
「じゃあ、アイス買ってくるねー!」 練習の合間の休憩時間。は一枚のメモとお財布とクーラーバックを持ってグラウンドから出て行った。どうやら買い出しに行くようだ(篠岡が行く、と言っていたが自分のアイスが見たいから、とは名乗り出た)行き先は近くのコンビニ、の足なら15分あれば十分に行って帰れるはず、だった。だが、なぜか知らないがは15分を過ぎても戻ってこない。 「あいつ…どこ行ったんだ?」 「どこって、近くのコンビニだろ。」 「それにしちゃ遅くね?」 「確かに。」 部員たちに過ぎる不安。その中でもの兄である隆也は眉間にしわを寄せて、そりゃあもう訝<いぶか>しげな表情を浮かべていた。が戻ってきていないことに百枝も不思議な顔をしていたが、何かあれば携帯電話で連絡してくるだろうと思った。田島と一緒に騒いだり、花井や隆也にちょっとした暴走をとめられたりはするが、彼女は時間は厳守する。携帯に電話をしてみたが、電話にも出ない。 「みんなでランニングしながらちゃん探してきて。」 と、いうことで部員たちは探しを兼ねたランニングに行くことになった。キョロキョロと周囲を見渡しながらのランニングはあまりにも不自然であるが、何かがあったのではないかと彼らは彼らで心配だったのだ(特に隆也は余裕がなさそうだ)彼らがランニングに出かけて僅か3分後、彼らは探していた人物を視界に入れた。 「あ、だ!」 「え、何処だ?」 「あそこ、あそこ。」 「…なぁ、囲まれてねぇ?」 彼らから30メートル離れたところに彼女はいた。それも三人の男(大学生っぽい)に行く手を塞がれてしまっている。ぞくにいう、ナンパだったりする。はクーラーバック(アイスがいっぱいはいっている)を持ったまま、前に進めないでいる。隆也はそんな彼女を見て、スピードをあげた。それに驚く花井たちだったが、すぐに彼を追いかけ、彼らもスピードをあげた。 「だからー、まだ部活終わってないんですってば。」 「いーじゃん、サボろうぜ。」 「そうそう、君可愛いし、何か奢るからさー。」 「(あー、もー、アイス溶けちゃうよー!)」 問題はそこではない、と思うが、にとってはアイスが溶けるか溶けないかが最重要項目であった(クーラーバックに入っているといえど、保冷剤がないのであまり長くはもたない)早く戻らないと、みんなを待たせてしまう。目の前の男たちが口々に何かを言っているが、はそれを右から左へと流しつつ、クーラーバックのアイスを触ってみた。少し柔らかくなっている。 「(あの馬鹿、囲まれてたのか!)」 隆也に続いて部員たちが走り寄る。さすがに年下であっても、これだけの人数がいれば驚いて逃げていくだろう、と、そう思っていた。早く駆けつけて助けてやらないと!そう思っていた部員たちだったが…。 バンッ! 「はーい、どいてくださーい。」 いきなりは左足で電柱を勢いよく蹴ったかと思うと、彼女にしては低音な声で、にっこりと、だが、冷気を漂わせる笑顔を浮かべて言った。初めて見せる姿に、思わず部員たちは立ち止まった。あんな場面をどこかで見たことがある。数人の少年たちはいつかの出来事を思い出す。"はーい、おきてくださーい" 「(阿部だ、リトル阿部がいるぅぅ!)」 男たちは何かを言いながら一目散に消えていった。彼らが目の前から立ち退くと、は、ふぅ、と息をはいて何事もなかったかのように足を進める。アイスが溶けてしまうので足は小走りだった。そして、数メートル進んだところで彼女は隆也たちに気が付いた。彼女はやはり何事もなかったかのように無邪気な笑顔を浮かべて大きく手を振った。そんな彼女に隆也は駆け寄る。心配だったんだろうなぁ、と彼らは思った(何だかんだ言いながら隆也はに優しいし、と) 「馬鹿野郎!」 「ふぎゅ!」 「男三人相手にあの行動はないだろう!」 「だって、なんか気の弱そうな人たちだったし。」 「だってもくそもねぇ!」 何やら兄妹喧嘩を繰り広げている(一方的だが)彼らに少年たちは苦笑を浮かべながらも駆け寄った。のちょっと、意外な面を見てしまって内心は未だにドキドキはしているが。 「「「(やっぱ阿部と血を分けた兄妹だ)」」」 |