息苦しくて声も出ない

今…あたしはかつてないほど動揺しています。心臓がバクバクするようなことは、何度か経験してはいます(いろいろと)だけど、ここまで自分の心臓が活発に動いていることはなかったんじゃないだろうか。とか、そんなことを平然と考えてる余裕なんて本当は、本当に、本当、ないんだけど!


「ご、ごめんなさい!」


部屋の掃除をしていた。ちょっと本棚の位置をずらしてみたいな、なんて思ってたりする。一人で抱えてみようと思ったけど、予想以上に重たくて動かせなかった。お父さんに頼んでみようと思ったけど、お父さんは今日は休日出勤だった!さすがにお母さんには頼めなくて、諦めようかなと思ってたとき、準ちゃんからメールが来たということで、準ちゃんにお願いをしてみた。ヒョイと抱えて動かしてくれて、とっても助かった(さすが男の人!)配置ずらせて嬉しくて、あたしはとても興奮したらしく、準ちゃんに無意識に飛びついてしまい、そのまま二人で倒れてしまった!


「じゅ、準ちゃん、大丈夫?」

「…ベッドだから、柔らかいし、お前も軽いから…。」


準ちゃんはあたしを守るように自分を下敷きにしてくれて、それでも、この格好は、ちょっと恥ずかしいものがある。なんだか、あたし、準ちゃんに抱きしめられてるみたいなんだもん!今まで準ちゃんに飛びついたり、抱きついたりしたことがないわけじゃない。小さい頃はいつもそんなことをしていた。けど、今とはなんだか違う気がする。あたしはなんだか熱があるんじゃないかと思うくらい暑いように思えた。恥ずかしくて、顔を背けてしまったあたし。そんなあたしのほっぺに、準ちゃんの手が触れる。思わずビクリとしてしまった。


「準、ちゃん…?」

「…悪い…俺…放したくない。」

「!!!!!」


ギュウと強い力で腕をまわされて、あたしはまるで鉄にでもなってしまったかのように身を固めてしまった。1mmの距離もあかないくらいに抱きしめられ…抱き、しめられてるのかな…これってやっぱり!準ちゃんの唇が、距離がないせいか耳元に当たってまたビクリとしてしまう。どうしよう、どうしよう!あたしは目をギュウと瞑った。準ちゃんのにおいがする。ずっと前から知ってるにおいだ。でも、準ちゃんは小さいときのままじゃあない。力だって、すごく強い。ドクン、ドクンと心臓が音をたてる。でも、それってあたしのだけじゃ…ないの?


、俺…が好きだ…。」


距離が、本当にゼロになった気がした…。押し付けられるように当てられた、準ちゃんの、唇。いきなりのことに離れることさえ考えられなくて、ううん、離れられない状況だけど、でも、ただもう働いてくれない頭で考えるのはもう無理だとだけ思った。


「(じゅんちゃん!)」


"俺は男で、は女なんだよ"いつだったか言われた言葉。恥ずかしくて、押し返そうとやっとのことで思えたけど、それでも準ちゃんの体は押し返すことができない。前と同じだ。息苦しくなってきて、あたしは思わず準ちゃんの服を掴んだ。ようやく離れた唇に、微かな喪失感を感じた気がした。いきなりごめん、と謝ってきた準ちゃんが、なぜかにじんで見えた。


「ご、ごめん、マジ悪かった!」

「…ごめ、なんであた、し、泣いて…。」

「悪い、でも、俺本当にのこと…好きだから。」


あたしたちはずっと近くにいた。ずっと、ずっと。手の届く距離にいて、手の届く距離にいてくれて、準ちゃんはずっとあたしを守ってくれていた。お兄ちゃんみたいに。でも、今は、お兄ちゃんなんかじゃないんだね。溢れてくる涙は、なにを意味してるんだろうか。嫌だとか、寂しいとか、嬉しいとか、そういうハッキリしたものじゃなくて…あたしは…。準ちゃんはあたしの頭をそっと撫でた。寂しそうな笑みを浮かべて…。


「怖がらせたな…ごめん。」


そう言って準ちゃんはあたしから離れていく。ドアが静かに閉まった音がした。声を出したいのに、なぜか出なくて。出るのは涙ばかりで。行かないでって…言えなかった…。


息苦しくて声も出ない

((あたしは…どうしたいの))
title by 恋したくなるお題
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