お菓子よりも魅惑的な俺、高瀬準太には生まれてからほとんどずっと一緒にいる幼馴染がいる(つっても俺の方が一年生まれるのが早かったけど)家も隣なもんだから、家族ぐるみで仲良くなっても不思議じゃなかった。物心がつくようになった頃、たぶん、三歳か四歳?俺を見てニコニコ笑いかける、俺よりももっと小さなあいつに"俺が守ってやらないと"という念が生まれたのが、幼いながらもなんとなく、分かったような気がする。そいつが拗ねたら"どうした?"と声をかけ、そいつが泣いたら"よしよし"と頭を撫でてやる。俺たちは下手なキョウダイよりももっと兄妹らしいと周囲から言われた(俺、弟いるのに)俺たちの関係は、そう、確かに兄妹だった。俺があいつに対して恋心というものを抱くまでは。 そして、が俺の気持ちに応えてくれるまでは。 「、帰るぞー。」 「あ、待って準ちゃん!」 相変わらずは俺のことを"準ちゃん"呼ばわりだ。俺たちは前から、人に言わせれば"彼氏彼女らしい二人"というわけだったので、実際に彼氏彼女になったとしてもそう変わったところがなかったりするのかもしれない(俺としては、うん、かなり変化あるけど、いろいろと)部活を終えて、着替えて、外を見ると空はもう真っ暗だ。こういうとき、が野球部のマネージャーでよかったと心から思う。一緒の時間に帰れるって、すごく俺としては安心できる(変質者とか、がらの悪い奴とかのことを考えて) 「待って準さーん、ー、俺も一緒に帰る!」 周囲が俺たちの仲の変化に気づいていない、というのは悪いことじゃあないと思う。からかわれる心配もないし。だけど、こういう場合は、ちょっと気をきかせろよ、とか利央には求めてはいけないようなことを思ってしまう(求めても、応えてはくれないだろうからな)俺は心の中で舌打ちをして、どうにか利央を引き離そうと思った。せっかくと彼氏彼女になれたのに、二人きりを堪能させてくれよ!俺が利央になにかを言おうとしていたとき、慎吾さんがひょっこり現れる。 「利央、恋人同士に割り込みなんて野暮だぜ?」 「…え、恋人…って、準さんとが…えーッ!」 慎吾さんの発言に、俺はビックリしてしまった。もビックリしているようだ。俺もも、まだ付き合いだしたことは誰にも言っていない。慎吾さんは俺をからかって言ったのかとも思ったけど、なんだかそういう感じでもなさそうだ。マヌケだが思わず口をぱくぱくしてしまった俺に、慎吾さんはニヤリと笑う。その隣には山さんも現れて、同じようにニヤリと笑った。 「お前ら気づいてないかもしんねーけどさ。」 「あまーい雰囲気がもれだしてるんだよねぇ。」 …それはどんな雰囲気だ。別に、いつも通りだと思うけど(だって、学校だし、俺はキスやハグどころか手を繋ぐのも今日は我慢している)そんなことを思ってたら、慎吾さんに背中をたたかれて、まだまだ甘いな、と言われた。和さんも笑ってる。 「準太、暗闇で襲い掛かるときは人の目を確認しろよ!」 「そうそう、スリルを味わうにはまだ早いよ。」 「そんなことしません!」 の前でなにを言い始めるんだこの人たちは!俺は慌てての手をとると、失礼します!と早口で言ってその場から離れた。後ろから慎吾さんたちの笑い声が聞こえてきたけど、ぜったいに振り向いたりはしてやらなかった。は、襲い掛かる、とかの意味を理解していないようで、疑問符を頭上に浮かべつつも、バレていたことに苦笑を浮かべていた(純粋だ、分かってたけど、すげー純粋なんだは…) 「バレてたね。」 「恐るべし、めざとい先輩。」 「あはは。」 の手は繋いだまま、俺は足を進める。は俺を見上げてきたけど、手を放そうとはしなかった。俺を見て笑い、少し手に力を入れた。なんか、このまま思い切り抱きしめたい気持ちに駆られたけど、我慢した。家に帰ればいつでも抱きしめられるし。 「今日も準ちゃん頑張ってたね。」 「も頑張ってただろ。」 「一生懸命はやったよ、あ、そうだ。」 あまり代わり映えのない会話。だけど、手を繋いだままなのは違う。前とは違う。は空いてる手でカバンの中を探っている。そして、なにかを取り出した。街灯の明かりでかろうじて見えたものは、なんかクッキーの入った袋のようだった。 「疲れたときには甘いものが一番だよ。」 街灯の明かりがあるといえど、ハッキリと見えるわけじゃあない。それでも、が柔らかく、優しく俺に笑いかけたような気がした。俺はクッキーの袋を受け取ろうともせず、その手をの肩に置く。そして、素早く周囲を見渡してからにそっと口付けた。 「じゅ、んちゃん!」 「菓子よりも、断然甘くて魅惑的。」 「準ちゃんッ!」 慎吾さん、山さん、俺、襲い掛かってはないっスよ。いや、本当。けど、やっぱり俺も男だし、我慢してきた期間もそうとうなもんだし、こういう衝動ってのは、どうしようもないんじゃないっスかねぇ?だから、もそんなに慌てないで。 それじゃあ、身がもたないぜ? なんて、な。 お菓子よりも魅惑的な (準ちゃんッ!)(俺も立派な男なんで、よろしく) title by 恋したくなるお題 |
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