
「そうだよ…準太が、好きなんだよ。」 あぁ、恥ずかしい。改めて言葉にするとものすごく恥ずかしい。藤堂は分かっていたのだろう、苦笑いを浮かべた後に、やっぱり、って言った。そんなにあたしの態度は分かりやすいんだろうか(気をつけないと)もっとも、あたしはこの気持ちを準太に伝えるつもりはない。トウコ先輩という人が準太にはいるらしい。玉砕覚悟で告白を!というような勇気のある女の子にはあたしはなれそうにない。家出の期間はあともうちょっと。このまま準太にはバレないように平穏に過ごしたい。あたしはそう思って、藤堂を見る。 「このことは秘密にしててね!」 「…それは無理だと思うなぁ。」 「な、なんで!」 ふったから、とかそーゆー人間じゃなかったよね藤堂!あたしは慌てて藤堂の肩をもった。必死なあたしに藤堂はまたも苦笑を浮かべる。そして、クイクイとドアを指差した。どういう意味だろうか。 「高瀬サン、いるんでしょ。」 「え…えええええええ!」 ツカツカと歩いて、藤堂がドアを開ける。すると見えてきたのは紛れもなく準太だった。あたしは混乱のあまり、目がまわりそうになる。どうして、どうして準太がドアの前にいるの?って、いうか、ドアの前にいたってことは、会話の内容筒抜け…いや、会話っていうか…。"準太が、好きなんだよ"あたしの告白が丸聞こえじゃないか!血の気がサァーッとひいていくあたしをよそに、藤堂は爽やかに手を振って部屋から出て行く。 「お邪魔しましたー。」 「ちょ、と、藤堂、藤堂ッ!」 必死になって藤堂を呼んだけど(藤堂呼んでも仕方ないんだけど)藤堂はあっさりと出て行ってしまった。あの人は、いったい何をしたかったのだろうか…って、あたしに告白ですね。二人きりになってしまい、あたしは恐る恐る準太を見上げた。準太は口元に手を当てたまま、顔を少し俯かせている。まさか、あたしが自分を好きだなんて夢にも思ってもみなかったんだろう(年離れてるし、範囲外、だよね…あたし)変な感じに心臓が跳ねる。今すぐにでも逃げてしまいたい気持ちになった。でも、準太はその場から動かない。でも、準太はあたしの気持ちを知ってしまった。 「じゅ、んた。」 恐る恐る名前を呼んだ。すると、準太はゆっくりと顔をあげて、あたしを見た。目が合った瞬間、今にも泣き出したくなった。顔を見ただけで涙が出そうになるのって、どうなんだろうか。あたしは頑張って堪えて、準太を見る。カチ、コチ、と時計の針が動く音だけが響く。あたしも準太も喋れないで見合っていた。それは何秒だろうか、もしかして、何分だろうか。どれくらいの時間が経ったのか分からないけど、ゆっくりと、準太の口が開く。そして、聞こえてきたのは。 「…聞かなかったことに、していいか。」 ----- 涙が出そうになるのを、グッて我慢した。準太は真っ直ぐにあたしを見て、そう言ったんだ。目を逸らして、なんかじゃない。準太が部屋から出て行って、あたしはベッドに倒れこんだ。フラレタ、ふられちゃったよ…いや、そうだろうとはちゃんと思ってたけど。でも、失恋って辛いもんだなぁって、高校生になってから初めて知った(今度失恋したって友達が泣きついてきたときは、今までよりももっと支えてあげられるように努力しよう)辛い、辛い。なによりも辛かったのは、あぁ言った準太の表情が、すごく辛そうだったから。あんな顔を、あたしがさせてしまったんだ。 「あーあ、世の中うまくはいかないもんだね。」 藤堂も同じ気持ちだったんだろうか。あたしと別れたとき、あたしが謝ったとき、このくらい辛かったんだろうか(今のあたしの状況と比べるのは失礼なことかもしれないけど) 「(でも、まだ…家には帰れない)」 明日は精一杯の笑顔で準太に、おはよう、って言おう。今日のことがウソだったのか、って準太が思うくらい、笑顔で。あたしは大丈夫だよって伝わるくらい、笑顔でいよう。そうじゃないと準太だって辛いだろうから。優しい準太は、あたしよりも傷ついているに違いない。ごめんね。時間が経ったら、また好きな人が見つかるかもしれないから、気持ちが自然になくなっていくまで、準太を好きでいさせてね。あたし、やっぱり、準太が好きなんだから。それでも…初めて人を好きになったのが、準太でよかったって、思うんだよ(自分勝手でごめんね) |