
四限目の現国が残り15分というところで自習になった。宿題として出されたところをやっていろ、と、言われたが既にそれは終わっている(授業中に済ませた)俺はやることもなく、ひと眠りでもしてやろうと思っていたが、騒がしい声が外…グラウンドから聞こえてきて、それがさらに聞き慣れた声だったのでそっちを見た。授業中は教科書を読む声で外の声なんて全然気にならなかったけど。あ。 「じゃん。」 この声は俺じゃない。同じ野球部の花井(ちなみに主将だ)花井も早々と宿題を終えたんだろうか、と、思ったけど、右手にプリントを持っていた。どうやら答えあわせをしたいらしい。別にいいけど…。俺は自分がやったプリントを見せると答えは全部一緒だったらしく、花井はそれを俺の机に置いて窓の外を見た。外ではどうやらのクラス、1−9が体育をしているらしく、何やら騒がしい。どうやら、今日の種目はソフトボールみたいだ(あいつが相手じゃ別チームの奴らはやってられないな) 「うわ、相手にソフトって、可哀想じゃね?」 花井も同じことを思っていたらしい。はだいたい俺と一緒に過ごしてきたからか(練習とか筋トレとか自主的に参加してたし)男並みの持久力と運動神経をもっている。野球に関してだって打者としてはかなり上位だ(それこそ田島並)次の打者はなようで、同じチームの女子たちが口々にの名前を呼んでいる。は左側にバットを構えた。 「こら、あんたハンデで右打ちって言ったでしょ!」 「えー、だって右打ちじゃイマイチ思い切り振れないし。」 「振らなくていいの!勝負にならないじゃない!」 「それじゃあたしがつまんないし。」 何やら相手チーム投手と言い合っている(相手の投手は確か、クラスでと一番仲のいい女子だ)そりゃそうだ、さすがは友人、の運動神経をよく分かっている。加えて野球とほとんど同じソフトとくれば勝負は最初から決まってるようなもんだ(そこそこ守備レベルがあれば)それでもはひかずに、バットを左側に構えたままだ、どうしてもまともなスウィングがしたいらしい。ある意味大人げない…あいつは子どもか、典型的な。 「じゃあこーしよう!」 「どうすんのよ。」 「あたしがホームラン打ったらあたしの勝ち。」 「どうすれば私の勝ちなのよ。」 「あたしがホームランじゃなかったらそっちの勝ち。」 「ふぅん、いいわ、乗った!」 と、いうわけで勝負の決め方が決定したようだ。俺と花井は必死こいて宿題をやっている奴らには悪いが、気ままに観戦することにした。 「これでも私元ソフト部投手だったんだから!」 「へへん、あたしは隆也の(双子の)妹だもん。」 「私はサッカー部キャプテンのお兄ちゃんがいるし!」 「隆也は野球部の捕手だし!」 …おい、やめろ。の声は大きい(まぁ、今は相手の声も十分聞こえてくるが)ケンカしてるわけじゃないのは分かる。あいつの声は楽しそうだし。だが、俺の名前を何度も何度も出されても困る。俺が聞こえるってことは、他のクラスの奴らにも聞こえてるかもしれないし…おい、もう…ほんっとやめてくれ…!花井がこっちを見て笑ってるのが分かったから睨んでやった。 「隆也は三橋とバッテリー組んで花井打ち取ったもん!」 いい加減に勝負しろー!って結局叫んでしまった俺は、言うまでもなく、とてつもない注目を浴びてしまった。は俺の姿を見つけて呑気に笑って手を振ってるけど、おい、俺、本当にまいってるんだけど。は俺に、ホームラン見てて、と言うとバットを再び構えた。その数秒後にいい音がして、空高く白い球が飛んでいったことは、たいして珍しいことでもなかった。とソフト(野球)ってだけで、勝負はもう決まってるようなもんだしな…。 「あのさ、俺が一番可哀想じゃね?」 「そうかもな。」 「阿部、ひでー奴。」 「はぁ?」 |