24.













「ぶはー!あぢい!」



西浦高校硬式野球部。部員数は10人プラスマネジの2人。ギリギリの定員だ。監督は珍しくも女性監督であり、責任教師っていうのは、これも珍しくて体育のセンセとかじゃなくて、数学のセンセだったりする。しかも硬式野球部は創立一年にもぜんぜんならない赤ちゃん部だったりして。まぁ、そんな歴史もなーんもない野球部だけど(以前は軟式だったらしいけど)地区予選では、優勝候補の一校とされている桐青高校をなんとか…ではあるけど退けて逃げ切って一勝を確保。本当に少しだけ先に、崎玉高校との試合が待ち構えている。そんな我らがにしうらーぜは、ランニングを終えてグラウンドへと戻ってきました!



「バテたぞ、ちくしょー。」

「距離はたいしたことないのにねー。」

「でも、走るって気持ちいー!」



マネジであるはずのあたしも、練習はほとんど参加の方に入っていたりする。だって、あたし、監督補助、練習支援の方のマネジだし!ちゃーんと基礎体力をつけておかないと、ね。走るのは好きだけど、さすがに暑くて暑くて、うちわないから手でパタパタとあおいでみた。



「お前、女じゃねー。」

「つーか、俺らより元気って、やっぱすげー。」

「へっ?なになに、その視線、ってか褒めてんの?」

「「…褒めてる。」」



なんだぁ、褒めてんのかぁ!素直に喜ぶと、なんか言いたげな泉がベシリとおでこを叩いてきた(そこまで痛くなかったけど)いったいなんなんだよー。10分後にミーティングを始める、ということなので、汗もかいたし、そろそろユニフォームに着替えてこようかなぁ、と思った(今は西浦ジャージを着てる)水谷たちが頭から水をかぶっていて、いいなぁ、とか思ってたら、泉にヤメロと怒られた。ぶー。



「パンツぬぐなら道から見えねーとこ行けっつってんだろ!」

「は!?」

「つーか、まだいんだろーが!考えろよ!」

「いーじゃん!見たいかもしんねーじゃんか!」

「へ?なにがー?」

お前はさっさと着替えて来い。



田島と花井がなにやら揉めてたけど、よく話が分かんなくて、聞いてみたんだけど、隆也にその場から追い出されてしまって(その前に田島が隆也に叩かれてたけど)けっきょくはなんだったのかよく分かんなかった。楽しいことなら知りたかったなぁ、とか思いながら急いでユニフォームに着替えて、今日のドリンクはなにかなーとか、もー田島の話はすっかり忘れていた!グラウンドに戻ると、みんなが美味しそうにジュースを飲んでいた、バナナかな?



「千代ー、あたしも飲むー!」

「待て、お前プロテインはダメだろ。」



と、バナナジュースに手を伸ばしたところで隆也にとめられた。あ、そうだった。みんなが飲んでるのは、いつもプロテイン入りのジュースだった!プロテインがダメなあたしのために、千代はわざわざプロテインが入っていないのまで作ってくれている。ありがとうございます!それを受け取ると、グイーと飲んだ。美味しい!甘い!でも、飲みやすい!



「プロテインがダメな奴っているもんなんだなぁ。」

「うーん、2回もお腹痛くなっちゃってるからねぇ。」

「ヒョロヒョロがプロテイン飲んでも変わんねーよ。」

「うわ、隆也ひどい!あたし力こぶ少し出るもん!」

「お前みたくちっせーのがな。」

「うわうわ、見てろぉ、そのうちムキムキになってやる!」

「「「(そんな見たくねー)」」」



ギャーギャーやってたら、休憩時間はあっという間に終わってしまって、崎玉高校対策のミーティングの時間になった。



「詳しいデータは明日までにお願いするとして。」

「「「お願いしあーっす。」」」

「観戦して思ったこと言っとくぞ、まずあ守備ン時!」



初めに出てきた人は、やっぱりあのサクラとかいう人だった。そりゃあ、あれだけ強烈な当たりを目の当たりにしてしまえば、10人が10人サクラのことを言うに違いない。あたしも、サクラが一番警戒する人だと思うし。あとは、1〜4番打者もけっこう頑張っていたと思う。栄口が言うように!



「左が9番だけなんで、左側は守備練時意識すっこと。」

「うーい。」

「むこーは進塁の判断甘いんで牽制洗い直しとくこと!」

「おーえ。」

「あとこれ全員!3回戦の守備位置でバント処理フライ処理連携しっかり確認すんぞ!」



なんだか花井キャプテンらしくなったなぁ、とか思って一人で密かに小さめに笑っていたら、密かなのに花井にバレたらしくて帽子脱いで投げつけられた(避けたら怒られた!)なんも言ってないのに、とか言ったら、言わなくても分かる!とか、また怒られた。もー、怒りんぼだなぁ。まぁ、それはいーとして。それから牽制のこととか、ランナーコーチとか、みんなが自主的に話を出していた。そして。



「次はコールドにしてほしい。」



隆也の思わぬ言葉に、みんなは一瞬言葉を失っていた。コールド、つまりはコールドゲーム。審判の人が、雨とかの環境や得点に大差がついた場合にその回までの得点で勝敗を決めて終了させること。実際、去年コールドで勝利を掴んだ高校はあるわけで、決して不可能ってわけじゃあない。確か、桐青は去年コールドで準々決勝を制したはず。ARCとかも。



「延長なんか冗談じゃねーし、9回でもなげぇ、このまんま行くと早けりゃ次の試合でうちは三橋から崩れるよ。」



それは頷けるし、ぜったいにないって話じゃあない。事実、桐青との試合の中で、三橋はかなりの疲労を露わにしてた。熱まで出してたし。これからだんだんと強豪校と戦っていくことになるんだから、体力は温存しておくに限る。



「試合を早く終わらせるのが一番だと思うんだ。」

「狙ってやれんならやりてぇよ、そのーが楽だしな。」

「だから、狙おーよって話してんだよ。」

「うん!いいかもね!」



隆也の案に、監督も賛同した。もちろん、あたしだって賛成だ!だって、西浦には三橋っていう投手がぜったいに必要だから、三橋を温存するっていうのは、とっても大事なことだと思うから。みんなも、なるほどなって気持ちになってきて、今度は5番(サクラ)はどうするかっていう話になった。隆也は敬遠するってハッキリと言っちゃった!さすがは隆也だ!



「ハッキリ敬遠すんのは、向こうのやる気をそぐためか。」

「5番が精神的支えになってんだろうからな、そいつが勝負さしてもらえねーとなりゃ、ベンチが腐んだろ。」

「そうすると、ホウ酸団子持って帰ったネズミちゃんズ?」

「…例えは最悪だけどな。」



んー、ダメだったか(花井なんて口元ひきつってるよ)だって、あまりにも作戦黒いんだもん。まぁ、それが一番イイ作戦ではあるけどさー、なんか、空気緩めたいじゃん?はいはい、空気読みますよーっだ。反省なんてしてないけど、ちゃんと聞くモードになっていたら、隆也がジーッとこっちを見てきた。なになに、あたしちゃんと聞いてるよぉ?



お前スクリュー投げろ。



隆也が言った言葉に、あたしは思わず目を見開いた。それだけじゃなくて、マヌケだけど、はひ?なんて声を出してしまった(まるで三橋だ、いつの間にかあたし三橋になっちゃった)みんなの驚きの表情と、驚きの視線がこっちに向けられる。ちょっとちょっとちょっと、あたしは自他共に認めるバッティングバカですよー?花井たちが隆也に声をかけてるけど、隆也は発言をひっこめようとはしない。



「阿部、って打撃にしか興味ねーんだろ?」

「投げろってもよ…いくら野球上手いっていっても。」

「しかも変化球だし。」

「投げれるよ、こいつ初めピッチャーに興味あったんだし、しかも最初に憶えたのが変化球、変だろ?」

「いや、それは幾分も前のことであってー。」

「意外に指長いんだよな…任せたからな、。」

「いやいや、人の話聞こうよ!」



な、なんだか話が違うところにもっていかれた気がする。隆也は真剣な顔をしてるし…マジだ。ピッチャーに興味があったというのは、隆也がキャッチャー志望をハッキリとさせてからだ。隆也がキャッチャーやるんならあたしはピッチャーでしょ!と、子どもっぽい考えでピッチャーの練習を子どもながらにしていた(そりゃ、今も子どもだけどー)中学校に入ってじきに、打つ方に興味がわいちゃったんだけど、いろいろあってから。未だに真剣な隆也に、あたしは慌てて首を振る!



「い い か ら 投 げ ろ 。」



隠し持ってる菓子を全部取り上げるぞ。なんて脅されてしまえば、あたしは首を縦にふるしかないのだ…。あぁ、なんて可哀想なあたし(お菓子を人質にとるなんて卑怯だぁ!)あたしは、今は投げるよりも打つ方が好きなのにぃ!



「おし、あと4日そういう気持ちで練習すっからな!」

「おおっ。」

「コールドやんぞ!」

「「「おおおおおっ!」」」



え、ちょっと待ってよ。あたし、しばらくの間、もしかして打ったりできないんじゃあ…え、ちょっと、ちょっと!誰かあたしの意見も聞いてくださぁい!

























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練習が終わって、家に帰るともぉくたくただった。今までで一番くたくたになったと思う。それもこれも、打つ時間を削ってまで練習しないといけなくなったスクリューボールのせいだ!ちなみにスクリューボールというのは、人差し指と中指を揃えてボールを握って回転をかけて投げるボールのことデス。スクリューとシンカーっていうのは、区別が微妙で、スクリューは落ちる、シンカーは沈む…みたいな解釈が多い(左投はスクリューで右投がシンカーっていう解釈も多いけど)まぁ…そんなこと、別にいーんだけどねー。



「いつまで不貞腐れてんだよ。」

「満足に打つ時間がもらえるまでー。」

「俺の分のケーキやるから機嫌直せよなぁ。」

直った!

「(単純だな)」



大好物のチーズケーキを貰って(二個め、自分の分はもう食べちゃった)かなり満足したあたしは、机の端っこの方に置いていた携帯を手に取った。着信および受信メールはなし、と。



「どした?」

「んー、メール返ってこないなぁって。」

「友達?」

「友達ってか、準サン。」



桐青の準サン。と、いうと隆也はなぜか一瞬固まってしまった。桐青との試合の次の日、高瀬先輩からメールがきて、準サンのメルアドがあって、なにを送ろうかと思ったけどメールを無難な感じで送ってみた。"…俺は…"あのとき、準サンがなにを言おうとしていたのか、正直気になるところだ(けど、さすがにそれを追究したりはしてない)メールの返事は、今のところまだない。ふぅ、と息をはいてしまう。メール、返したくないんだろうか。



「準サン、あたしのこと嫌いなのかなぁ。」

「いや、それはない。」



隆也の返事は早かった。



「なんで隆也が言い切るの?」

「…別に。」

「まぁ、ありがと!」

「(きっとお前のこと好きだからだ…なんて、言えるか!)」



励ましてくれたらしい隆也に、お礼としてチョコレートを少しあげてみた(まだ食うのかよ!と怒られたけど)隆也は不器用だけど、ちゃんと優しいよ。そう言ってみたら、みんなは隆也のことを好きになっちゃうかもしれない、女の子たち。でも、まだ、隆也の隣りはあたしでもいいよねー、なんて、双子の特権を味わっていようと思っていたりもする。あ、でも、スクリューの件は隆也のせいだかんね!?



「あ、榛名サンからメールきた。」

「なにぃ!?」











予想外、まさかの御役目!
なんで隆也怒ってんの?











後書

下書またも久しぶりですわ。
最後は準サンや、さりげに榛名サンも話出しちゃった。
夢主は、初めは投手希望だったりします。
途中からの案だから前とは合ってないとこがあるやも。
準サンがメールを返さないのは、まぁ事情があって。
そのうち、また登場させるつもりではあります。
榛名サンもね!
でも、今回は双子でらぶらぶしてる?