21.













「5対4!西浦高校!」



どしゃぶりの雨の中、サイレンと共に観衆の声が響いた。みんなは早々と花井の声で応援団への挨拶に向かった。それから監督の声でダウンする。雨はまだやみそうにない。あたしは千代と一緒に持ってきたものの片づけをした。激戦の末の勝利に、あたしもみんなと同様心が落ち着かないような感じがする(隆也に飛びついたりはしたんだけどなぁ)みんなはダウンを、あたしたちは片づけを終えてから建物から出た。そこには応援してくれた人たちや、家族の人たちがいた(お母さんはやっぱり来れなかったみたい)



「午後は普通の練習の前に今日の反省会やります!」

「はいっ!」

「勝ちはしたけどギリギリだったの分かるよね。」



あたしもみんなと一緒に返事をしていたりする。練習は一緒にやってもマネジはマネジなんだけどね、なんか、こー、返事したくなるっていうか…。苦笑いしてたら見られてたらしくて隆也にこっそりと小突かれた。隆也も服も顔もボロボロだ(吹っ飛ばされてたしね)で、とりあえずは学校に帰るってことでタクシーを呼ぼうとしてたんだけど、家族の人たちが車で来てるからってその車で手分けして送ってくれることになったみたい。そんなとき、桐青の人たちがなにやら千羽鶴をもってこっちにやってきた。



「花井くん、最後のバックホーム凄かったっす。」

「いえ、あー。」

「この強さなら本気で狙った方がいいすよ、甲子園。」



河合サンの言葉に思わずゴクリと生唾を飲んだ。認めてくれてる、みんなの強さを認めてくれたんだ、河合サンが、桐青が。思わず嬉しくて何か言っちゃいそうだったのを必死で堪えた。ここで言っちゃったら隆也に花井がついて、おまけに泉からのツッコミも受けそうだ(頭ひとつじゃ足りないよ、それじゃ)頑張って口元を押さえてたとき、グィッと腕を引っ張られた。



「(え、え、え)」



背中に、10の番号がある。もしかして、準サン?でも、準サンが何であたしを引っ張っていってるのか分かんない。久しぶり、っていうのならもとの場所で話せばいいことだし。あたしは首を傾げながらも手を引かれるままについて行く(あ、しまった、隆也に何か言ってくるべきだった、置いていかれるかも!)さっきいたところの反対側みたいなところに着くと、準サンは立ち止まって振り向いた(あ、ほんとに準サンだった)



「お、久しぶりでー、す。」



目線をあげて顔を見ると、準サンの目はちょっと赤くて、表情も暗かった(当たり前だ、負けたんだもん、悔しいよ、あたしバカですか…)どうしようってすぐに思った。もしかしたら、準サンはあたしに怒りに来たのかもしれない。学校見学のときにあたしは準サンの球を軽々しく打たせてもらってる。そんなあたしが別の高校に行ってそのこと話して…何か嫌な気分になっちゃったのかもしれない。あたしはゆっくりと準サンから視線を逸らした。



「えっと。」

「…。」



準サンは何も言ってくれない。負けたら、悔しい。でも、勝つ人がいれば負ける人がいて当たり前だ。それが勝負の世界だもん。だけど、軽々しく、惜しかったです、とか、強かったです、とかそんなこと言えるわけでもない。どうしよう、どうしよう、なんだかあたし、珍しいことにテンパっちゃいそうなんですけど。顔をあげると、やっぱり目が合って、真っ直ぐに見られているのが居たたまれないような、って、いうか、準サンが怒っているような気がして、後で失礼かなと思ってしまったけど、横を向いてしまった(とんだ被害妄想だ!あたしの正直者ぉ!)どうしよう、どうしよう、とまた思っていたとき。



「(う、え、え)」



背後から腕がまわされて身動きができないような状態になってしまった。なぜだろう、なぜだろう。あたしは頑張って思考回路をフル回転させようと頑張ってみる。なんだか可笑しいんだけど、あたしの頭。どう考えてみても、あたしは準サンに抱きしめられているように思えてならない(もしくは捕らえられてしまった、とか?)やっぱり怒ってるんだろうか。あ、でも、あたしに投げたから負けたなんて、準サンが思うわけもないし。事実、あたしは何の役にもたってないじゃん!そーだーそーだー!



「あ、のー、準サン?」



どうしようか、の果てに、困ったあたしは何を考えたのか、おもむろにまわされた手を触ってみる(あ、隆也のより大きい気がする、でも、指長いなぁ、細いなぁ思ってたより)そうすると手がピクリと微かに動いた気がした。それでも放してくれそうにないので、あたしは勝手に手を開いてみたりする。三橋みたいに手にタコがある。投手っていうのは、大変なんだと思う。試合中、一番高いところで投げ続けなくちゃいけないんだもん。それに、重要なポジションだもん。三橋も、準サンも凄いや。



「手、ちゃんと休めて下さいね。」

「…え。」



ここでやっと準サンの声が聞こえた。その声は怒ってなんかいないように思えた。あたしは一生懸命にその体制のまま頭だけを後ろに向かせてみる。怒ってなんかいなくて、どちらかというと驚いているようだった。



「準サンの球を、みんな待ってるんですから。」

…俺は…。」



準サンが何かを言いかけていたけれど、次の瞬間、もの凄くいい音と共に準サンが揺れた(捕まってたから、あたしも揺れてしまった)またもや頑張って顔をのぞかせてみると、そこには高瀬先輩がファイルのようなものを持って仁王立ちに近いような格好で立っていた。パッと準サンの手が放れる。



「準、セクハラで訴えるわよ?」

「…いってぇなぁ逸子。」



あ、そっか、高瀬先輩と準サンは従姉弟だって言ってたっけ。高瀬先輩はあたしを見るとにこりと笑ってあたしの手を引いて、横に連れてきた。どうして準サンがセクハラで訴えられるのか分からないけど、あ、もしかして抱きしめたりするのってセクハラになるんだ?あたしは一人納得して手をポンとたたいた。そんなとき、隆也の声が聞こえたので、あたしは返事をした。



、どこ行ってんだバカ…って…。」

「あ、久しぶり、隆也くん。」

「ちわす。」



委員会が同じだったこともあって、隆也は高瀬先輩とも顔馴染みだったりする(同じ名字で紛らわしいので、阿部くん、じゃなくて、隆也くん、って呼んでいるみたい)隆也は高瀬先輩の次に準サンの存在に気がついたのか、ちょっと面食らってるみたいだった。高瀬先輩はそんな隆也に気がついて、またもやファイルで準サンをたたいてから笑った。



「ごめんね隆也くん、従弟が誘拐しちゃって。」

「誘拐じゃねぇっつの。」

「そうだったわね、セクハラだった。」

「逸子ぉ!」



一瞬隆也の表情が強張った気がしたけど、すぐに戻ったので気のせいだったということにしておこう(なんで強張ったのかなんて皆目検討もつかないしー)隆也はあたしの手を引くと、二人に軽く頭を下げて、なぜだか足早にみんなのところに帰ろうとした。あ、そっか、みんな待ってるからかな。そう思ってあたしも頑張って歩くのを早くしてみようと思った。…だけど、その前に、と。



「あたし、また準サンの球打ちたいって思いましたよ!」



素早く振り向いてそれだけ言うと、準サンは、返事はしてくれなかったけどあたしを見てくれた。あたしの周りには凄い人ばっかりだ。正攻法じゃあ今はとーてー打てそうにないシンカーを投げる準サン。コントロール抜群誰にも負けない三橋。何でも打っちゃう田島。一年生だけで強豪に勝っちゃった西浦野球部みんな。それに…。



「なんだよ、ニヤニヤすんな。」

「えへへー。」



一試合の配球を考えて、もう一人の監督してグラウンドにいた、隆也も本当に凄かったよ。あたしは精一杯背伸びをして、隆也の頭を撫でてみた。隆也は思ったとおりすっごく嫌そうな顔をして、あたしの手をとっちゃったけど。あたしは何だかすっごく幸せで、気持ち悪いって言われても緩んだ口元はもとに戻りそうになかった。



、可愛くなってたでしょ。」

「逸子ウゼー。」

「…もう一回叩くわよ。」

「(もともと可愛かったっつーの)」

























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「あーもー、お前までびしょ濡れかよ。」

「もー、大丈夫だよ、ちっさい子どもじゃないんだから。」

「お前はいつまで経ってもちっせー子どもだっつの。」

「なにそれ、酷いぃ!」



戻ってみたら三橋はつぶれてて、けっきょく三橋は午後の練習には参加せずに家に帰って静養!ってことになった(車に乗せられる前に、汚い!ってお母さんに言われて服脱がされたのがちょっと可哀想だったりする)三橋は明日学校休むかな?うーん、この状態だと休みなのかもしれない。



、どこ行ってたんだよ。」

「ごめんねー。」

「ほら、俺ん家の車で連れてくから乗れって。」

「はーい、ありがとうございます!」











試合後、それぞれの想い!
みんな本当にお疲れ様でした!











後書

思ってたよりも準サン出張りすぎました。
愛が偏ってるのがよく分かりますね。
ファン以外の方には申し訳ありませんでした!
でも、まぁ、告白もなぁんもしとりませんね、彼は。
むしろ夢主が鈍いっていうか、考えてなさそうだ。
準サンの気持ちを分かった阿部くんがイライラしてたら
いいなぁ、とか勝手に思ってたりします。
最後のは、お好きな方のお車に乗ってくださいね。