拒否する気持ちがある。あぁ、あたしって何て心が狭い!あたしは靴をはきかえ、歩き始める。明日から一緒に帰ろう、と友達にはメールを送ってみた。携帯を閉じると、誰かが駆け寄ってくるような足音がした。自分じゃないだろう、そう思いながらあたしはそっちを向かずに校門の方に歩く。



!」



発されたのは自分の名前だった。それに、呼んだ人は…。あたしはゆっくりと振り向く。そこには、息を切らせて膝を抱えている、眩しい表情で野球をしているはずの、榛名がいた。あまりにもゼーハー言ってるもんだから、ちょっと心配になって声をかけた(だって、榛名がこんなにも息を切らせてるなんて!)大丈夫、って聞くと榛名はニッと笑って、大丈夫、と答えた。それにホッとしたあたしは、じゃあね、と手を振ってまた前を向いた。けど、歩くことはできなかった。



「榛名?」

「お前…何で今日はこんなに早く帰るんだよ。」



それはひとつのものに一心に打ち込める君がとっても羨ましくて、それでいて妬ましいからです、なんて言えるはずもない。それよりも、なんで知っているんですか?あたしがいつもよりも早く帰るってこと。言葉には出さなかったけど、顔には出ていたのだろう、彼はあたしの手を持ったまま口を開いた。



「いつもはもっと野球部見てただろ、何で今日は早いんだ?」

「…榛名はいいなぁ。」



何で知ってるの、とは聞かないでいた。こっちから野球部が見えるってことは、向こう側からこっちが見えてるということだから。あたしの言葉に首を傾げた榛名(質問に答えてもいないし)を見てから、あたしは一呼吸をおいてまた口を開いた。



「榛名が野球にあんなにも打ち込めるのが羨ましいなぁ。」



恋だの愛だのでキャーキャー言ってる友達も。榛名みたいに部活に打ち込んでいる人も、勉強で一番になるんだっていうクラスの秀才くんも、みぃんな羨ましいなぁ。あたしにも、こんなにも打ち込めるものがほしい。そりゃ、それって相当大変なものだよ。才能がなければそれこそ、血反吐をはくような努力をしなくちゃいけないだろうし。それでも、あたしみたいにピアノも習字も何も長続きしないのも嫌だ。あたしが溜息をつくと、榛名は空いている手で、そっとあたしの頭を撫でた。驚きつつも、その手が大きくて、どこか温かい気がして、少し気持ちよくて、なんだか涙が出そうになった。



「お前、野球部のマネージャーになれよ。」

「え?」

「それで、俺に夢中になれよ!」



何の根拠があって、そういう流れになったのかは分からないけれど、目の前にいる榛名が野球をしているときのような笑顔を浮かべていたので、そんなことどうでもよくなってしまった。不意に捕まえられている手が暑いような気がして(あたしも榛名も)視線をそこからちょっと下げる。何か答えないと、と思っているとき、背後から、榛名ー、と誰かが彼を呼ぶ。彼は返事をすると、あたしの手を掴んだまま、あたしを引っ張ってグラウンドへと戻って行ってしまったのだった(あたし、返事まだしてないんですけど!)






















友達に、やっぱり一緒に帰れない、って送って謝っとかないと。




>>>コメント<<<
最後の台詞は笑顔で爽やかに言ってほしい(笑)
ちょっと違う榛名サンでした(多分)

けっこー前のものでした。
お粗末様です!

タイトル 恋したくなるお題