同じ学年で同じクラスの男の子(ん、年齢的に男の子って言ってもいいのだろうか、その辺がよく分からない)榛名元希。ビジュアル良し、運動神経良し、だって野球部のエースピッチャーだし。その代わり、性格は良くない。ちょー我侭で傍若無人!平気で人のお昼のパンを奪い取ったり、人が必死に書いたノートを奪い取ったり、あんた一体何様!って言ったら、普通に…榛名様…って言いやがりましたよ。ほんと、どうなんだ、榛名! 「あー、真っ暗です、真っ暗。」 部活を終えて、自主練をしていたこんな時間になっちゃいました(月をも浮かぶ七時半)あたしは空を仰ぎながら独り言を呟き、それでも一人帰るしかないので足を踏み出した。試合が近いからなんだけど、どっぷりと集中しすぎてしまった。冷たい風が身に染みる。もう季節は冬へと変わってしまったわけで、風だって冷たいのが当たり前。あたしはマフラーを少しきつめに巻いた。 「あれ、、今帰り?」 「あ。」 榛名、とあたしは言った(いつの間にか隣にやってきていたのに少し驚いたけど)どうやら榛名も今帰りらしい。あたしはちょっとツーンとしたような態度をとった(今日のお昼ご飯のパンをとられた恨みを忘れられるか)そんなあたしに榛名は首をひねり、それから不満そうにあたしの頭をバシバシとたたいた。痛くはないけど。 「つぅか、寒くなったな。」 「冬だもん。」 「うわ、可愛くねぇ。」 可愛くなくて悪かったな。そう思いながらあたしは榛名のほっぺをムギュッと引っ張った。どうだ冷たいだろう。と、案の定榛名が、冷てぇ!と文句を言ってきたけれど、あたしは嫌がらせでほっぺから手を暫くは放してやらまいと思った。あたしの意図が分かったのか、榛名はあたしの手を利き手で掴んだ(男の子特有の大きな手だから両手の手首をいとも容易く掴んでしまった、悔しい!) 「お前、手袋くらいしてくれば?」 「今日は忘れてきたの!」 ふぅん、と榛名はあたしの手を未だ掴んだまま笑った(どうせその笑いは意地悪気な笑いだ)掴まれたままは何だか癪<しゃく>に触るので、早く放して欲しい。放して、と言うと榛名はさっきよりもニヤッというような笑いを浮かべて、嫌だ、と言った。持つところを手首から手の甲に変えられた(両手をおおわれるような形)ことにあたしは不本意ながらドキッとしてしまったが、次の瞬間、榛名の生暖かい息が吹きかけられて、思わず全身がビクッとしてしまった。 「な、なにするの!」 「は、暖めてやってんじゃん。」 そんなのいらないよ!と叫んでみても榛名は意地悪な笑いを浮かべるだけでその手を放してくれそうにはない。どっきんどっきんばっくんばっくんしてしまう心臓に、治まれ治まれ!って心の中で言ってみるけど治まってくれそうにもない。なんか悔しくてきつく目を瞑ったあたしは、次の瞬間、冷たいような温いようなどっちなのか分からないものが手に触れたのが分かった。それは…口付け。 「は、るな!」 「さてと、仕方ねぇから送ってってやるか。」 ふわり、ふわり。まるで雪が空から舞い落ちてくるかのように何かがあたしの心にふわりとやってくる。榛名は相変わらずあたしの手を持ったまま(片手だけだけど)何もなかったような顔をして歩いている。何も喋れないあたしに、榛名は一癖あるような笑いを浮かべてみてきたので、あたしは一生懸命に、あっかんべーをしてみたりする。 |