そういうトコも好きなんだけど

準ちゃんに、スキ、だと言われた。キス、も、されたから、このスキはたぶん、あのスキ、なんだと思う。しばらくの間あたしは動けなくて、唇をおさえたまま天井を見つめていた。"俺が…が他の男と二人きりになるのが嫌なんだよ!"もしかして。"は…あぁいうのがタイプなのか?"もしかして…準ちゃんはあのときも、そういう気持ちをもっていたんだろうか。"怖がらせたな…ごめん"準ちゃん、すごく辛そうに笑ってた。傷つけたのは、誰でもない、あたしだ。


「おはよ、学校行こうぜ。」


あの日の夜にメールがきて、ごめん、って謝られた。準ちゃんはいっぱい、いっぱい謝ってくれて、そのせいなのか、チクリと胸が痛んだ気がした。次の日の朝、準ちゃんは変わらず迎えにきてくれた。ごめん、ってまた言ってたけど、今までと変わらないように二人で並んで学校に行った。でも…違うところもあった。


、タオルくれ。」


部活も今まで通り、ちゃんとマネージャーをした。タオルをくれって言われたので慌ててタオルを渡した。今日は少し球が浮いてる気がしたけど、それでもいつも通りに準ちゃんは和さんに投げていた。でも…やっぱり違うところもあった。あたしは、その"違うところ"がなんなのか、分かってる。""変わらず、優しい声であたしの名前を呼んでくれるけど…それでも…。


「いらっしゃいちゃん、準太なら部屋よ。」

「お邪魔します。」


夜ご飯を食べてからの訪問。時間的には迷惑だろうに、おばさんは笑顔で入れてくれた。準ちゃんにはメールも電話もしてないから、あたしの訪問を知ってるわけがない。朝行くときも、部活のときも、帰りのときも、一緒にいたのに、それでもあたしは準ちゃんのところに行きたくなった。準ちゃん…あたし、ね。


「(寝てる)」


準ちゃんはベットの上で横向きで寝ていた。練習で疲れてるんだよね…来て、すごく迷惑だったな。そう思いつつもあたしは、できるだけ足音をたてないように近付いた。明かりはつけっぱなしだから、いつの間にか眠ってしまったのだろう。少し開いている窓から優しい風が吹いて、準ちゃんの髪を揺らした。朝学校に一緒に行くときも、部活のときも、一緒に帰るときも、いつもと一緒のようでなにかが違った。あたしは、その違いに胸がもやもやしてしまう。このもやもやは、なんだろう。あたしは、そっと準ちゃんに手を伸ばした。


「準…ちゃん…。」


触れたい、なんでだろう、すごく準ちゃんに触りたいと思った。おはよって朝にあたしを迎えに来てくれるとき、タオルくれって部活で言うとき、帰ろうって一緒に帰るとき、準ちゃんはあたしに触れてくれていた。頭を撫でてくれたり、ポンと軽くたたいたり、肩をトントンとつついたり…そんな些細なことだけど。だけど…あたしは…。


「!!!!!」


準ちゃんのほぺったに触れたとき、その手はいきなり掴まれてしまった。あたしは驚いて手を引っ込めようとしたけど、掴まえられてしまって引っ込めることができなかった。寝ていたはずの準ちゃんは体を起こしていて、目をあけていて、そして、あたしを真っ直ぐに見ていた。見られているだけなのに、なんでなんだろう、あたしはすごく泣き出しそうになってしまった。


「…どうした、。」

「…っく、ひっ、準ちゃ、今日、触って、くれてない。」


どうしよう、あたし、可笑しいよ、ぜったいに可笑しい。今までお互いの部活の事情で会ってないことが1週間くらいあったことだってあるのに、それなのに、なんで半日触ってくれてないだけで、どうしてこんなにも寂しいなんて思ってしまうんだろう。どうして、哀しいなんて思ってしまうんだろう。あたしは一生懸命に涙を堪えようと、目を強くこすったけど、その手は、準ちゃんに止められた。


「触っても、いいの?」


準ちゃんは"男の人"の顔をして、あたしをじっと見つめる。あたしは恥ずかしくなってきてしまって、顔を俯けてしまったけど、それでもコクコクと何度も首を縦に振った。あたしの手を掴んでいた手が放れてしまって、あたしは喪失感に息をのんで顔をあげた。だけど、その手はすぐにあたしのほっぺたに触れていた。両手で触られていて、もう、顔を俯けることはできない。


「もう一度聞く…俺が触っても、いいの?」

「…うん、いっぱい、いっぱい、触って、いいよ…。」


冷静に考えれば、なんだか恥ずかしいことを言った気がする。準ちゃんは少し驚いたような顔をして、でも、すぐに吹き出すように笑って、そして柔らかい笑顔を浮かべた。このもやもやの正体が、分かった、気がした。


「ずっるいなぁ…は、そういうの反則だろ。」

「…え。」


準ちゃんの言葉に、あたしは嫌われてしまったのかと思って目を見開いた。だけどすぐに、目を瞑って、と言われてゆっくりと目を瞑る。次の瞬間にきたのは、あまりにも優しい感覚で…。ゆっくりと目を開けると、準ちゃんが満面の笑みを浮かべていて、そして、あたしをぎゅっと抱きしめてくれた。


「でも、そういうとこも好きなんだけどな。」



そういうトコも好きなんだけど

(あたし…準ちゃん、好きだよ)(うん、俺も好きだよ)
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