跳ね上がった心で気付いた

準ちゃんは、優しかった、ずっと前から、今も優しい。泣いているときは慰めてくれた、拗ねてるときはなだめてくれた、寂しいときは一緒にいてくれた。一人っ子のあたしは、準ちゃんがもう一人の家族のようだった。そんな準ちゃんが中学校にあがるまえに声がおかしくなった。ガラガラいってて、少し辛そうだった。ガラガラがなくなったとき、準ちゃんの声は低くなってた(最初はビックリして泣きそうになった!)筋肉もついた(それでも細いけど)だんだんと準ちゃんは"男の子"になっていった。


「はーい、タオルですよー。」

「ありがとう、。」


ただ今休憩時間。みんなに誘われてあたしは野球部のマネージャーになった(高校じゃテニスは硬式だから元々テニス続ける気もなかったし)部員の人は顔見知りばかりだし、先輩マネジもみんないい人。和さんにタオルを渡して、これでみんなに渡したかな。


「おーい、ー俺にタオルがねー。」

「あ、慎吾さんごめんなさーい!」


慎吾さんにタオルを持っていくと、犬にするみたいに撫でられた。髪の毛が乱れるけど、慎吾さんの撫で方は優しいので文句は言わないでおこう。へらっと笑うと慎吾さんも笑って、あたしの頭をポンポンとたたいた。おまけ、というようにわき腹をくすぐられたので、お返しに笑いながら弱弱しいながらもくすぐり返した。みんなの笑い声が聞こえる。けど…。


。」


呼ばれて振り返ると、ちょっと不機嫌そうな準ちゃんが立っていた。タオルは…ちゃんと渡してる。どうしてそんなに不機嫌そうなのかが分からない。あたしは首を傾げて準ちゃんを見ると、準ちゃんはあたしの腕をとって歩き始めた。わけが分からず、慎吾さーん、と呼んでみるけど、慎吾さんは笑って手を振っているだけだった(えー!)


、無防備。」

「え?」

「いつか慎吾さんに押し倒されるぞ?」

「(押し倒す?)」

「慎吾さんじゃなくても、他の奴…おれ、とにかく!」


とにかく、無防備になるなって言いたいらしい(一部分聞こえなかったけど)あたしはまた首を傾げた。あたしは無防備のつもりはない。強くはないかもしれないけど、弱くもないつもり(だってテニスで鍛えてたし!)大丈夫だよ、と言うと、準ちゃんはなぜか表情を歪ませた。ぎゅっとあたしの腕を握る。


「準ちゃん?」

「押し返してみろよ。」


両腕を掴まれて、あたしの背中が壁に当たった。両腕を掴んでのちょっとしたじゃれあいのような取っ組み合いも過去に経験したことがある。そのときはいつも、えい!って押し返して、準ちゃんは、意外に強いなお前って笑ってた。でも、今日は何でだろう、押し返すことができない。あれ、おかしいな。


「俺は男で、は女なんだよ。」


真剣な眼差しで準ちゃんは言った。その顔を見て、なぜだかちょっと前のことを思い出す"、なに俺の前でまた無防備に寝てんの"あの言葉を思い出した。なぜか恥ずかしいと思いながらも、準ちゃんを見る。背、伸びた。腕だって太くなった、目だって…強くて真っ直ぐに見て…。ドクンと何かが跳ね上がった。



跳ね上がった心で気付いた

((準ちゃんは"男の子"じゃなくて"男の人"なんだ))
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