
主将が決まりました。主将は花井(名前は、梓、というらしい、冗談混じりで呼んだら思っていたよりも怖い顔で追いかけてきたので、もうやめておこうと思う、いや、やっぱり呼ぶかも)副主将も決まった、なんと隆也と栄口(隆也が副、鬼副主将だ!)控え投手と控え捕手も決まる。投手は沖と花井(今度打たせてもらおう)捕手は田島(監督の上手なお口で思ってたよりもすんなりと田島は承諾した)マネジであたしと千代がいるけど、あたしは監督補助がメインで千代は部員補助(水分補給とか栄養補給とか、本来のマネジっぽいこと)うん、何だか、野球部らしくなって気がする!ざぁーっと決まったことを述べてみました! 「何やってんだ、。」 「ちゃんの解説!」 「(動きすぎて頭イカれたかな)」 いよいよ本格的に活動し始めた県立西浦高校野球部!練習試合も一日に二試合(午前と午後)組み、投手や捕手も交代させながら、ポジションもいじりながら、監督も色々と考えているようだ。野球初心者の西広もフライがキャッチできるようになった!おめでと!練習試合も全部勝利を治めることができた。それもおめでと!…って、いうか"おめでとう"といえば、何か忘れている気がする。 「今日もふたつ勝って、練習試合全勝で試験週間に入れるわけだけど、みんな勉強してる?」 百枝監督の言葉に一部の人の体が震えた気がする。監督の背後に志賀先生がいるから…たぶん、勉強のことを本当に言いたいのは志賀先生なんだろう、うん、たぶん、うん、おそらく。田島が一番先に声をあげた(そうだよね、だって田島授業中ほっとんど寝てるか遊んでるもん)たまにあたしも一緒になってコッソリ遊んでたりすることもあるけど、一緒に怒られることもあるけど…あははー。 「じゃあちょっと聞いてみるね、グラマーやばい人ー。」 「はーい。」 「オーラルやばい人ー。」 「はーい。」 その後、数学、現国、と続いたけど、手を挙げたのは全部一緒の二人組みだった。三橋、と、田島!た、田島は分かるけど、三橋もそーんなに悪いの?隆也が隣でものっそい顔をしているのが何となく分かった。だいたい、赤点とったら部活に出れないのってどの学校でも共通のことじゃなかったっけ?え、ええぇぇえ!だって、投手と四番だよ、それってやばいよ?と、いうことで、百枝監督の提案により、花井が二人を責任持って赤点回避させること、ということになった。これはこれは、大変なことになりましたね隆也サン、え、当たり前なこと言うなって? 「三橋の家で勉強会?」 「そういうことになったけど、も行くか?」 「も危ねーんじゃねぇの、勉強しとけよ。」 水谷がニシシと笑いながら言ったけど、あたしは別に危機感なんて持っていない。だって、毎日隆也と一緒に勉強(宿題)してるもん。家に帰ったら隆也とキャッチボールして、勉強して、ジャンケンで順番決めてお風呂入って寝るんだもーん。残念でした、とあたしは逆にニシシと水谷に笑ってあげた。でも、みんなで、というのが楽しそうなのであたしも一緒について行くことにした。三橋の家、っていうのも一度行ってみたい。 「なんか…かわええ部屋だ。」 「俺がいない間客間だったから親が勝手に…。」 「…分かるよ。」 三橋家に到着。思ったとおり大きな家だー(だって部屋に十人くらいが入れるってくらいだし)机を運んできて、部屋にいれる。さすがに三橋の勉強机じゃみんなが勉強できないし。それにしても、ベッドが凄いことになっていますが、三橋…。男の子の部屋ってこんなのかなぁ、でも隆也の部屋は異様に綺麗だよ、あたしよりも綺麗綺麗! 「始めっぞ!英語は俺んとこ、数学は阿部んとこ集まれ!」 「ついでに生物化学はんとこ行け。」 「えー、嫌だよー、あたしも隆也に数学習いたい!」 「帰ったらいつも一緒やってんだろーが!」 猛抗議をしたけど、隆也には敵わず…。だいたい、得意科目を時間を削ってまでしようとは思わないのに(シクシク)そう思いながらも集まってきた人たちと一緒に教科書を開いて、先生の授業を始めるのでした。うむむ、頑張ります! 「れーんー、れーんー。」 と、いうときに、何か、いきなり高くて綺麗な…声?が聞こえてきた。それを聞いて田島が、でかい鳥が鳴いてる!って言ったけど、よく聞いて、これ鳥じゃないじゃん、めちゃくちゃ人間語だよ。三橋はスクッと立ち上がって顔を少し赤らめた。 「おっ親が帰ってきた!」 「あマズイ?」 「大丈夫!みんなやってて!」 三橋を追って田島が駆けていった、それを見て、何だか面白そうなのであたしも追いかけることにした。泉が手を伸ばしたけど、間一髪ですり抜けて脱出することに成功した!いぇい!下に下りて、立ち止まっている田島の後ろに隠れた。スーパーの袋をテーブルに置いている人、三橋のお母さんだろう(だって同じ顔なんだもん、すぐ分かる) 「昨日言ってくれればお母さんだってちょっとはさー。」 「ご、ごめんなさい…?」 「だってあんたの誕生会でしょ?」 「「三橋誕生日なの?」」 あぁ、そっか!5月17日、今日は三橋の誕生日だったんだ!何か忘れてると思ってたんだよねー!思い出してあたしはスッキリした(喉辺りまできてるのに思い出せないのって気持ち悪いんだよねー)あたしたちの声が聞こえたのか、ゾロゾロと集まってくる。三橋はこれでもかってほど驚いていて、それでいて慌てている。別にいいじゃん、今日が誕生日で、みんながそれ知っちゃっても、祝えてもらえたら嬉しいよ?と、思うけれど、三橋には色々あるだろうから、そう楽観的にもいかないのかもしれない。あたしは田島と顔を見合わせて、笑うと頷いた。 「じゃあ歌うたおうよ!」 「ろうそくつけて!みんなでお祝いしようぜ!」 「それでそれでケーキ食べて、お寿司もケンタも!」 「…少しは遠慮しろよ、。」 隆也にグシャリと頭をいじられた。ひどい、他所様のとこでそんなにガッツイたりはしませんよ!少しムーッとしてみたけど、三橋の誕生日をみんなで祝えるのが楽しいので、すぐに口元が緩んでヘラリと笑ってケーキやらケンタやら食べ物を運ぶことにした。すぐにお寿司も届いたし、大きな机にそれをできるだけ綺麗に並べる(花井と隆也がテキパキ動いてた、さすが!)ケーキにはろうそくをたてて、準備が全部終わったらそのろうそくに火をつけた。電気を消したら更に雰囲気が高まった。 「おめでとー!」 ハッピバースデーの歌をうたって、それが終わると三橋はろうそくの火を吹き消した。その瞬間拍手喝采で、みんなが、おめでとー、と三橋に言った。電気をつけると三橋はやっぱり真っ赤な顔をしていたけど、嬉しそうだった(うん、あたしも嬉しい!)こんなに大勢の誕生日会なんて、いつ以来だろうか。そりゃあ、あたしも誕生日は家族や友達で祝ってくれるけど、十人以上で祝われたり祝ったりするのは小学校以来かもしれない。だから、すっごい楽しい! 「、口の横に米ついてる。」 「え、ほんと?」 「お前なー、ガキじゃねぇんだから。」 甲斐甲斐しく世話をされるあたし。双子だから同じ年なのに、どうしても隆也の方が年上っぽいポジションにいるのは生まれたのが隆也の方が早いからだろうか?(あたしらを見て一部の人らが一瞬止まってたけど、どうしてだろ)三橋のお母さんはお吸い物をとってくると言って部屋を出て行って、花井が手伝うと行って出て行った。あたしも、と言ったけど、ひっくり返されちゃ困る、と言われてしまった(ひっくり返さないもん!)どうやら、巣山と花井が三橋よりも早い4月生まれだったらしく、あたしらはろうそくに火をつけて、電気を消して、どうせなら二人も祝おう!ということにした。 「はっぴばーすでーとぅーゆーう!」 「巣山もおめでとう!」 「火ぃつけて次花井な!」 「俺はいーよ!」 「はーい、火をつけますよー梓ちゃん!」 「だから梓言うなっつってんだろー!」 あはははは、といくつもの笑い声が重なる。野球をしているときとはちょっと違うみんな(千代も来れたらよかったなぁ、遠いから仕方ないけど)その後はケーキを食べた。美味しかったのであっという間に食べてしまって、隣の隆也はまだ食べてたので、フォークでつついた挙句一口分とったら、予想通り怒られたけど、残りの三口くらいをくれた(ありがとう隆也大好きー!)その後、三橋の練習場を見に行って、みんなは改めて三橋の凄さを知った、いや、凄いって言うだけは失礼かもしれない、うーん、頑張りや! 「行こうな!甲子園!」 「行き、たい!」 "無理ですー!"初めてみんなと顔合わせたときは、逆になんの迷いもなくそう言ってた三橋。肯定の言葉にあたしは隆也と顔を見合わせて笑った。一歩一歩、ゆっくりではありますが、あたしたちはちゃんと進んでいるもようです! 「行くぞ、甲子園ー!」 「おぉぉ!」 ----- 「隆也、ここはどうなるの?」 「あぁ、ここはこっちの数式に当てはめて…。」 「…あ、そっか、うん、分かった。」 家に帰って約束通り数学を教えてもらっている最中。今回は範囲に図形がないだけマシかなぁ。理科系は好きなんだけど、同じ理数系のくせに数学はちゃんとやっておかないと平均点を下げてしまう。今回いい点数だったらお父さんに何をねだろうかなぁ(高校入学したときはシューズと時計を買ってもらった)6月の抽選会に行くときように制服っぽい服を買ってもらおうかなー。確か千代はブレザー着てたはず。あたし、違うのにしようかな。 「数学終わり。」 「え、もう?」 「次は化学、化学教えろ。」 「えー、化学はもーいーよー!」 あの後、三橋の部屋に戻って改めて勉強会が始まった。思ったよりも水谷が分かってくれなくて(これはあたしの説明不足じゃないよ、水谷のキャパシティーのなさが悪いの!)20分くらい同じ説明を繰り返すはめになっちゃったんですよ。でも、隆也が退くわけなくて、数学教えただろ、と結局はもう一度化学をするはめになっちゃったのでした。 「三橋ー、田島ー、どうだった?」 「「赤点なかった!」」 「よかったなー。」 「泉はどうだった?」 「平均点くらい。」 テスト終了後の答案用紙の見せ合い。泉は平均点より高いくらいだった。はどうなんだよ、と口々に言うのであたしもペラリと答案用紙を見せる。それを見て、三人の目が丸くなったのが分かった。 「あ、ありえねー!」 「って、ホント、頭よかったんだ。」 「す、凄い!」 「えっへん。」 実はね、小学校の頃、算数で30点をとったら隆也がすっごく嫌そうな顔をして、その日から隆也と一緒に夜勉強する習慣ができたのです。次にそんな点数とったらキャッチボールもしない!って言われたら泣き泣きでもやるしかないでしょ?そう言ったら三人は苦笑いをしていた。ちなみに、あたしの点数を花井が知ったときの顔…!え、落ち着きがないからって?ひ、ひどいー! |