17.













いよいよ桐青との試合、第一試合が始まる。主将である花井から打順とポジションが伝えられ、みんなは大きな声で返事をした(その返事からは少し緊張感が感じられたけど、このくらいの緊張が逆に引き締められていいんじゃないかな)あたしは千代とベンチでドリンクなどの準備をしながら、そこからみんなを見ていた。初めての公式戦が桐青なんていう強豪と当たったのは、他のところからしたら運が悪いとしか言いようがないだろうけど、逆にとれば、この試合に勝利をおさめたらその勢いで勝ち抜けちゃう気もする。そもそも、はなっから諦めてちゃ勝てる試合にも勝てない(あたしは信じてる、信じてるよ!)



「勝つ。」



ノックを終えて(さすがに公式試合じゃマネジのあたしはノックなんてできません)戻ってきた隆也があたしの頭をポンとたたいた。短い言葉だったけど、ちゃんと伝わってきた。"甲子園、連れてってやるからな"朝言ってくれた言葉に上乗せされた。あたしは振り向いて隆也の手をぎゅうっと握った。一生懸命に、あたしが今できるだけの想いを込めて握った。



「あたしの力も込めておいた。」

「…ははっ、そりゃ百人力だな。」



試合が始まる。あたしは監督の隣に立ってグラウンドを見る(スコアボードは千代がつけてくれる、あたしは状況観察その他もろもろ)マウンドに立つ準サンが視界に入った、あれ、準サンってあんなに硬い表情でマウンドに立っていたっけ?約一年前を思い起こしてみる。"じゃあ、これがラストだぞ"確かに投げてるときと普通に喋ってるときの顔が違うのは憶えてる。だけど…。あたしは首を傾げた。桐青高校二年生エース、高瀬準太さん、スリークウォーター気味の三振をとるよりも打たせて捕るタイプ。球速は、あたしに投げたとき既に130キロくらいはあった(今はもう少し速いと思う…最速は133〜135キロくらいかな)



「抜けた!」



打順一番の泉は打つのがチーム内でも上手い、とあたしは思う(田島は別格、うん、あの人は別格だ)でも、それを考慮しても泉はあっさりと準サンの球を打ったなぁと思う。桐青の試合ビデオをあたしも見たけれど、準サンの球もそれを捕る捕手の(確か)河合さんも強豪チームに相応しい力の持ち主だ。正直、今回は打たせて捕る、に徹底すると思ってた。…の割には球にいまいちコントロールがないような。だけど、まだ始まったばかり、不確かな情報を監督にあげるわけにもいかないので、もうちょっと様子を見よう。



「(やっぱり、準サン変?)」



そう思ったのは巣山が打席に入ったときだ。二番目の栄口のバントが決まりワンアウト二塁。セカンドに準サンが謝るような仕草をした(もう少し逸れてたら確実に球がはしってた)けん制のサインはたぶん、出ていなかったんだ…だとしたら、準サン緊張してる、か、調子が悪いか。たぶん、緊張。巣山のバントが決まり、ツーアウト三塁。チャンス、次の打者は田島だ!



、高瀬ってあんな感じだったのか?」

「ううん、違うよ。」



コントロールの良さはビデオでも把握済み。それに、まだシンカーが出ていない。あの人の決め球はシンカーだと思う。普通に130キロ代の球が投げられるから、それと組み合わされて使われたら打者は戸惑う(あたしだって宣言して投げてもらわなかったら三球じゃ足りない)そのシンカーはまだ出ていない。新設校だけあって、データもないからまだ探りをいれている段階なんだろうけど。そんなとき。



「シンカー!」



田島にシンカーが来た(右打者にはフォーク、左打者にはシンカーが準サンの決め球)離れているのでそこまでハッキリとは見えないけれど、前よりも球のキレがよくなっている気がする。両隣に立っている監督と隆也がこっちを見てきたので、あたしは頷いて、それから苦笑を浮かべた。前に投げてもらったときより、たぶん、離れていって落ちてる(ここで、打ちたい!なんてことを言ったら隆也にきっと空気読めって言われるから我慢しておこうっと)田島がアウトをとられて、無得点でチェンジになった。



!」

「ドンマイ、田島。」

「…あれが高瀬のシンカーか。」

「右打者には通用しにくいけど、あたしらにはくるねー?」



左打者、つまり三橋、田島、沖、泉は両打だから関係ないかぁ。おまけとしてあたしも一応両方で打てるけど、泉のようには上手く打てない。左打者にとってはシンカーは曲者の中の曲者。ボールになるんなら放っておけばいいけど、ストライクゾーンが狙えるシンカーなら、足掻かないと。



「でも、は打ったんだろ?」

「でも、あの打ち方じゃあ塁に出られないよ。」



打席勝負と試合は違う。塁に出られなければ意味がないじゃん。田島は何やら考えるような表情を浮かべてブツブツ言いながらグローブをとりにいった。準サンのシンカーを打って、それで尚且つ塁に出られる方法…さっきから監督がチラチラこっちを見ているのも、それを考えてほしいからなんだろうなぁ(でも実際に打席に立たないと分からないよ!)



「シンカー投げられるとキツイですねー。」

「そうねぇ、田島くんが空振るシンカーを他の子には…。」



さぁ、気持ちを切り替えよう!チェンジで西浦は守り。隆也と三橋のバッテリーの公式戦、初のお披露目!嬉しくなって思わず叫びたくなるのを堪えるために自分の口を両手でおさえた(監督はビックリしてたけど)今は公式戦、公式戦っと。練習じゃないんだ、あたしは監督補助じゃなくて、今日はマネジ。選手補助!逸る心臓の音を感じつつ、あたしは三橋の第一投に集中した。



「トライッ!」



よぉしっ!あたしはその場でグーを握った。三橋は相手校の応援団にも相手選手にも怯えてはいないらしい。三橋の球が、隆也のリードが強豪といえど桐青にちゃんと通用してる(嬉しくて声をあげたいけど、それは空気を読んでやめとく、今は)まずはサードの真柴さんを三球三振に打ち取った!続くレフトの松永さんは三橋の球を打ち上げてくれて、田島がしっかりキャッチをした。よしよし、いい出足だ。でも、試合はこれから。気を抜くと、一気に得点持っていかれちゃうよ。そう思いながらもあたしは試合をベンチから見ながらワクワクがおさまりそうにない。

























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桐青高校のベンチにて。一年生レギュラーの真柴と控え捕手の仲沢との会話を聞いて河合は小さく笑った。試合本番だというのにどこか間抜けなようなやり取りには、慣れてはいる。河合は笑いながら高瀬の方を見た。彼の声は、高瀬には届いてはいないようだった。



「準太!今日球がよくキレてるぞ!」

「あ、はい!」



高瀬の表情がいつもより硬いことを河合はすぐに分かった。確かに高瀬は試合中は表情をあまり出さない、ということは長年の付き合いもありチームメイトはそれを把握済みだ。だが、それにしても硬すぎる。河合は昨日の自分の言葉で気合いを入れすぎた、と思った。もう少し解しておくべきか、そう思い河合は何か会話のネタを探る。そうして思い出したのが。



ちゃん立って試合見てるな。」

「え、あ、本当、っスね。」

「(準太、気づいてなかったのか!)」



高瀬は河合に言われて初めて相手チームのベンチを見た。女監督である百枝の横に、制服ではないが制服っぽい格好をして、頭には西浦のロゴが入った帽子をかぶっているが立っている。彼女は真っ直ぐにグラウンドを見ていて、こっちには気づきそうにない。内心、必死にの声を思い出そうとするが、思い出せそうにない。どんな声でどんなことを言っていたのかを頭の中で模索するが、それは見つかりそうにない。高瀬の眉が寄せられ、それを見た河合は密かに唇を噛んだ。



「(しまった、逆効果だったか)」











挑戦、対強豪戦!
このまま何も起こらないとは思えない、うちも桐青も!











後書

またもや無意味に二人を最後に登場させました。
が、やはり意味が分からない。
ってか、いくら原作沿いといえど、
このままいくとかなり長くなってしまうので省きます。
三話くらいで対桐青編を終了させなければ!
二人はまだ"隆也"が双子の兄だということに
気が付いていなかったりします。