準太の苦手なものはなんですかー?と、尋ねてみても本人から答えが返ってくるわけがない。こうみえてけっこう準太はプライド高いんですよー、笑ってても腹の内でグツグツ煮えてるときだってあるんですよー(被害者がうちのクラスのTくんだ、準太が一回戦負けしたのを知りながらも話題にだしたもんだから、準太が復活してから酷い目にあったらしい)と、なにが言いたいのかよく分かんなくなってきたけど、準太のお友達歴三年のあたしは今、準太の新たな弱点を探していたりします。以前あった弱点は知らぬ間に克服されていたらしくて、不敵に笑まれました(あの屈辱忘れまじ!)そんなあたしが今日、新たな情報を入手しました!しかも情報源は野球部の某Aくんだから間違いはない! 「準太ー、映画見ましょ映画!」 「いきなり人ん家来たと思ったらなに。」 実は家がお隣さん(三年前に引っ越してきましたあたしが)なのに加えて、親同士も意気投合なので時間を気にせずに訪問したりできる。ちなみに今の時刻は夜の八時。準太の部屋に一応はノックをして入る(返事を待たずに入ったけど、ノックと同時に進入って感じ?)と準太はベッドに寝転がって雑誌を見ていた。こんなことは日常茶飯事なので、別に怒られたりはしない、呆れられることはあっても。 「友達のお勧め借りたんだー。」 「まぁいーけど、途中で寝んなよ。」 「寝ないよ!」 "準太ってホラー映画苦手なんだって"その言葉を思い出してあたしは準太に背中を向けて密に笑う。これで長年(っていっても三年)の屈辱を返してやるんだから!準太はことあるごとにあたしを笑ったり、バカにしたり、からかったりするんだから、あたしの仕返しをうんと味わうがいい!ホラー映画大好きな友達が、ものすっごい怖い!って言った大絶賛の映画を入手しました(今日学校帰りにレンタルショップ寄ったんだから!)あたしはセットして再生ボタンを押した。違う映画の予告が終わって、黒い画面にタイトルが出てきた(思わずあたしが生唾を飲んでしまった) 「これって…ホラー?」 「うん、面白いって言われたから。」 へへへー、怖がるがいい準太!男が怖がるなんてってプライドがあるでしょーけど、これそうとう怖いらしいから我慢なんてできないかもね!二時間後が楽しみだ(眠れなくなったって電話がかかってきたらどうしよう…うわ、それ楽しすぎる!)しょっぱなから奇妙な音楽が流れてくる。うわ、けっこーくる、なんかゾワゾワしちゃう!もう一度生唾を飲んで、あたしはぎゅっと手を握った。 え、うそ、ヤメテヤメテヤメテ! 逃げてって、うわー、やられちゃうよー! えー、ここで出てくるのーきゃああ! 映画は思ったよりも怖かったりする。そして、あたしは新たなことを知った。あたしって、ホラー映画ダメだったんだ!ものすっごく怖かったんですけど。なんか怖すぎて逆に涙が出てこなかったんですけど。心臓なんてまだドキドキドキドキうるさいくらいに音たててるんですけど!だってあんなところでゾンビが出てくるなんて思わないじゃない!誰だって怖がるよ!ほら、準太だってものすっごく、ものすっごく…え…? 「じゅ、準太…?」 「ん、なに?」 「こ、怖くなかったの…?」 「ん、別に。」 う、うそぉ!だって青木くんだよ?青木くん情報だよ?間違ってるはずなんてないじゃん!それにあの映画、そうとうのホラー好きじゃないと平然となんてしてられないよ!今更ながら思い出して涙が出そうになった。それをグッと我慢したら、急に窓がガタガタって音をたてて、不覚ながらも悲鳴をあげてなにかにしがみついてしまった。そのまま体が前に倒れる。 「うーわー泣いてんだ、かわいーなー。」 「う、うるさいバカ準太!」 「俺を押し倒しちゃうし、ダ イ タ ン。」 へぁ!準太の言葉で今の状況を理解した。しがみつけるものなんてこの部屋にはひとつしかない、大きなクッションも抱き枕も準太の部屋にはないのだ。つまり、しがみつけるのは、準太だけ。あたしは準太にしがみついて勢いあまり押し倒してしまったらしい!悲鳴に近い声をあげたら準太は眉を寄せた(うるさかったらしい)けど、手を放してはくれなかった。 「実のところ、を見てて映画いっそ見てなかった。」 「じゅ、準太の…準太のバカァー!」 愉快そうに笑ってんじゃない!準太は怖がらないし、あたしは怖いし、踏んだり蹴ったりじゃないか!それに、今日、家にはあたし以外誰もいないんだよー(お母さんとお父さんはおばあちゃん家に泊まりにいったし、お兄ちゃんは家出てるし)一人で電気消えてる部屋にいたりなんかしたらゾンビが出てきそう!いや、電気消してなくても出てきそう!あたしは映画を思い出して身震いをした。そんなあたしを見て、準太がまたおかしそうに笑う(わーん、誰のせいだと思ってるんだ!) 「今日泊まる?」 「泊まるっ!」 (だって、怖いんだもん!) |