「同じ高瀬のよしみでお家に住ませてくれませんか?」



とりあえずは笑顔、と思って笑顔を浮かべて穏やかに言ってはみたものの、予想通り目の前の人は驚きの表情を隠せていなかった(って、いうか、この人名前は何て言うんだろう、まだ名字しか聞いてないし)同じ名字のよしみって何だ。自分でもそうは思ったものの、ここでアッサリと引くわけにもいかない。無茶なことなのはもともと承知の上。オニイサンはどうやら思考回路が鈍くなってしまったらしく、固まっていた。それを崩すためにもあたしは握っていた手の力を少しだけ強くする。そうすると、オニイサンはハッとしたのか、またあたしを見た。



「えーっと、冗談、だよな?」

「冗談じゃないですよ。」



冗談でこんな非常識なことが言えるわけがないじゃないですか。喉元までそんな言葉がきていたけど、それを言うと自分の立場が危うくなっちゃいけないので飲み込んでおいた。あたしは、何としても住家を確保しなくちゃいけない。昨日までの二日間はのところに転がりこんでたけど、家はを含めて四人キョウダイ、それプラスおじいちゃん、おばあちゃんの大家族。いくら親友といえど、さすがに介護が必要のお年寄りの家にご厄介になるわけにはいかない。ホテルだって未成年を易々とめてくれるわけがない。最も、家に戻るわけにはいかない。そんなときに見かけたのがこのオニイサン。



「あのさ、家は…?」

「戻る家はありません。」



人の良さそうなオニイサンだけど、さすがにこの件についてはかなり頭を悩ませているご様子(って、いうか、本当にこの人ってお人好しだよね、普通濡れてるからって家にご招待するかな?)苦笑をしつつ、どうにか流そうとしているようだけど、バカじゃないからそう簡単に流されたりはしないよ?家には、ぜったいに戻らないんだから(まだ)



「あたしは本気です。」



いつの間にか、笑顔はなくなって真顔になってた(みたいなあたし)それだけ本気なんだけど。オニイサンも苦笑をやめて、頭を数回かいてから、とりあえず座ろう、と言ってきた。服が濡れてたから戸惑ってたけど、もう一度声をかけられたのでとりあえず座ってみた。いつの間にかオニイサンも真顔になっていた。



「俺は一人暮らしなんだよ、その俺ん家に住みたいってどういうことか分かるか?」

「すっごく迷惑ですよね、でもお願いします。」

「あのなぁ。」



オニイサンはまた頭を数回かいた。それから、タレ目がちな目が鋭くなってあたしを見た。あたしは口をつむぐ(別に怯んだわけじゃないけど)あたしが手を掴んでたはずなのに、瞬時にあたしが掴まれるようなかたちになってしまっていた。それに、その力は強い。何?と思ったときには重力を感じていて、気づけば見慣れない天井とオニイサンの顔が視界いっぱいに映っていた。これは、もしかして…。



「男は狼、って言葉を知ってるか?」



ぞくに言う、押し倒された、ということか。"どういうことか分かるか?"なんだ、こういう意味だったんだ(気兼ねをするとか面倒とかそういう類の迷惑だと思ってた)確かにこれはマズイかもしれない。オニイサンはきっとあたしよりも5、6歳くらい年上だろうし、力も強そう。それでも譲れないあたしは目を逸らすことなく、見た。



「知ってるよ、だから何?」

「このまま俺に襲われるって考えないわけ?」

「住ましてくれるなら別にイイもん。」



ついうっかり言葉が素になってしまった。それとは別にオニイサンが驚いたような顔をしたのが分かった。別に襲ってほしいわけじゃない。そういうのは経験したことがない分、怖いに決まってるし興味だって毛頭ない。でも、それ以上に、このまま家に戻ることの方が嫌だ。戻るもんか、戻るもんか。たとえ、これが子どものワガママだと言われてもあたしは戻りたくはない。それならば、あたしは大人になんかならなくてもいい、子どものままでずっといたい(あぁ、ピーターパンにあたしはなりたい)あたしはギュッと目を瞑った(それに、オニイサンがそーゆーことをするとも思ってない)



「…お前、やっぱり帰れ。」



目の前の影がなくなったので、あたしは目を開けた。オニイサンはバツの悪そうな顔をしてあたしの上から退いた。それでも、あたしを住ませてくれる気はないらしい。それなら…。



「じゃあいい、援交でも何でもして住家を手に入れる。」



これは最終手段だ。そんなこと本当はぜったいにしたくない。欲しいのはお金じゃないし。心にもない言葉を真顔ではいてやった。オニイサンはピクリと反応して、背けていた顔をゆっくりとだが、あたしの方に向けた。目が合った。そして沈黙。あたしはその間もぜったいに目を逸らそうとはしなかった。この沈黙はどれくらいだろう。10秒?30秒?一分かはたまたそれ以上か。オニイサンが先に目を逸らして、長い長い溜息をついた。



「…分かった、俺の負けだ。」



次の瞬間、あたしは両手をあげて(万歳)喜んで、それから勢いをつけてオニイサンに飛びついた。案の定オニイサンはビックリしてたけど、戸惑いながらも受け止めてくれた(やっぱりオニイサンもの凄いお人好しだね!)

























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「つーか、俺が本当に危ない奴だったらどうするんだよ。」



あたしに押し負けたことが不服なのか、少し不機嫌そうに準太(オニイサンの名前、さん付けしようかと言ったら、呼び捨てでもいいと言われた)は言った。その言葉にあたしは目をパチクリする。準太が危ない奴のわけないでしょ、とあたしは満面の笑みを浮かべて言ってあげた。そんなの分かんねぇだろ、と言われた。それに、一人暮らしじゃなくて結婚してたりしたらどうすんだ、とも言われた。それに対してもあたしは笑顔を浮かべた。



「二日連続でコンビニで夕飯と朝ご飯らしきパンと牛乳を買ってた点から考えると、一人暮らしの可能性は大。加えてコンビニを出てから、多分親からの電話に対して"彼女?んなもんいねーよ!"とか言ってたことからして彼女も現在はなし。」

「(ぼーぜん)」

「それに、危ない奴ならおばあさんを助けたりしないよ。」



あたしを甘く見ないでね、という気持ちを含めてウィンクしてみたりする。準太は呆然、唖然、という言葉が似合うような顔をしていた(少し、笑える!)ストーカーか!とすぐに言われたけど、こんな堂々としたストーカーがいるもんか(いや、いるのかもしれないけど)あたしは正真正銘、準太を見たのは二日前で、別にやましい気持ちがあって準太に目をつけたわけじゃないもん。



「これからしばらくヨロシクね、準太。」

「…はぁ(厄介な奴に目をつけられた)」












(あたしをなめないでちょーだいね!)




アトガキ

同居が決定しました。
おめでとう、夢主チャン!
次は準サン視点です。