
最近は習慣になってしまっているコンビニでの夕飯選び、加えて朝飯選び。ライバル校との練習試合が近いためか、練習がやけに厳しくなっていて、練習内容がいつもよりも厳しい(まぁ、野球は好きだし、ピッチャーさせてもらってるから文句は言えない、言わまい)それもあと二日で終わりだ。俺はハンバーグ弁当とハムチーズパン、アンパンと牛乳を買ってコンビニを出た。さっきまで降っていた雨はもうやんでいたらしく、俺は折りたたみ傘をカバンに戻す。もう降りそうにないかな、と空を見てから視線を下ろすと、大きな荷物を持って歩いているばぁちゃんを見かけた。このままだと転がりそうだな。俺は急いでもないし、用事もないのでそっちに向かった。 「ばぁちゃん、どこまで行くんだよ。」 小さな小さなばぁちゃんはもう少し先のバス停でバスを待つらしい。俺は大きな荷物を持つと、あんまり遠くないからバス停まで送ることにした。最近の若者も捨てたもんじゃないねぇ、とばぁちゃんが言ったので、ちょっとくすぐったかった。バス停に着くとちょうどバスがやってきた(俺が荷物を持たなかったらきっとこのばぁちゃんはバスに乗り遅れてただろうな)運転手に事情を話して荷物を置いて出るまで発車しないようにしてもらった。バスの中から笑顔で俺に手を振るばぁちゃんに俺も手を振り替えしながら、バスを見送る(田舎のばぁちゃんは元気かな) 「さぁて、帰るか。」 まず先に、カバンに無理矢理突っ込んだ弁当やパンが潰れてないかを確認する(うん、大丈夫そうだ)バス停と俺の家は真反対だったので、来た道を戻ることになるけど、大した距離じゃないし。カバンを持ち直して家へ向かう。そんなとき、カシャンという音がしたので、その音がした方を見た。街灯の下らへんに携帯電話らしきものがひとつ落ちている。誰かの落し物だろうか(携帯落としたら困るんじゃねぇのかな)俺はとりあえず、それを拾ってみた。色がピンク色だっつーことは、落としたのは女か(こーゆーのって偏見だろうか) 「すみません、この辺に携帯が!」 誰かが切羽詰まったような声で駆け寄ってきた。その声に俺は顔をあげる。目の前には、懐かしい制服を着たオンナノコが立っていた。こげ茶のロングヘア、俺よりはゆうに20cm以上低いであろう子だった。思わずその子に目を奪われた(だって、その子、俺の初恋のオンナノコにすっげー似てたりすんだもん)オンナノコは俺が手に持っている携帯に気がついて、安堵の息を零す。そりゃそうだ、今の世の中携帯がなくなるとかなり不便だからな。お財布携帯っていうのもあるし、いろいろ困ることがありそうだ。 「ありがとうございます、助かりました。」 「ん、別に、偶然拾っただけだし。」 「それでも、ありがとうございました。」 オンナノコは柔らかい笑顔を浮かべると、深く頭を下げた。最近の若者にしては礼儀正しい子だ(あ、やべぇ、これじゃあのばぁちゃんと言うこと変わんね)と、そこで俺はあることに気がついた。探していて汚してしまったのだろうか、制服が泥で汚れてしまっている。それに、全体的に濡れているような(雨、浴びてたのか、この子) 「その格好じゃ、風邪ひくぞ。」 「え、あ…気がつかなかった、どうしよ、家遠いのに。」 気がつかなかったってどうだよ。気にシナサイ年頃のオンナノコ。これじゃあ電車に乗れない、とその子は本当に困ったような顔をしている。このまんまじゃ、電車に乗れないどころか風邪ひくぞ。この寒さでコートすら着てなかったことを疑うんだけど…。俺は米神当たりを指でトントンとたたき、仕方ない、とあることを考えた。もしかしたら、この子が初恋のオンナノコに似ていたからかもしれない。 「俺ん家近いから、ちょっとおいで。」 そう言った後に、俺って怪しい奴じゃないか、と思ったけれど、オンナノコは苦笑を浮かべると、すみません、と謝った(気をつけろって、俺じゃなくて本当に変な野郎だったらどうするつもりなんだ!)ぜんぜん知らない子なので下手に説教するわけにもいかなくて、と、いうか説教している間に風邪ひかせちまうな、ホント。とりあえずは問答無用で俺の上着を一枚羽織らせた。たまに利央から言われてたけど、もしかして俺って、お人好しだったりするのだろうか(いや、でも利央にはぜってー負ける) 「どーぞ。」 「すみません。」 遠慮がちに俺の家に上がる(当たり前か)水滴が滴ることを気にしているようだったので、俺は別に床が濡れるとか気にしたりしないけど、まずはタオルを出してあげた。髪の毛を伝う雫、思わず見惚れてしまい、慌ててまだ可愛らしい雑念を消した(ちょっと待て、相手は高校生、高校生!)さすがに風呂を借りることには抵抗があるだろう、と思い、せめて温かい飲み物くらい出そうと思った。着替えも貸さないと風邪ひくよなぁ。 「すみません、見ず知らずの者なのに良くしてもらって。」 「いーって、俺が勝手にしたことだから。」 それに、やっぱりこの子、可愛いんだよな、よく似てる。柔らかく笑ったとこなんて、もしかしたらあの人よりも可愛いかもしんない(まぁ、初恋っつっても今となっちゃ過去のことだからどーでもいーんだけどな)一応、と思って名前を聞くと、高瀬、と答えた。偶然だけど、同じ名字だったことに不思議と親近感がわく(高瀬なんて名字、驚くほど少ないわけじゃないだろうけど)俺も同じ名字だよ、と言うとちゃんは、わぁ、と喜んで、そして俺の手をとった。え、え、え。相手は高校生だというのにこの俺の動揺っぷりはなんだ。俺が必死で平然を装おうとしていると、ちゃんは満面の笑みを浮かべた。 「同じ高瀬のよしみでお家に住ませてくれませんか?」 |