
その日の夕食はホカホカご飯と山菜の天ぷら、野菜サラダに、玉子焼き、そしてぐ沢山のお汁に…働いたあとだから、もあるけれど、本当にめっちゃくちゃ美味しかった!それに、こんなに大勢でご飯食べるのってとっても久しぶりだったから、楽しかった。隆也の玉子焼きをとろうとしたら、案の定バレてしまって、やっぱり制裁を受けてしまった(こりないのーあたし)どうやら、あれから三橋に協力してしまったあたしを、ちょーっと怒ってるような感じもした(こらー、大人げないぞ隆也ぁ) 「千代、お腹一杯だねー。」 「ちゃん意外とよく食べるね、ビックリしちゃった。」 「そう?あ、そだそだ、監督が銭湯行こうって!」 「うん、行こう。」 お風呂用に用意していたカバンを持つと、あたしたちは銭湯へと向かうのでした。大きなお風呂は楽しかったし(さすがにはしゃぐことはできなかったけど)ふにゃふにゃと眠れそうなあの感覚がたまらず気持ちよかった。実際眠りそうになって千代に起こされたけど。で、驚いたのは、百枝監督の、む、む、胸ぇ!なんって大きいんだろう…(自分の胸を見てみる)…何だか自分のが可哀想になってきた。そりゃ、どうせあたしはないよ。あーもー本当、可哀想じゃんあたしってくらい、比べちゃいけないよ、ホント。 お風呂あがって、再び合宿宿舎へ。 「あー!」 あてられた部屋に戻って、カバンをあさる。そこであたしは重大なことに気がついた。隆也に大事な財産(お菓子)を合宿前日に奪われてしまったけれど、あたしはそれからこっそりと飴玉をいれていたはず。それがなぜだか姿を消している。隆也め…闇討ちとは卑怯なり!そう思ってあたしは千代に、戦場に出てくる、とわけのわからないであろうことを言って部屋から出た。向かう先は、男子の部屋! 「たーかーやっ、グッ!?」 バホッと何かが当たった。思い切り、顔面に…。次の瞬間、先生を加えたみんなの動きがとまった。って、いうか、顔面に直撃したのって、枕…ですか?あたしはその枕を拾ってキョロキョロと周囲を見渡した。そんなあたしを見て、今まで黙っていたみんなの中の、花井が口を開いた。それもかなり勢いよく。 「つーか普通に男部屋に入ってくんなよッ!」 「え、何で?」 「何でって…お前、ホント女か?」 「はーい、性別女でーす!」 「…はぁぁ。」 あ、溜息つかれた。 「枕投げ、楽しそ!」 「もしよーぜ、さぁこーい!」 「こら田島!」 「よーしっ、って、ここで隆也のツッコミがくるはず?」 と、思いながら周囲をもう一度見渡した。が、隆也の姿は見当たらない。押入れを開けて見るけど、そこにも隆也の姿はない。と…なれば、もしかして、畳の裏に…? 「おい、普通に考えろ、阿部はそんなとこにはいねーよ。」 「…いや、隆也だし。」 「いや、いねーだろ、忍者かあいつは。」 隆也の代わりに花井にツッコミを受けた。何となく、手に持っている枕を勢いよく投げてぶつけてやった。それまで男の部屋に〜とか言ってたけど、ぶつけられたからか、あたしを交えての枕投げ大会が再び始まったようだ。 「いってー!お前本当女か!」 「だから女だって、ぅりゃ。」 「グハッ、つーか顔面狙うな!」 「油断大敵よー、ほらっ、水谷ぃ!」 「ブホッ。」 「あはははは…ぅぐっ!」 大笑いしていたら後頭部に枕がぶつけられた。その衝撃で思い切り前に倒れてしまいそうになった。ので、倒れまいとそこに丁度いた泉を掴んでみた、するとその泉が栄口を掴んで、栄口が田島を掴んで、田島が花井を掴んで五人でドミノのように倒れてしまった。ドシン、と大きな音がして。笑い声が更に大きくなってしまった(花井が青筋を浮かべているのがよーく分かった)楽しい、楽しいなぁ、なんか、本当に合宿みたいだ!って、合宿なんだけど。 「すっげードミノ倒し!」 「マジうけ…ゥボッ!」 「あはははは、ゥボッ、だってー!」 倒れたままそこにあった枕を笑っていた水谷に投げた。見事顔面に命中して水谷は布団の上に伏しちゃった。いえぃナイピッ!調子に乗って枕投げを続けていたら、障子がガラリと開いて、次の瞬間、何とも素敵な音がやけに響いた。枕が畳に落ちると、そこには鬼が立っていた。あははー。 「隆也ー、飴玉返してー。」 「返すかボケェ!」 ----- 時間が経つのは早いもので、合宿も残り一日となりました。合宿最後の日、つまり、今日は三橋の因縁の日って、違うか、三星学園との試合の日であるわけなのです。このチームが出来上がって初めての試合。マネジだから打つことはできないけど(打つことしかあんま興味ない)マネジとして頑張りまーす!ってことで、隆也もみんなも頑張れ! 「いーなー、専用グラウンド、照明まであるよ。」 「比べたらキリねぇぞ。」 三星学園高等部、硬式野球部専用グラウンド。整った設備、恵まれてるなぁここの人ら。対しては自分らの手でグラウンドを作ったど根性の県立西浦高校。何だか庶民対貴族の気分?百枝監督の言葉ですぐにアップが始まった。マネジであるあたしもドリンクやらスコアやらの準備で暇なわけじゃない。準備をしながら横目でチラリと隆也らの方を見た。隆也、というか、気になるのは三橋。出会い当初のあのビビりようじゃあ、今回の試合はかなり三橋にとってキツイんだと思うけど…。うーん、どうしたもんかな(隆也も隆也でちょっとイライラしてたりするし)バッテリーの呼吸はちゃんと合うのかなぁ。 「(わ、凄い投球の乱れ…)」 投球練習をしている二人を見ていたら、あたしよりも背後から誰かが三橋を呼んだ。聞いたことのない声、もしかしなくても、三星の野球部員?と、次の瞬間、三橋はピューッと走り逃げていってしまった。え、え、えぇぇぇ!そんな三橋を三星の誰かが追いかけていった。遅れて隆也も追いかける。あたしもとりあえず、今持っているタオル類を所定場所に置いて全速力で追いかける。勘だけど、何だか嫌な予感がするぞ。ちょっと、急いで隆也ー! |