。桐青高校二年生で付き合って一年弱の俺の彼女。彼氏である俺から言うべき言葉じゃないかもしれないけど、見た目からは裏切られるであろう勝気で意地っ張り(そして恋愛関係イロハに興味なし)そう言うと、他の奴らから、どうしてを好きになったのか、と聞かれることがある(のことを知らない奴は特に)それは、もう、仕方ねぇんじゃね?気がついたら好きになってた、ってだけだ。それに、は可愛い。黙ってれば…だけど。 「コーヒーと紅茶、どっちがい?」 「じゃあ、紅茶。」 そんなと俺は今、俺の家で一緒にいたりする。2月2日。節分イブ、なんかじゃない。今日は俺の誕生日だ。ちょっとそーゆー下心があったからこそ、昨日一心に掃除をしてを呼んだんだけど、からはまだ何の言葉もない。もしかしたら、知らないのかもしれない(もしそうだったら、へこむ、マジへこむ)俺はとりあえず、紅茶をいれたふたつのカップを持って自分の部屋へと向かった。は部屋の隅っこの方にちょこんと座っている(なんでそんな隅っこ?)むしょうに笑いたくなったけど、カップを落としたらヤバイので我慢して机にカップを置いた。紅茶をゆっくりと飲んでいるを見て、俺は考える。もしかして、はマジで何も知らないんじゃないだろうか。 「、今日は何日?」 「2月2日だよ、日付忘れちゃったの?」 日付を忘れている様子はなし。じゃあ、マジで俺の誕生日を知らないだけなのか、もしくは、忘れているだけなのか。見せないようにではあるが、俺は軽くへこんだ。そういえば、俺はに告白するときを始めに"好き"だと言ったことはあるが、からその言葉を言われたことはない。付き合って一年近くになるけど、未だ手を繋ぐところまでしかいっていない(それもそうとうな日でなけりゃ、繋いでもらえない)健全な青少年としては、もーいい加減にキスくらいはしたいわけで。でも、一回キスしようとしたらものの見事に拒否られてしまい、そのときは三日くらいマジブルーだった。 「あ、高瀬、これ見てもいい?」 「あー、どーぞ。」 部屋にあるDVDを見たいという始末だ。ホント、どうしたらいいわけだ、この傷だらけの心ってやつを。は俺に甘えてきたりもしないし、頼ったりもしない(一回大きな雷が鳴ったときでさえ、一人でじっと我慢してた、ぜったいに怖がってたのに)本当に意地っ張りで勝気だ。だいたい、いくらなんでももうそろそろ"高瀬"はないだろう。俺って、本当に愛されてんだろうか…。そんな俺の心情を知らず、はデッキにDVDを入れようとしていた。が、俺はそんなの手をとってそれを止めると、驚いたような顔を向けた。俺が真顔だったのを含めて、は驚いているようだった。 「ってさ、俺のこと好き?」 「きゅ、急に何言って…。」 「急じゃねーよ、俺ずっと思ってたし。」 「た、かせ、DVD見よっ。」 顔を逸らして、なんとか話を逸らそうとするの腕を引っ張って強引にこっちを向かせた。は眉を寄せて一瞬だけ俺を見たけど、すぐに目を逸らした。なんだよ、顔も見れねーってのかよ。 「もしかして、違う奴が好きになったのか?」 「違うよ。」 「じゃあ、もともと俺のこと好きじゃないとか。」 「違うってば!」 返事は早かった。でも、そうじゃないなら、どうして何も言ってくれない。俺の気持ちに気づいてくれない。不安が積もりに積もっていたのか、俺は焦りと怒りを混ぜたような感情でいっぱいになっていた。手を掴む力が強くなってしまったのだろう、は、痛い、と小さな声をもらした。それでも俺はの手を放さない、放せなかった。俺はが好きだ。意地っ張りでも勝気でも、それでもが可愛いと思うし、一番大切にしたいと思う。それに見返りを求めるわけではないけれど、にとっての一番が俺であってほしいと思うのは、ワガママなんだろうか。俺は感情に身を任せて体を拘束して顔を近づける。そしたら、は思い切り顔を逸らした。 「…ほら、俺のこと、好きじゃねぇ、んだろ?」 「違う!」 「じゃあ…「好きすぎて、どうしていいか分かんない!」 え…。思わず俺は目を見開いた。俺が捕らえている彼女は今にも泣きそうな顔を見せてそれから俯いて、少しだけ震えていてた。それでも俺はその手を放すことなんかできなくて、ただ、俯いてしまったの顔をほとんど強制的に上げさせた。そっと目元に触れると、そこからは透明な雫が静かに落ちていった。が嫌いな、泣き顔。それを俺は初めて見た。それはとめどなく落ちて言って、数秒後にやっと俺は正気に戻ったようで慌てた。 「ご、めん!」 「…好きじゃないわけ、ない、よ。」 「…。」 「好きだから、分かんな、いんだ、よ。」 ぼろぼろと涙をこぼすを見て、悪いと思う以上に愛しいと思ってしまった。泣きじゃくりながらは、キスだって嫌なわけじゃないけど少し怖いんだ、と。手を繋ぐのだって恥ずかしいんだ、と言った。名前で呼ばないんじゃなくて名前で呼ぶのにもの凄く勇気がいるんだ、と言った。あぁ、俺はどうして簡単に、俺のことを好きじゃない、なんて言ってしまったんだろうか。はこんなにも俺を愛してくれていたのに。 「誕生日、だって、知ってる、よ。」 「ほんと?」 「朝からずっと、言いたかったんだ、もん。」 「…俺、やっぱりがスゲー好きだよ。」 また一粒の涙を落として、は小さな声だったけど、おめでとう、と言ってくれた。俺の彼女のは、勝気でも意地っ張りでもなかった。彼女はただ恋愛に関して奥手すぎるほど奥手で、純粋すぎるほどの純粋で、そしてたいそうな怖がりだった。 「…好き、だよ…準太。」 あー、もー、どうしたもんか。 |